January 25, 2011

『伍百弐拾伍の水田』

栄町という何処でも在りそうな名の街に来ている。
「まち」なのか「ちょう」なのか皆目分からない。
分からない筈である、誰も其の名を口にする事が無いのだ。
其れは秋葉原駅前を正しく外神田と呼ばないのと同様に。

初めて降りる駅に他との共通項を無理繰りに見い出すとなると、多少少少乱暴なきらいはあるが、当駅前はどうにも松戸感に溢れている。
とは云え、此処は千葉県ではないのだ。

何故この街を訪れたのだろうか。
限り無く曖昧な記憶を辿ってみると、始まりは池袋だった、と思う。
がしかし、よくよく調べてみると目指す店は池袋ではなかった。
自助努力では動かし難い理由にて、池袋より接続した線に乗り換えて運ばれた先に、約束の地があるという。

何よりもまず乗っている山手線外回りである。
此の儘池袋に辿り着く為には、ほぼ一周しなければならない。
そういう電車利用は嫌いではないが、都会に暮らす現代人としては愚かな行為である。
二秒ばかりの熟考の後、池袋にゆく必要はないと気付く。

以上の経緯に拠って、ダニエル・リカーリが唄う「ふたりの天使」を髣髴とさせる名の駅で乗り換え、件の栄町に辿り着いたという訳である。

其れにしても此の松戸感、着いた早早に帰る電車の時間を憂うのも松戸感の成せる業であろう。

(了)

投稿者 yoshimori : January 25, 2011 11:59 PM
コメント
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?