April 25, 2012

『1000万本の召喚の杖』 (第12回)

◇女である。

◇氷雪で覆われた国の中央、やや南に位置する都市の馬宿にて、軍馬を物色している。
◇これまで、街道にて不慮の事故で死亡した何者かの所有権が離れた馬を攫うだけの乗馬生活だったので、今回が初購入となる。
◇超が付くほどの過積載でも普通に走ってくれるのが、馬の備える最大の魅力であると云えよう。
◇早速鞍に跨り、旅の始まりとも呼ぶべき最初に訪れた村を目指す。
◇実はこの集落で雑貨店を営む「接客態度が少しあれ」な男は、取引額が他所の競合店と比較しておよそ十倍という、稀有リッチな存在なのだ。
◇「この辺で完全に馬鹿じゃないのは俺達だけだ」
◇これが彼なりの「いらっしゃいませ」なのだから、豪気な商いである。
◇その彼と限度額までの取引(一方的な売却)を実施すると、当然残金は限りなくゼロになる。
◇ここからが「大人の事情」になってしまうのだが、彼に対して「物理的ダメージを与えてから、過去を振り返って無かった事にする」と、あら不思議、彼の金庫には元通りのゴールドが入っており、しかも「ぶん殴る前の状態」に戻っているので、再び取引が可能になるという運びである。
◇当初は刃物を振りかざしての流血によって、店内に居る従業員や客の悲鳴で阿鼻叫喚地獄絵図になるという精神的苦痛耐え難しと思い、まず自ら武装解除して素手での右ストレートによるワンパンチと決めて実際に実施していたのだが、回数を重ねるごとにその諸々の手続きが煩わしくなり、最終的には「声」を用いた衝撃波での「与ダメージ」となった。
◇説明すると、例えば「航空機ジェットエンジン試験場での事故」といった趣きか。
◇まァつまりその、とてつもなく強い風を浴びせて相手を吹っ飛ばすのだ。
◇咽喉より発せられた高出力の波動は、カウンター向かいに立つ高額取引可能な男を「車田飛び」で宙へと舞い上げ、結果不条理な暴力を受けたと理解した相手は即時に敵対する。
◇「貴様ァ、生きて帰れると思うなよッ!」
◇しかし、男は壁際に並ぶ商品陳列棚の天板を越えて落下した為、完全に真裏に嵌り込んでおり、怒りに任せて引き抜いた短剣を右手に握りしめてはいるものの、こちらには1ミリたりとも近付けないのだった。
◇ごめんね。

(續く)

◇◇◇
(改題) 『黒馬新聞 北方版』 #007-011
(改題) 『月長石ト鍛造ト言霊ノ國』 #005-006
(改題) 『竜殺シ氷地獄』 #001-004

投稿者 yoshimori : April 25, 2012 11:59 PM
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