June 23, 2006

『混沌とした赤』 (第3回)

おそらくは餃子と書かれているであろう看板、風雪にさらされ過ぎてかなり難読。

「ここ渋いっすね」
普通入ろうと思わない外観してるしね。

「出てきた水すら不安ですよ」
たぶん、水道水だな。蛇口から直で。

「全然話変わりますけど、前に話したバイト先で」
また、そんな話か。で?

「初めにまず水を出すじゃないですか。で、ある日客が僕を呼ぶんですよ」
クレームだ。

「ええ。『これ何?』ってコップをかざすと、底に見たことも無い色の物体が沈んでるんですよ」
げ。

「まあ、ぶっちゃけコップなんて洗浄器に突っ込んで終わりなんで、水気取ったり何もしてないから、どうしたってカビとか生えてくるわけですよ」
最悪やな。

「そんな感じで客は明らかに不快感をあらわにしてるんですが、ひととおり謝って、『ここは僕が持ちますから』って言うと、やつらは『そう? 悪いね』って大概問題無いんですよ」
まあ、君の懐が痛む訳でもないしね。

「ええ、それでその客が帰ったと思ったら、また戻ってくるんですよ。やべーやっぱ許してくれなかったそうだよなカビだもんなめんどくせえなあって構えてたら、『これ飲んで頑張ってよ』って缶コーヒーくれましたね。ほんとあほですよね」

こんなやつ、励ますな!

(了)

投稿者 yoshimori : June 23, 2006 11:59 PM | トラックバック
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