May 08, 2011

『幻想ト猊下』 (第弐拾肆回)

<海豚蹴リデ痺レテミタイナ>
湖沿岸の南方都市に居る。
此処は毒素を含んだ湿気が売りという。
・・・観光地にはならんな、それは
前述の環境ゆえに、毒耐性を持つ民族の姿をよく見掛ける。
「飛魚」という異名を持つ泳法の達人が住むという噂話を耳にし、街を徘徊するが見つからない。
別の情報筋では「運河を泳いでいるよ」という。
流石に街の外に出掛けてまで探すのは骨が折れると諦め、其の日は遇えず終いであった。
そんな達人の存在も忘れ、数週間後の深夜に同地を訪れていると、官憲らが犯罪者らしき人物を追い詰めている現場に遭遇する。
街の外では然程珍しい光景ではないが、中となると住人の誰もが騒騒しくなる為、ある意味祭りとなっており、街も賑やかに活気付いている。
暗がりの中、追われてる人物の顔を見ると・・・飛魚先生である。
やがて先生は街の中央部にある聖堂に逃げ込み、続いて官憲らも踊り込む。
状況を見届けてやらうと後に続くも、官憲は世間話をしながら入れ違いに出て行き、中は静寂そのものであった。
・・・先生、殺されたかしら。
せめて遺体だけでも確認しておこうと姿を探すも見つからない。
背後でが開いて閉まる音が聞こえ、自分も外へ出てみる。
人影を追うと先生其の人である。
先生、無事だったんすね。
「あ、君か、最近は物騒だから気を付けた方がいいぞ」
何を呑気な。

・・・後で気付いたのだが、此の先生は泳法の達人ではなく、盗ッ人技術の熟練者だったと知る。
名前から連想する先入観で誤解していたようだ。
先の捕物劇万引程度の盗みで聖堂で捕獲され、罰金刑で放免されたのだろうと推測。
こんなすっとこどっこいから何も教わる技は何も無いと覚り、此の街を後にするのだった。

(續く)

投稿者 yoshimori : May 8, 2011 11:59 PM
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