2008年02月19日

今年は、

春が来たのは

一月の

七日ごろだった。


尭は、

柳通りを

三階の窓辺の席から見下ろしていた。


自分で運んできた

珍しくアメリカンコーヒーの大きなカップは

尭の手に

なじんだ。


窓辺のカウンター席。

左のスーツ(女性)は、ケータイ

右のスーツ(男性)は、キーボード


私は、

角田光代。


『イリの結婚式』という短編に

感情を

移入していると


ふと目を上げた

向かいのビルに


オリーブグリーンの

クラッシックな

荷台のついた四輪自動車が


背の高いヤナギの木に

背中をなでられている。


尭は外気を知らない。

だのに

そのとき春がきた。


オリーブグリーンの塗装、

反射した光の

湿度。


かすかに、湿潤。


猫の手のうごきをスローでみているような

柳。

その風、


じゃっかん、温暖。


窓の外の

柳通りは

サイレント映画のようで


荷台のついた四輪自動車は、


どこからともなく

すがたをあらわした登場人物によって

どこかへ運ばれていった。

尭は

ページに眼を落としている最中だった。