April 11, 2011

『終ノ棲家』 (第拾壱回)

<儚キ夢ト黒魔法ノ國>
不正に罰金を徴収し、私腹を肥やしている衛兵が居るという。
しかも衛兵長という高地位である。
泥酔した果てに道端へ生き様やら何やらを吐き散らかした結果、件の衛兵長より罰金が科せられた挙句に支払いが滞り、家屋を差し押さえられて二進も三進も行かない状態になっている男がぼんやりと突っ立って居る。
彼に向かって「あの衛兵長ってさー、何か感じ悪いよねー」等とうかうか切り出すと、彼の中でもう溜まりに溜まっていた私憤も義憤も一挙に発憤してしまい、「あん畜生め、とっちめてやる!」とかそういう昭和な単語を並べながら自宅前で警備に就く衛兵の前にてぶち切れた挙句、事もあろうか刃物を抜いてしまい、凶器準備集合と公務執行妨害の廉でざっくりと斬り伏せられてあっさり絶命
事件の顛末を聞いたと話す(衛兵長よりも低地位な)平衛兵「何とかせにゃならんな」と云いながらも「仮にも上司を告発するんだから確固たる証拠がないとな」保身的に及び腰である。
「私が動く訳にはいかない、時に、君は、その、あれだ、面が割れてないからな」と甚だ遠まわしな物言いで、「誰か捨て駒居ないかなー」と聞こえないでもない。
まァ放って置いても話は進まないので、自ら名乗り出て調査を開始。
まずはと衛兵長の私室に忍び込み、彼の従兄弟らに宛てた手紙を発見する。
中身を確認すると小悪党な悪事がつらつらと記されているという迂闊さに加減は無く、その使途明瞭な金銭の行方は遠方に暮らす彼の親類への孝行だった。
親戚にとっての衛兵長とは思い遣りと贈り物を欠かさない好人物なのだろうが、過剰に罰金を徴収されて自宅を差し押さえられた上に斬殺されてしまったあの男が不憫と思い、証拠品として手紙を平衛兵に提出。
直後に衛兵長は逮捕、拘禁
自分の不法侵入が罪に問われやしまいかとドキがムネムネしたが、其処はスルーで相応の成功報酬を受け取る。
全体的には地味な事件だったが、選択次第では異なる展開もあったようで、その内容とは例の殺害された男に密かに恋慕していたという隣家の女が仇討ちを果たすというのだ。
どういう手口で歴戦錬磨である衛兵長を討ち倒すのだろうかと気になって眺めていると、女は自宅まで呼び出した衛兵長を独自の方法で麻痺らせて、部屋の隅に潜ませていた数匹の大型鼠に襲わせて喰い殺させるという陰惨な復讐劇だった。
未だ鼠が徘徊する部屋の中で女は「さあもう如何にでもして頂戴(涙)」と項垂れている様子。
此れだったら地味な方がいいやと先の落ちを着地点とするしかないのだ。

<焔庭ノ貴腐人>
湖の中洲にある小島から向かった先にあるのの前に来ている。
門前には身の丈は雲を突く如き大男門番を勤めているという。
見学きぶんで門へ向かうと、成る程、雲突く大男である。
数名の屈強な男どもが門番に戦いを挑んでは儚く散ってゆく。
死屍累累としている現場にて骨好きな男と知り合う。
ホネスキー「門番を亡き者にしたいから協力しろ」と云う。
無理っすよ先輩、あいつ体力あり過ぎっすよー。
じゃあ此れを使えと手渡されたのが、門番の兄の骨から作られた矢が数本である。
ホネスキー、趣味悪過ぎーとは思ったが、此の業界でまごまごしてるとずんずん置いてゆかれるのは分かっているので、ホネスキー先輩には逆らわず黙って受け取って置く。
兄骨の矢だけではパンチが無いと覚り、更なる弱点を攻めようと聞き込み調査を開始。
うろうろした先にて門番の母と名乗る女に会う。
よもや母親から息子さんの弱点は教えてくれないだろうと思いつつも話していると、当然弱みなんぞ伝えてはくれないのだが、自分の弟子であるひとりの女が喋り好きで困るという発言を聞き逃さなかった。
早速その弟子に会って話すと、あっさり「門番の弱点は母の涙」と教えてくれる。
「あ、これは師匠に内緒ね、また痛みの本質を教え込まれるから、あれはあまり好きじゃないの」
お前は何の弟子なんだ、何を教わっているんだとは問い詰めず、深夜に息子の勤務する姿を眺めては涙するという母親の佇む現場に居合わせて、母の涙を無事に回収。
ホネスキーから貰った骨の矢に母の涙を仕込み、門番に目掛けて中距離から射る射る射ると母の涙効果で見る見る弱り始め、やがてその巨体はドジャャァァッと門前にて鬱伏せに倒れるのだった。
満面の笑みを絶やさないホネスキーが薄気味悪いので軽く無視して斃れた門番より門の鍵を回収し、本件終了。
何だか申し訳無いので息子さんの件で母親に報告しにゆくと、挨拶こそ「久し振りね、あなたから与えられる痛みだけが私の悦びなのよ」等と隠微な台詞だったが、会話になると「この人でなし! よくも私の前に出られたものね!」と激しく面罵されてしまい、事故で遺族となった家庭に謝罪に訪れている加害者の如き悲痛な気持ちにもなるのだ。

(續く)

投稿者 yoshimori : April 11, 2011 11:59 PM
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