2011年11月01日

「印象的な例では、イギリスに留学したりして、どちらかといえば国際志向だった学生が、インターンシップで長崎の五島列島にある小値賀町という風光明媚なところへ行って、そこに感動して、一旦、それこそ丸の内のど真ん中で2年ほど働いていたのを辞めて、移り住んだという例もあります。
 そういう傾向に対して、若者が内向きになったとか、海外へ行かなくなったとか、覇気がないなどと批判するのは全く的外れだと思うのです。何でも外に行けばいいというのでこれまでやってきて、今の地域の空洞化や疲弊が起こっているわけですから、若者がローカル志向、地元志向になっていきたというのは、大げさに言えば、日本を救っていくような流れで、むしろそれをいかにバックアップしていくかという政策を考えるべきです。
 結局、外向きか内向きかというのは、外国に行くから外向きで、日本のローカルにいるから内向きということでは全然なくて、大事なのは、表面的な行動ではなくて内面的な意識の問題のはずです。戦後の典型的な日本人は、企業の一員として海外にどんどん行っていたけれど、意識は極めて内向きだった。今の若者のほうが、外面的に見ると、地域とかローカルとか言っているけど、意識はむしろ外に開かれている。ちょっと若者に甘いかもしれないですけど、そういう部分は決して否定できないと思います。」


広井良典「脱成長期とシェア社会」より

『広告』vol.386 2011年7月号 所収



投稿者 vacant : 2011年11月01日 02:44 | トラックバック
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