February 17, 2010

『二月中席~詠ミ人不知』

「詩人は長期間の、破壊的で計算された錯乱によって見者になる」
アルチュール・ランボー


誰が云い始めたかは失念したが、八代目桂文楽師匠は、「見者(ヴォワイヤン voyant)」と評されていた。
記憶違いかもしれない。
師匠は未来を予見する者だったろうか。

ひとつ思い当たるとしたら、高座で絶句した場合の口上を稽古していたということだ。
最後の口演、『大佛餅』の中で人名に詰まり、高座を降りた。

「・・・勉強をし直して参ります」

悪く云やァこのひとことで伝説のエピソードを残した師匠は、その後二度と高座に戻らなかった。

どうも、見者にはなれない。
おみくじや占いと一緒で、悪い結果は考えたくないのだ。

(了)

投稿者 yoshimori : February 17, 2010 11:59 PM
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