September 01, 2010

『九月上席(初日)~什錦(しぃちん)』

創業昭和三十三年という。
「五十三年目の老舗感謝」と銘打って、特定品目が値下げ対象となっている様子。
・・・老舗って自らを述べる単語かしらとも思う。

暖簾越しに店内を覗くと、まだ外も明るく時間も早い所為か、「お一人様」だらけである。
・・・よくよくこういう店に引き寄せられるみたいで、微妙な心持ちになるのは致し方ない。
まァそこは同じ独り身の同志よ、と自動扉の前に立ち、中へと足を踏み入れる。
レジスター横に座っていた店主らしき大陸顔の中年男性がおもむろに立ち上がり、どぞどぞどこでもどぞと猫でも追うような手付きで席へと促す。

入口より右方面の壁際に追われ、隅にある四人掛けの卓に壁を背にして座ると、壁にも卓上にも菜譜(メニュー)だらけであると気付く。
情報量の多さは人心を惑わすだけと知っている大人は絞込みに余念がない。

当店、過去にグルメ大賞を受賞した上海風四川麺が売りという。(何だい、それは)
掲載された画像には、やや褐色がかった白いスープの上に炒め野菜ががっつりと乗っており、所々に白胡麻がちらほらと窺える。
説明文には「特製!」「激辛!」ともある。
・・・何ひとつ脳に入ってこないので、これは止しておく

決めかねてうろうろと菜譜を眺めていると、「ジース」なる表記があり、「鶏絲」のことかしらとも思ったが、明らかに「飲み物」カテゴリーなので、これがジュースと気付くのに数秒要したりもした。

大陸顔を呼ぼうとするが、奥に座る常連らしき初老の男性に向かって大声で何か話しており、自分の声の大きさからこちらに気付かない様子。
その内容も、わっかいからね若いひとわっかいから若いねー、としか聞こえず、まるで要領を得ない会話である。

ようやく振り返った大陸顔に、五十三年目価格の湯麺を頼む。
大陸顔が厨房に向かってオーダーを告げる。
「ティアンミェ~ン、イ~」(そう聞こえた)

待つこと数分。

ichiban_01.jpg
湯麺

鶏がら白濁したスープには、定番通りに炒められた野菜(もやし、韮、人参、白菜、木耳、玉葱)と豚肉が載る。
菜の下には、これまた定番な中太ちぢれ麺が沈んでいる。
付属の蓮華でスープを掬う、かなり熱い、口内火傷前提食に相違ない。
木箸具材を沈めたり、を絡めてゆく。

、決して悪かァないのだが、キクラゲ先生だけが独特な乾物臭を醸して止まない。
湯戻し後の水洗いを失念したらこうなるのは知っている。

とはいえ、完食
このまま居座って、別の品を頼もうかとも考えたが、そうなると当初の趣旨と変わってしまうので、今宵はこの辺でと退出するのだ。

・・・舌、火傷してるし。

(了)

(0906工期満了)

投稿者 yoshimori : September 1, 2010 11:59 PM
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