2010年10月30日

『オノマトピア——擬音語大国ニッポン考』桜井順(岩波現代文庫) より引用


 〈やがて壺がほかほかと湯気をたててあらわれる。フォークを入れてべろべろしたものをひきあげて皿にとってみると胃袋だった。とろとろに煮込んであってむっちりと柔らかい(中略)皿のソースを一滴のこらずパンで拭いとり、そのパンのさいごのひときれを呑みこみおわると、女はぐったりとなって壁にもたれた。薄く汗ばんで、頬が薔薇いろに輝き、うつろな眼がうるんで、暗がりでキラキラ閃めいた〉

(開高健『夏の闇』)

投稿者 vacant : 2010年10月30日 11:50 | トラックバック
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