March 22, 2011

『継ぎ目無きヘリウムの都』 (第伍回)

<先代ノ伯爵>
一地方都市が壊滅の危機を迎えており、領主の生存が都市再建の要とし、捜索に参加してみるのだが、居住区行政区は共に崩壊しており、絶望的状況は甚だしい限りである。
それでも豪奢な施設の深部に領主の姿を発見。
しかし時既に遅く、彼は血の海に沈んでいた。
所持品を見ると、身分証明的な指環を身に着けていたので剥ぎ取って代表者に引き渡すと、「貴様、見殺しにしたのか! 今此処で手打ちにされないだけありがたいと思え!」等と不条理にも怒られ、次期領主が就任するまで預かると云われて指環は没収された。
腑に落ちないばかりか、だってしょうがないじゃん、よくやったほうだよとも云ってくれないなんて!
別の都市に移動すると、門番の衛兵より盗品を所持している廉で咎められ、持ち物を改められた。
勿論身に覚えも無くそんな筈も無いのだが、三つの選択肢の内の二つが「服役」か「徹底抗戦」なので、事勿れも已む無しと「罰金刑」に処されて数時間拘束される。
いちおう解放者側の英雄として名を馳せている筈なのだが、うっかり操作で「こそ泥」扱いにされたりもするので、日常的な動作ひとつひとつに油断がならないのだ。

<誉レ高キ>
顔立ちが似ている同姓の男らと会場を別にしての個別面談。
聞き込みの結果、生き別れの兄と弟だったと判明し、彼らは数年振りに再会する運びと相成る。
兄はしゃきしゃきっとした分別のある大人なのだが、弟は対照的に連日昼間から酒場で飲んだくれているという廃人同様の駄目さ加減である。
聞けば、幼い頃に遭遇した異形の生物より生命の危機に晒された経験が彼の心的外傷となっており、連続飲酒が逃避行動の一つかと思うと遣り切れない。
兄弟の故郷は都市より離れた郊外にあるという。
斥候として周辺地域と家屋の様子を探りに向かうと、弟が病んだ原因でもある異形の集団に襲われたので返り討ちに。
廃墟同然の室内には無数の白骨と一体の焼死体があるだけの陰惨な内装で、傷心の弟には見せられないと感じた。
それでも兄より郊外への同行を依頼され、水先案内人となる。
「やっぱり実家はいいなァ」と楽観的なのは兄ばかりで、弟は相変わらず酩酊状態で「用があるなら兄貴と話してくれよ」なんて、手前ぇの生家を解放してやったのにそんな態度かと恩知らずにも程があるのだった。

(續く)

投稿者 yoshimori : March 22, 2011 11:59 PM
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