November 15, 2005

公式記録員が憎い、嗚呼憎い

北区、ダイナー、29時04分。

こんな気の触れた時間に何かを食べようとしている自分が全くもって解せない。
立地条件は酷く、右隣の店舗には「サウナ」と看板を掲げていて、店名が同じであることから経営者は同一だろうと推測できる。
引き戸を開けながらの入店と同時に、雰囲気のある中年男性が退店。
眼鏡、長髪、着流しという記号だらけの装いだが、逆に職業を特定できない。
・・・京極夏彦?

店内は魂が半分ほど抜けた佇まい。
壁に張り出された手書きのメニュー類は、既に変色を越えて異質化しており、新しい段階へと化学変化しつつあるようだ。

「っしゃいませー」
薄暗い奥から、劇団構成員にも見える従業員が、虚ろな店内に似合わない笑顔を振り撒く。
「ご注文お決まりですかー?」
卓上にある無駄に豊富なメニューは、油が乗り切ってベトついて貼り付いている。
せめてもの思いを丼に込めて伝える。
・・・月見そば。

7分後。
「お待たせ致しましたー」
・・・深夜、既に家族も寝静まり、何かないかと台所を漁った結果出てくる、賞味期限がかすれて読めない乾麺を止む無く茹でた如き一品。
醤油という概念を根底から覆してくれる闇のような液体。
姿は見えないが、厨房管理者から生み出される数々の破壊力に箸は止まりっぱなしだ。

奥歯と刻み葱が格闘中、フィリピン人と思しき女と、銀縁眼鏡を掛けた中年男性が入店。
「ナポリタンと、唐揚げ定食」
開口一番、男はメニューに一瞥もくれず、フィリピーナと一言も交わすことなくオーダーを告げる。
別の意味で期待が持てる選択に畏怖の念を抱きつつ、ただただ打ち震えるしかなかった。

後でこの店をネット検索してたら、
「東京都北区保健所 保健予防課」
なんて物騒なページに行き当たる。
更にページを閲覧していると、
「感染症について(結核感染症係)」
「アルコール関連問題相談のお知らせ(精神保健係)」
「精神に障害をお持ちの方のデイケアについて(精神保健係)」
そんなキーワードばっかりで、あの時自分は何て店に行ってしまったのだろうと、後悔し始めたら、
「栄養情報・健康づくり推進店(栄養担当)」のカテゴリーに店が名を連ねていた。
ああ、何だと胸を撫で下ろす。

・・・いや、何かが間違っている。

投稿者 yoshimori : November 15, 2005 04:57 PM | トラックバック
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