July 17, 2008

◆『鳥ノ越』

黄色い電車、総武線に揺られるってぇと、浅草橋なんてぇ駅で下車しまして、ホームにある看板を声に出して読むてぇと、

「ここは浅草駅ではありません
浅草橋駅」

なんてぇ、洒落にも落ちにもならねぇ注意書きがあるんですな。
西口から出ますってぇと、地図通りの道順で歩きますな。

『第四十四回 鳥越落語会』

会場は四階ってんで、エレベーターに乗るってぇと、降りた階には黄色いポロシャツ、ベージュの半パンにサンダル履きで顔色がやたら悪い何処かで見た顔がうろうろーうろうろーしてましてねぇ、受付の若ぇ姉さんらとわーきゃーなんて拍手して盛り上がってるんですな
・・・あれは紛れもなく、喜多八師匠でした。

師匠、開演時間十五分前ってぇのに、まだポロシャツ着たままでしてねぇ、コンビニ帰りかってぇくだけっぷりでしたな

大入りってんで、御膝送りと相成りましてねぇ、ちょいと前に椅子を詰めるってぇと、補助席を一列増設するんですな。

前座■春風亭 昇吉 「薬罐」
春風亭 昇太師匠の弟子一年目ってぇ云いますな。
マクラの声質にやや不安を感じましたがねぇ、噺に入るってぇと俄然テンションが上がりますな。
落語の中で講談に入るってぇと、扇子で腿を激しく叩くってぇ運びと相成りましてねぇ、常々思うんですが、稽古本番含めて痣だらけなんでしょうな。
川中島合戦の最中に那須与一が現れ、敵将がの代わりに被る水沸かしで射るってぇと、「かーん」と鳴りますな。
「だから、ヤカンってんだ」

真打■柳家 喜多八 「付き馬」
マクラ、「新宿末廣亭の楽屋入り口に『半ズボン、サンダルでの楽屋入りはお客様の手前、止めて頂きたく』ってぇ貼り紙がありましてねぇ、まさか私じゃないだろうと思ったら、(橘家)文左衛門宛てだったんですけどね。あいつ、一度封書で忠告されてんですけど、二度目だからってことでって貼り紙されてましたね」

足りない勘定を取り立てる若い衆を「馬」なんて申しまして、家まで付いて来るってんで、「付き馬」なんてぇ云いますな。

吉原の女郎屋で一晩明かす男、手持ちは無いからってんで、掛取りのお足を勘定に当てるってぇと、若い衆を連れて大門から出ますってぇと、湯屋で湯に浸かり果ては雷門まで歩くんですがねぇ、苛立つ若い衆に早桶屋の叔父から借りようと店先まで連れましてねぇ、主人には「あの男の兄が腫れの病で急死したってんで、図抜け大一番小判型の早桶を」なんてぇ注文をするってぇと、若い衆を呼び、「拵えてくれるって」なんてぇ告げて去ってゆきますしてねぇ、まんまと男に逃げられた若い衆、お前が間抜けだったんだ、と早桶屋の主人より無理ぐりに図抜け大一番小判型の早桶を背負わされるんですな。
「奴! こいつの馬やって来い!」

膝替わり■五街道 雲助 「死神」
楽屋にて席亭と喜多八師匠から「怪談噺を五十分たっぷりと」なんてぇオファーされてたんですけどねぇ、「さらってない噺は急には無理」ってんで断るんですな。
で、「『死神』なんてぇどうですか」と返すってぇと、「いいですねぇ」と良い返事を貰うんですがねぇ、

「あの二人は知らないんですよ、私の演る『死神』」が短いってのを。折角のクライアントからの要望なんで、『死神』を演らせて頂きます」

なんてぇ始まるんですがねぇ、やっぱり有言実行ってなもんで、枝葉末節を切り落とすが如く短い『死神』なんですな。
「お前の二本の足では逃げ切れまい、わしは空を飛ぶからな」なんてぇ伸び上がる雲助師匠が秀逸でしたな。

ここでお仲入りで御座います。

トリ■柳家 喜多八 「黄金(きん)の大黒」
「ほんとはねぇ、『三方一両損』にしようかと思ったんですがねぇ、二十人くらいなら演ろうかなと思ったんですが、今日はいっぱいなんで止めときます」

大家の倅、砂場で黄金の大黒像を拾うってぇと、祝いだってんで、長屋の住人を招き宴を開こうとするんですがねぇ、誰かの余計な入れ知恵で「羽織を着て口上しないと膳にありつけない」なんてぇ運びで、一枚の羽織を全員で着回すんですねぇ。
金ちゃんと呼ばれる、与太郎ライクなポジションの男のテンションが素晴らしいんですな。

四席にてお開きで御座います。

(了)

投稿者 yoshimori : July 17, 2008 11:59 PM
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