2008年03月06日

池澤夏樹のメールマガジンに勧められて
『フランスの景観を読む』(和田幸信著 鹿島出版会)
という本を読んだのは
昨年(2007年)の末のことだ。

ちょうど
一昨年(2006年)の末ごろには
前にも書いたように
『美しい都市・醜い都市』(五十嵐太郎著 中公新書ラクレ)
という本を読んで
「美観」という固定観念を
打破されていたところだった。

うって変わって
『フランスの景観を読む』のほうは、
フランスの行政が
いわゆる「美観」のために
なみなみならぬ努力をしていることが描かれており、

いちどは打破された固定観念が
再びむくむくとアタマをもたげはじめた。
「やっぱり美観だよね!」と。


フランスでは
国や都市がさまざまな独自の法律で
景観を守っているそうで、

(正しくは本書を読んでいただきたいが)

例えば、

・都市のなかに広告を出していい地域と
広告が存在してはいけない地域がある。

・店名と業種以外を
サインとして出してはいけない。

・店のサインの出し方にルールがある。
板状の看板はNG。
立体文字を壁に直接はりつけるか、庇のうえに並べる。

・ビルにも板状の看板をつけてはいけない。
社名などの文字をつける場合は、
屋上に立体の文字だけをつけることで
「抜け」が見通せるようにする。

・1階、2階、3階のラインをそろえる。
通りのファサードに統一感をもたせる。

・広告を掲出していいのは、
バス停などの広告スペースと
工事現場の仮塀のみ(!)。

・広告の種類にも細かい分類があり、
いわゆる「足のついた看板」を、
郊外や農村地帯の空き地に立てることに
厳しい規制がある。

・・・などなど。


振り返って日本は・・・

新幹線に乗れば
田んぼの中に
巨大看板が立ち、

首都高を走れば
ビルの屋上に
ハコ型の巨大広告とビルボードが並び、

街を歩けば
おびただしいソデ看板に
目をうばわれ、

走るバスにまで
派手な全面広告がプリントされている。


もちろん、
クールジャパンの象徴としてのアキハバラや、
五十嵐太郎がいう近代遺産としての
「日本橋の上の首都高」が、
日本のオリジナリティだという意見もわかるが、

「無節操」だけが
現代日本のオリジナリティなのか
と思うと
ちょっと悲しくなる。


「金さえ払えば、そのスペースをどう使おうと広告主の勝手」
という風潮に
以前だれかが疑問を呈していたが、

モラルだけじゃダメなんデス!
本気でやるなら、立法デス!
と、フランスの例が雄弁に語っている。


・・・

・・・


「無節操な日本の風景」
という言い方に対して、

「いや、現実というものがそもそも無節操なんですよ。」
と言わんばかりの
写真展を見つけた。

小山登美夫ギャラリーで
3月8日(あさって)から開かれる
福居伸宏というアーチストの写真展だ。

「その現実の無節操さを凝視してごらんなさい・・・」「そうしたら、『存在』というものが気になってくるから・・・」
と、
問わず語りする写真たち。

赤瀬川原平を頂点とする「汚いけど綺麗」派
期待のニューフェース。
(すごい勝手な分類。)

ちなみに

赤瀬川原平を頂点とする
「汚いけど綺麗」派の中の、
「タイポロジー」分派の筆頭がベッヒャー夫妻なら、

この福居伸宏さんは
「存在論」分派の
期待のニューフェース。(しつこい。)

・・・

リンクに誘われて、

この福居伸宏さんのホームページにまで足を伸ばした。

写真はもちろんだが、
それ以上に興味をひかれたことがいくつかある。

ひとつは、
ステートメント」というものだ。

たとえば、盲目の人が光を取り戻したとします。網膜に差し込む十分な光、視神経から脳髄に伝達される正常なパルス。しかし、その人は、目に届く光を感知できたとしても、しばらくは「もの」を見ることができないでしょう。視覚経験のデータベースに「もの」が登録されていないからです。「見たことのないもの」は「見えない」ということです。「もの」が見えなければ、空間=外界世界が知覚されることもありません。では、「もの」が見える人はどうでしょうか。

まるで、
河出書房新社「世界の美術」(座右宝刊行会編 絶版)の
モネの巻の解説のような。。。


アーチストには、
自らの考えを言語化する能力も
必要なことなのだろう。
村上隆を持ち出すまでもなく。


ふたつめは、
この人のブログだ。
ひとりの新進写真家が日々どんなことを考えているのかが、かなり克明に描かれているように見えた。かと思えば、こんなハナシのトラックバックが引用されてたりもする、妙な生々しさ。

これを見て「あれ。。。。???」って感じた方いるでしょう。日本の○○○○カメラマンに似ていませんか?そう、写真集も売れていますね。別に非難している訳ではないのです。。ただ、彼はNHKの「トップランナー」って番組で、「自分で試行錯誤してやっと納得いくものになりました。」って言っていましたが、技法なのか、作品なのか。オリボ・バービエリという名前が番組には出てきませんでした。。。。どう思いますか?http://fujisan51.jugem.jp/?eid=156


みっつめは、
リンク」だ。

いわゆる「アーチストの卵」という存在が
リンクで横につながったり、
WEBで作品を日常的に発表したりする様子が、
アトリエ八潮」や「IIIIIIIIIII」というページから
見えてくる。


と、
これらみっつとも、
日ごろなかなか目を向ける機会がなかった
「ネットな現代を生きる新進アーチスト」というものの
生態が
生々しく想像されるようで、
見れども
興味はつきなかった。

見終わったあとも、
なんだか
他人の生々しい体温に触れたようで
なかなか
余韻は醒めなかった。

ネットは、
いつも不思議な体温の伝え方をする。

投稿者 vacant : 2008年03月06日 21:01
Share |
コメント

Pleasantly, the posting is truly the contemporary area of interest for this registry related issue. I harmonize along with your conclusions and will eagerly sit up for your incoming updates. Just say gives thanks won't sufficient, in your lucidity in your posting. I’ll immediately seize your rss feed to keep abreast of all updates.

Posted by: Irvin Hodrick : 2011年05月20日 00:07

I can not stop studying this.It really is so nice, so full of info that i just did not know.I am lucky to view that visitors are the truth is speaking about this drawback in this kind of a intelligent strategy, displaying us all many different. You might be one nice blogger. Please hold it up. I can not wait to go through what’s next.

Posted by: Adrian Bulow : 2011年05月21日 18:08

Pleasantly, the posting is actually the fresh area of interest for this registry related issue. I harmonize with your conclusions and will eagerly stay up for your incoming updates. Just say offers thanks is not going to sufficient, in your lucidity in your posting. I’ll immediately grab your rss feed to keep abreast of all updates.

Posted by: Shelby Woodby : 2011年05月22日 16:20

Hey - nice blog, just trying round some blogs, seems a fairly nice platform you are using. I’m at present using WordPress for a few of my sites but looking to change certainly one of them over to a platform much like yours as a trial run. Anything in particular you'd advocate about it?

Posted by: Claudio Salmons : 2011年06月19日 14:51

Great points…I would observe that as someone who really doesn’t comment to blogs a lot (in fact, this may be my first publish), I don’t suppose the term “lurker” is very flattering to a non-posting reader. It’s not your fault in any respect, but maybe the blogosphere may give you a greater, non-creepy title for the 90% of us that get pleasure from reading the posts.

Posted by: Bruno Stmichel : 2011年06月23日 22:56

I’ve read a few of the content material articles in your website now, and I absolutely like your style of website. I included it to my favorites website listing and should be coming back quickly. Remember to take a look at my website too and inform me what you think.

Posted by: Marlen Tomasini : 2011年07月12日 12:15

Good publish with some helpful info! Can’t say I completely agree with all that you've advised right here, but there are a good amount of essential data you've got highlighted that may be very useful on dog training and related topics. Please proceed offering more recommendations on this subject and related topics, as there are lots of out there like me who are trying to get to know the ups and downs.

Posted by: Elden Panganiban : 2011年09月02日 05:33