August 10, 2006

『487-14』 (第2回)

植え込みの向こうにいた見知らぬ男が、棄てたはずの缶を拾う。
男はスーツ姿で、路上で生活している風貌でもない。
顔を見てもネクタイの柄しか目に入らないほど印象が薄い。

タイは黒とくすんだ赤のストライプ。
血と錆を連想させる。

植え込みに手を入れ、蓋の開いていない缶を拾うという動作を目の端で負う自分と、見られているという自覚の無い男との間には何も無い。

男は当たり前のようにプルタブを引き、自分で購入した所有物の如く一息に飲み干すのだった。

「・・・」
男は日本語ではない言語を聴き取れない速度で呟く。

次第に語気が荒くなり、クライマックスには缶を植え込みに投げつけた。

(續く)

投稿者 yoshimori : August 10, 2006 11:59 PM | トラックバック
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