June 10, 2006

『サ行日誌』

何の因果か耐震強度問題で名を馳せる東の僻地へと出勤していて、社用電話が土曜の平穏なオフィスに響き渡る度、すわ出動かと高鳴る鼓動と震える四肢を鎮めるのに一日の大半を費やし、挙句、担当者不在というビジネスマジックにたやすく踊らされ、葬送の道すがら彼岸花も咲かせられるぐらいに悲しみの深い涙を流し続けるのだった。

半泣きで遅い昼食を済ませ、誰もいないと分かっていながら隣ブースに向かって「ワールドカップってもう終わった?」と問い掛けてみたり、今月の予定が書き込まれたホワイトボードに油性マジックで大相撲番付表を転記してみたり、給水器の水を全て静電靴に注いでみたりと枚挙に暇が無い。

覚めない夢にも似た焦燥感と実感の希薄さが、休日出勤という現実を受け入れられないでいる。
待機という名の軟禁状態を経て、電話の前から一秒も動けないという拷問にも似た業務体系に一矢報いるべく起ち上がる。

・・・帰ろ。

(了)

投稿者 yoshimori : June 10, 2006 11:59 PM | トラックバック
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