February 19, 2007

『永遠にとは言わないまでも、ほんの少しだけ愛をください』 (第2回)

自称潔癖症の男、ため息の後、缶コーヒーを一気に飲み干す。

「金ねえー」
また競馬で負けたの?

「いや、それはいつものことなんだけど、それよりも深刻な事態でさ」
なになに、振り込め詐欺とか。

「誰から電話もらって振り込むんだよ」
えー、お母さんとか。

「あー、それに近いかも」
母親に騙し取られたのか。

「何年か前の話なんだけど、毎日おねーちゃんのいる店に通い詰めて笑えないくらい借金をしてしまったんですね」
ほほう。

「で、これはまずいと、母親に通帳とキャッシュカードを預けたわけですよ」
賢明ですな。

「そしたら、最近母親から携帯にメールがきて」
満期になったと。

「いや、『全部遣い込んだ』って書いてあるの」
おー。

「それ見て速攻で電話したら出ないの。メール送信直後なのに」
ばっくれ。

「仕方ないからメールしたの。『何に遣った!?』って」
そしたら?

「『日本舞踊』って返ってきた。四文字だけの文章で」

しかも、今では立派な家元になってるという。
子に育てられる母。

(了)

投稿者 yoshimori : February 19, 2007 10:00 PM
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