May 15, 2008

『辿リ着イタラ権田原』 (第弐回・最終回)

「他には?」
「あ、思い出した、お婆ちゃんを乗せたのね、もう年金生活してるくらいの。で、浅草から三鷹までだったかな、けっこうな距離だね、着いたらお金が無いわっていうの、全然持ってないからどうしようって申し訳なさそうな顔するからね、何だか気の毒になっちゃって、五千円渡して帰しちゃった。あ、でも、一応住所と名前は書いてもらったけどね」

「ほう」
「そしたら、そのお婆ちゃんから手紙が来てね、『お礼がしたいから日本橋でお食事でもいかがですか』って書いてあるの。まあ返ってこない金だとも思ってたし感謝されてるからさ、こっちは嬉しいじゃない? で、かみさんも連れて行ったわけよ、日本橋。そしたら、レストランを予約してあって、その時のお婆ちゃんと待ち合わせてさ、確かにあの時のタクシー代と五千円は返してもらったのね」

「いい話ですね」
「ところがさ、『大変申し訳無いけど20万貸してくれ』って言うわけ。もうわたしもかみさんも呆れてね、食事もせずに置いて帰ってきちゃった」

「あー、その婆さんもねぇ、2万くらいにしといたら借りられたかもしれないのに
二回目で吹っ掛け過ぎなんだね、一回貸してるから借りられると思ってるんだ」

「若いのはどうですか?」
一回だけやられたね新宿から町田だったかな、着いたらやっぱり金が無いって言うの。で、住所と名前と携帯番号も書いてもらったけど、まあそこで一応携帯に電話してつながったから信用したのね、そしたら住所も名前もでたらめで、携帯は解約されてた

確信犯ですねー」
「そう、あれはたぶん常習犯だね。でもすごく器量の良いかわいい子だったね」

特に面白いことは言ってないのだが、話芸というか話し方というか、地味に癒された瞬間だったかもしれない。

(了)

投稿者 yoshimori : May 15, 2008 11:37 PM
コメント

世の中つねにイタチゴッコ的詐欺がざっくざくのようですな、先生!

ま、一番の詐欺は年金詐欺の厚生労働省かと・・・(´ヘ`;)

Posted by: HYDE先生 : May 16, 2008 12:42 AM

テレビを全く観ない日が続きます。
ネットのニュースすら読んでませんので、世の中の動きがさっぱり分かりません。
電車の中の人の会話でミャンマーのサイクロンや中国の地震を知りました。
首相が替わっててもたぶん気付きません。

…今でも中曽根でしょうか?

Posted by: 義盛 : May 17, 2008 12:19 PM
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