February 01, 2008

『色ノ無イ日々、枯山水』

寒風吹きすさぶ中、コートの襟を立てながら駒沢通りを歩いている。

もう2月か。

「って僕の話聴いてます?」
ん、何だっけ。

「やばいですよ、それ。うちの母親と一緒じゃないですか。年取ると同時にいろんなことができなくなってくるんですよ。もうマルチタスクじゃないんですよ」
あ、ごめん。携帯いじってたら話が途中から聴こえなくなった。ってこれか、これがあれか。

「そうです、そうやって一般的な単語すら出なくなるんですよ。老化は確実に進んでますよ」
時は残酷だねえ。老いて益々盛んなんてえのとは縁遠いねえ。

「おっさん通り越してじゃないですか、しっかりしてくださいよ」
どうすりゃいいのかねえ、げほごほげほ、んんっ。

「そういうは二十代の頃はしてなかったはずですよ」
あ、そうかも二年前からかも。これは何? 煙草のせい?

「違います、喉にある呼吸と食道を分ける弁が劣化してるんですよ」
弁が。

「そうですよ、あれ? 僕、今、何の話してましたっけ?
なるほど、よく分かった。もうマルチタスクじゃないんだな。アプリケーションを同時に起ち上げるとフリーズするんだな(涙)。弁だよ、弁。

便? ああ、思い出しました、弁でしたね。とにかくいろんな器官が日々壊れてゆくわけですよ」

休日ともなれば神社や寺院を巡り、BGMは始終落語という今となってはリアルな話だねえ。

(了)

投稿者 yoshimori : February 1, 2008 11:59 PM
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