September 24, 2010

『九月下席~手賀沼綺譚』

実家に居る妹農家の次男坊に嫁いでゆくという兄ィ西新宿で飲んでいる。
卓上にグラスを置く度、室内に音がやたらと響き渡り、既に繊細な行動が不能となっている様子である。

明後日さ、会うわけよ」
誰? 妹の彼氏と? 年下だっけか、27くらいの。

「そう、俺のヒロコを持ってく糞野郎と」
何なの? どういうこと? 祝えないの? 妹萌えなの

「違ぇよ、そんなんじゃなくてさー、妹のーカレシがね、もう、DBなのよ」
何て? DV?

「DEBUなんだよ!」
ははァ、なるほどね。まァ農家だし、美味しい喰ってるだろうしさ、多少はねぇ。

「多少じゃねぇんだよ! もう3桁超えてんだぜ俺の2倍もあるんだ!」
120キロ超え? そりゃァ目立つねぇ。体質かな。

「知らねぇよ、あんな生き物見たことねぇよ!」
何それ、お前の義弟だよ。

「俺の周りにはああいうキャラはひとりもいないんだよ!
キャラかぶんなくていじゃん。

キャラかぶりとかそんなんじゃねぇし」
じゃァ何? 怖いの?

怖ぇよ! あんなのと殴り合いしたら、普通に死ねるから
普通に殴り合う理由はないなァ。

「普通に勝てねぇし、俺。絶対に腕っ節で負ける自信あるし
要らん自信だな、それは。

「無理なんだってば」
えーと、つまりあれだ、妹の未来の旦那が太ってるから気に入らないの?

「そうだよ、俺のヒロコには、こう、すっとした奴をあてがいたいじゃん」
もう遅いよ、まとまった話なんだし。素直に祝ってやれないもんかねぇ。

「でも、うちの母ちゃんが言ってた、『前に付き合ってた四十五歳のおっさんよりはまし』って」
・・・。

お、おめでとう、ヒロコ
つ、ついでに兄にも幸あれ

(了)

投稿者 yoshimori : September 24, 2010 11:59 PM
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