December 06, 2010

◆『十二月上席~千とせの肉吸い』

本日ァ中目黒落語会でござんす。
十八時の開場を目指しまして日比谷線に揺られますな。

『中目黒寄席 第101回公演 ~竜楽を聴く~』

今回はお囃子の太鼓と三味線、鳴り物全てが生音でござんす。

桂宮治◆動物園

「三代目桂伸治の弟子で御座ィます」

本編:
「俺も月五十万で雇われたんだ」

三遊亭竜楽◆箱入り

本編:
「本所で何をして来たンだぃ」
「家事手伝いで御座居ます」

桂宮治◆つなぎ

「中目黒は懐かしい土地です」
「xxx高校っていう入試で名前さえ書ければ誰でも入れるという学校に行ってまして」
「入学して初めての数学の授業でお爺さんの教師が黒板に二桁の掛け算を書くんですよ」
「二桁ですよ、高校の授業で」
「『じゃァ今から十五分で此の問題を解いてください』」
「終わってから皆で答え合わせをしてみても全問正解がひとりも居ないんですね」
「まァそういう学校でした」

「私こう見えましても子どもがひとり居るんですよ」
「娘なんですが、私にそっくりでして・・・ってそこ笑うとこじゃァありませんよ」
「・・・お後のお支度がよろしいようでこの辺で」

三遊亭竜楽◆河豚鍋

お仲入りで御座ィます。

鶴田弥生社中◆寄席囃子

三味線を持った弥生ねえさんが高座に上がりまして、宮治あにさんが大胴(おおど)をもうひと方の前座のあにさんが小太鼓を受け持ちます。

◇一番太鼓 ・・・ 「どんどんどんと来い」
◇二番太鼓 ・・・ 「お多福来い来い」
◇前座の上がり ・・・ 三曲ある中の一曲。演題は不明。

「次は出囃子です。まずは笑点メンバーから」

桂歌丸◇大漁節

「何かリクエストは御座居ませんか」
「志ん生!」
「ははァ、志ん生師匠ですね。・・・笑点メンバーではありませんが。では」

古今亭志ん生◇一丁入り

「続きまして如何でしょうか」
「野崎!」
「野崎、先代の文楽師匠の出囃子で御座居ますね。此れも笑点メンバーではありませんね」

八代目桂文楽◇野崎

「続きまして寄席でのBGM。太神楽は傘廻しの曲で御座居ます」

◇傘の曲

「撥(ばち)でのジャグリングは緊迫感を伴った曲になります」

◇千鳥敵方(ちどりあいかた)

「さてお芝居でもよく聞かれます夏のあれですが、前座さんに演ってもらいましょう」
宮治あにさんが「生き替はり死に替はり」ともうひと方の前座のあにさんに小声で告げます。
「・・・生き替はり死に替はり、付きまとうてこの恨み晴らさでおくべかー」
「べかーって。もう彼は生涯怪談噺を演れないでしょうね」
「一生トラウマですよ」
「大丈夫、小母ちゃんが面倒見てあげるから」

三遊亭竜楽◆くしゃみ講釈

「海外公演を何度か演ってまして」
「フランス語、イタリア語、スペイン語、で、今度はポルトガル語でも演ったンですよ」
「『長短』って噺がありまして、気の長い男と気の短い男が出てきましてね」
竜楽師匠、各国語で『長短』の一部を披露します。
「スペイン語とポルトガル語は似てる分だけ演りづらかったりもしますね」

「リスボンの街をね、此の格好(着流し)で歩きますとそりゃァ目立ちますよ」
「着流しでこう(扇子で扇ぐ仕草)やりながら街を歩いてる東洋人なんて居やァしません。
「遠くで手を合わせて拝んでる人も居ました」
「遠巻きに見ているポルトガル人の中からひとり、八十歳ぐらいのお婆ちゃんが不意に出てきまして」
「『お前はダライ・ラマか?』と訊くンですね」
「まさかダライ・ラマはリスボンには居ませんよ」

「『味噌豆』って噺もポルトガルで演ったんですよ」
「此の噺はですね、小僧がお勝手にある味噌豆を抓み喰いして旦那に見つかって怒られるんですね」
「其れでも小僧はてぇと旦那に見つからないように憚りに入って食べてるところに、矢張り隠れて味噌豆を食おうと憚りに入ろうとする旦那と鉢合わせるンですが」
「この憚り、所謂便所をポルトガル語で発音するてぇと大変に難しくてですね」
「何て云うかというと、"quarto de banho"」
「此れで便所って聞こえますか? 何か力の入らない感じじゃァないですか」
「これは大使館の方から直接教わったので間違いないポルトガル語なんですが」
「一度公演前に実際に使ってみようとホテルのフロントに行きましてね」
「"quarto de banho"と云いますてぇと、フロントに居るボーイさんが『ンン?』って顔するンですよ」
「此れ『味噌豆』の一番大事な台詞なのに、現地の人に通じなくてもう茫然自失ですよ」
「で、同行しました佐賀テレビのディレクターの方が其処に来まして」
「ボーイさんに向かって『トイレ何処!』って云いますてぇと、ボーイさん即座にトイレの方向を指差すンですね」
「あたしの"quarto de banho"が通じなくて、『トイレ何処!』って九州から出て来た男の日本語が通じるなんてどうなってンだと」
「もしかすると、大使館の方は気を遣ってですね、余り一般的じゃない古いポルトガル語を教えて呉れたンじゃァないかと思いましたね」
「まァそうですね、日本に来ている外国人の方が二十代の若者が居るホテルのフロントで、『セッチンハドコデスカ』と聞いているようなもンかもしれませんね」
「だから本番では『トイレ』と演りました。それでも笑ってましたよ」

本編:
竜楽師匠の『くしゃみ講釈』には、覗きからくり『八百屋お七』を語る件(くだり)がありません。
八百屋の女房の的外れで過剰な焼き餅が唐辛子を求めるまでの噺と入れ替わります。

「ほら、ねぇ何だっけ、あの八百屋の女の」
「八百屋の、女ァ? うちの主人に女が!?」
「いや、ねぇ、本郷のさァ何だっけ」
「本郷に!? ・・・そう云えば、ちょいちょい出掛ける先が本郷だわ!」
「あの、ほら、燃え盛った、ねぇ」
「燃え盛ったァ!? きぃーッ、どうしてくれよう!」
「ねぇ、ほら、一晩中さ、ほら」
「一晩中!? ンまー、お前は何を知ってるンだァ!? 云え、云わないか!!」
「ちちち違うンだよ、そうじゃないンだ、おお、おカミさん、く、苦しい」
「こン畜生ーッ、あ、の、ろくでなしィー!」
「ろろろくでなしって、あ、ああーッ、六でない七! お七! 八百屋お七、小姓の吉三! こここ胡椒二銭おくれー!」
「何だい、買い物かい? 人騒がせだねぇ、あんた少しは落ち着きなさいな」
「あんたに云われたくないよ!」

追い出しとなりまして、寒風吹き荒む外ィ追い出されますな。
折角中目黒に来たてんで、たっぷからのくらふと麦酒が飲める店ぇ目指しまして、小ちゃななていすたあぐらす四杯いただき、川ッ縁にある店へと河岸ィ変えましょうかねぇ。

(了)


◇"GIN'S #76" ・・・ 田中仁士氏による『ワンカップコンペティション』ペールエール部門優勝ビール
◇ライジングサン・ペールエール ・・・ バランス良し。
◇帝国IPA
◇スルガベイ・インペリアルIPA

※田中氏以外のクラフトビールはベアードブルーイング製。

o quarto de banho
sanitário público
Casa de Banho
Lavabo

投稿者 yoshimori : December 6, 2010 11:59 PM
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