July 27, 2007

『不変』

猛暑の中、どうしても立ち喰いそばが食べたくて半蔵門線に乗る。
ジャケットが汗で重みを増してきた頃に到着。
立て付けの悪い自動ドアが不器用に開く。

嗚呼っ、券売機があるよ。

知らない間に設置されている見慣れないマシーンに硬貨を投入し食券を求める。
厨房には店主は不在で、見たこともない若造が掬いを振るって接客中。
薄汚れていたはずの壁は内装業者の手によって光沢のある彩色に。

出てきた麺は記憶よりも黒く、つゆは二日酔いに効きそうな濃ゆさ。
きんぴら天の牛蒡、揚げ過ぎ感は否めない。

奥から現れる中年女性従業員は、鰻の寝床的に狭い通路をのし歩き、立ち喰う客に遠慮なくぶつかりつつ、呪文のように翌日オーダーする野菜の名を呟きながら外へ。

あの婆だけは変わらんな、とぶつかられて崩れた体勢をカウンターへ戻し、再び麺を啜り込むのだった。

(了)

投稿者 yoshimori : July 27, 2007 11:59 PM
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