April 11, 2008

◆『樂』 (第弐回・最終回)

仲入りが開けるってぇと、桟敷は混んで参りますな。
伸ばしてた足も畳んで、斜めになった畳に身体を預けるってぇと、居住まいを正しますねぇ。

落語 ■ 柳家 さん福 「だくだく」
ここに来まして、やっと落語らしい落語が聴けますな。
言うても当演目は古典ではなく、「大理石の時計」、「ラジオ」なんてぇ家電が登場するわけですねぇ。

漫才 ■ 昭和 のいる・こいる
どちらがのいるかこいるか分かりませんが、立ち位置正面左側の男の主体性の無さが改めて浮き彫りにされますな
「そうそうそうそうね、うんうんうん、違う違うね、やっぱりねそうね、ねぇ言ったでしょう」
ってどっちやねんて客席全員が思ってますねぇ。

落語 ■ 柳家 権太楼 「代書」
当演目では、履歴書の意味も知らん、いたーい四十男が発する素っ頓狂な言葉ひとつひとつに、代書書きが苦悩するという内容。
権太楼師匠が東京出身であることは百も承知なんですがねぇ、上方における河内弁のきったない言葉が良く似合い、始めて拝聴させて頂いた時の浪速の商人役に違和感ゼロだったのを思い出しましたな。

落語 ■ 林家 たい平 「七段目」
前座仕事のひとつに「前の噺家が座っていた座布団を裏返す」ってぇのがありますが、何故かこの時、全身ピンクの林家 ペーが前座仕事を行い、挙句ほんとの前座にやり方を正されてましたがねぇ
たい平師匠が言うには、

「ペー師匠から相談があると言われまして、師匠は最近落語に興味を持ったらしく、『弟子にしてくれ』って言うんですよ。で、この後、四ッ谷に連れてかれてですね、夜中の一時くらいからようやく相談に乗るんですがね」

当演目はってぇと、芝居好きが興じた若旦那、勘当寸前に自宅で謹慎するんですがねぇ、とても止められるわけも無く、店の小僧定吉と『忠臣蔵 七段目』を演じ、抜いてはいけない真剣を抜き放ち、斬られまいと逃げる定吉は階段から階下へと落ちるってぇ運びで。

「定吉! 大丈夫か、てっぺんから落ちたのかい?」
「いえ、七段目からでございます」

太神楽曲芸 ■ 翁家 和楽 社中
三人で行う、短剣九本投げは見ていて何だか分からねぇですな。
たぶんものすごいことをやっている、ってぇのはよく伝わるんですがねぇ。
日々血の滲む様な努力をしているかと思うと、あたしゃ人知れず涙ぐんじゃいますなぁ。

夜主任 ■ 柳家 花緑 (かろく) 「唖の釣り」
花緑師匠が座布団より顔を上げ、話し出したのをきっかけに、最前列に座していたひとりの老人がおもむろに立ち上がるってぇと、花緑師匠より、
「あ、おじいちゃん、どうかされましたか、大丈夫ですか?」
なんてぇ言葉すらもスルーして、まっすぐと出口へ向かいますな。
その間、花緑師匠、完全に素の様子で、その老人を振り向かせようとさかんに話し掛けるんですがねぇ、老人、何も耳に入ってない様子で木戸より出てゆきますねぇ。
花緑師匠、苦笑のまま、

「そうきましたかー。いやー、わたし九歳の頃から落語やってて、十代には高座に上がってましたがねぇ、こんなショックなことは初めてですよ。これは・・・トラウマになりますねぇ」

茶をすすりますな

当演目はってぇと、上野寛永寺にある殺生禁断の池で鯉釣りをする与太郎と七兵衛が、寺侍からの追捕から逃れる為、
「患った父と母が死ぬ前にどうしても鯉を食べたいと言ってたんで、殺生禁断と知りつつ釣りました」
という泣き落としで、鯉を持ち帰るってぇ内容ですねぇ。
与太郎は何とか難を逃れるも、七兵衛は寺侍の持つ六尺棒で殴られ過ぎて言葉を失ってしまい、聾唖者と思われ、やはり罪を許されて鯉を頂く運びになりますってぇと、
「ありがとうございます」なんてぇ返事をうっかりしてしまうんですな。

追い出しとなり、般若湯でも飲ろうなんてぇ運びで丸の内線に乗って移動しますな。

(了)

投稿者 yoshimori : April 11, 2008 09:25 PM
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