August 26, 2012

『狂おしいほど咀嚼』 (第32回)

◇女である。(2人目)

◇首都にて不動産を購入後、役職と部下を与えられ、いい気になっている。
◇近隣地域へ派兵された一軍の責任者より、かねてから追跡していたカルト集団に対する内偵の結果を知らされる。
◇「あれ、まじでやばいって」
◇えーと、具体的にどうすればよいのかしら、隊長。
◇「執政殿は忙しいし何か面倒だからどうでもいいとか云ってるけど、俺はかなり不安だ。とりあえずその一団を一掃してもらって、後はそれから考えるわ」

◇で、目的地へ直行し内部へと侵入。
◇薄暗い通路を抜け、奥部へ目指して忍び寄ってみると、遠くの方で全方位で輝く光が見える。
◇洞窟内にそびえたつ尖塔の最上階には、高エネルギー体らしきカタマリが宙に浮いている様子。
◇周りを囲む黒衣の男女らは儀式的な詠唱を繰り返し、ひとりが声を荒げると全員が輪唱するように唱和して、その様はカルトさ全開である。
◇文脈から判断するに、かつてこの地で果てた何者かの復活を望んでいるようだ。
◇ぼんやりと儀式を眺めていても、状況に変化はないので、とりあえず悪事を働いていそうな黒衣の集団を殲滅。

◇首都に戻って、執政に事と次第を報告。
◇「何だと!?」
◇何ですか、大きな声で。
◇「お前は知らんのか、700年前に帝国を滅ぼしかけたというあの忌わしき女王を」
◇いやー、まだ生まれてませんから。
◇「戯れ言を。あれは大いに危険だ、甦ってはならんのだ。しかし、よくぞ儀式を阻止してくれた、礼を云うぞ」
◇終わりですかね。
◇「まだ分からんが、とりあえず今は問題なかろう」
◇また何かあったら呼んでください。
◇「そうならぬことを祈ろう」

◇数日後、配達人から一通の封書を受け取る。
◇中を開くと、「ごめん、やっぱり終わってなかった、すぐに来て」とある。
◇来ました。
◇「おお、来たか、早かったな。実は例の女王な、半分だけ復活したらしい」
◇半分とはまた半端っすね。
◇「今のところ魂だけで、肉体が不完全なのだろう。さ、早く今のうちに、さァ」
◇急かしますねー。じゃァ、行ってきます。

◇首都の地下にある死者の間より最深部へと向かい、女王の遺体を持ち帰りさえすれば、後は専門家が処理してくれるという。
◇大広間にて宙に浮かぶ輝く宝珠状の女王と対面。
◇前回の儀式で披露した力量に目を付けたらしく、この極限状態で女王よりスカウトされるも、「死んでからわらわの部下になれ」とは片腹痛い。
◇女王の唯一の遠距離攻撃である雷撃サンダーが地味に痛い。

◇・・・しかし、女王麾下に属する不死者どもの放つ「ぶっとばし」攻撃が難儀である。
◇仮に室内の中央部で果敢にも敵性対象と剣戟あいまみえる状態でも、一度それを喰らうと宙を舞いつつ壁際まで追い遣られてしまい、挙句オブジェクトの隙間に嵌まり込もうものなら、二度と起き上がれなくなるという、対抗手段の少ない大技である。
◇一計を案じ、姑息とは知りつつも、室内の扉の陰に潜みながらのスナイプショットに従事する。
◇計略図に当たり、ほどなくして部隊は全滅。
◇女王は質量の無い存在のまま、奥の間へと逃げてゆく。
◇勝った?
◇全ては終わったと信じ、女王の家来どもの遺品を漁っていると、急に扉が開かれて、短剣を握り締めた半透明の影のような姿の女王が現れた。
◇そのB級サイコスリラーの如き登場に、しばし我を見失って逃げ惑うが、直に冷静さを取戻して応戦し、灰にまで分解してやる。
◇玉座より女王の頭蓋を回収し、街へと戻る。

◇戻りました。
◇「遺体は、骨はどうした?」
◇専門家に預けました。早速処理するって云ってましたよ。
◇「それを聞いて安心したぞ」
◇これで終わりですね。
◇「そうだ、やっぱりあの時最初に忠告してくれた隊長の云うことをちゃんと聞いて、対処してりゃァよかったなって今更ながらに思うよ」
◇えー? あんたの怠慢が原因かーい。
◇・・・企業体質がよろしくないんだ。

(續)

投稿者 yoshimori : August 26, 2012 11:59 PM
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