May 16, 2011

『幻想ト猊下』 (第参拾回)

<蓑山太郎(三十八歳・無職)>
其れは巷間では「ミノさん」と呼ばれている。
昼の番組に出演する方の名字敬称と同音ではあるが、当然別人である。
彼等は緑深き森林に住んでいる。
又、遺跡、廃坑の奥にも潜んでいるという事例もある。
(野で捕らえられ、番犬替わりの放し飼いであろう)
稀に得物を用いる個体も在る。
腕力に頼った殴打系重量級の得物ばかりである。
鼻息の荒さと図体の大きさから遠目からでも容易に発見される。
的が大きい為に飛び道具で狙われ易い。
走る姿に「えっほえっほえっほえっほ」と掛け声を被せてやるとより滑稽味が増す。
斃した後の戦利品は雄雄しく天に向けて尖ったである。
擂り潰して食すと苦いが滋養が在るという。
二頭で行動している姿もよく見受けられるが、番(つがい)だろうか。
殺伐とした世界に生きていると、日中に彼等が草原を闊歩している姿さえ牧歌的である。
・・・まァぶっちゃけだしな。

(續く)

投稿者 yoshimori : May 16, 2011 11:59 PM
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