February 01, 2011

『火炙り京銘竹』

体調が戻らない。
発熱が伴わないだけの諸症状が続いている。

それでもアルコヲルは摂取したいと杯を重ねるのは文字通り地元の地酒である。
とは云え、如何にも其ればかりでは矢張り心許無く、医食同源を大義と掲げ、滋味のある食材を選んで帰宅。
用意した鐵鍋にて昆布だしのみで拵えた湯豆冨の後、鬼卸しにて粗く摩り下ろした大根を丸ごと一本入れて手羽元と長葱霙(みぞれ)鍋とする。

卸し入れた大根の滋養なんぞは加熱によって悉く破壊されている気もしないでもないが、買い求めた其れの辛味が思いの外強く、生食に不向きと判断した上での全機投入である。

が駄目になってる所為か塩加減も儘為らぬ。
まァ加減の効かなさも無限の振れ幅と思えば、此の世界もさぞかし広かろう。
案ずるだけ大儀である。
其れは浪一ツ立たぬ大海に浮かぶ小舟が如き、何の拠り所も無いながらに悠然とした心持ちの船出に等しい。

時節柄、揺ら揺らと漂う淡雪を眺むるが如き風情も相俟って杯は重なり厳寒の宵は更けてゆくのだ。

(了)

投稿者 yoshimori : February 1, 2011 11:59 PM
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