August 11, 2010

『八月中席(初日)~上野の狗(こうづけのいぬ)』

渋谷駅前の犬、実は帰らぬ主人を待ち続けた忠犬ではなく、当時駅前にあった焼き鳥屋台で立ち喰う客らの施す肉が目当てだったという、アンチ忠犬説は意外と巷間に伝わっており、実際にハチを問わず犬は焼き鳥好きとして知られ、更にハチ亡き後の解剖時には胃の内容物を「焼き鳥串数本」と発表されたことにも起因して、動物がらみの美談には嫌悪の表情を隠さないヒューマニストらは餌に群がる四つ足としての在り方を自然であり野性であると説き、プロフィールを構築し人格を与えたがる愛護家を軽視するのだ。

というわけで、今日は焼き鳥を喰らおうと思う。(ひどい前振り)
目指すは、混雑が容易に予想される狭き人気店なのだが、品の秀逸回転率の良さが取柄なのだ。

何とか丸太のカウンターに滑り込んだ20時半、この瞬間で満席である。
他店と比較すると圧倒的に割高な飲み物を頼み、続けてを幾つか。

まずは、つくね、ひな皮、ゴンボ(ぼんぢり)、砂きもの四本。

レバ刺しには「時価」との表記があり、大きさを指定しないとデフォルトで「大」が出てくる。
大将の指令により、醤油に酢橘を搾り入れ、山葵を溶かし、七味を軽く振って食すと、口中にてほろほろと沁みてゆく。

ししとう、椎茸を追加。

・・・大根おろしが来ない。

通い慣れた店ではあるが、暑さゆえ自己管理の不徹底さか、渋谷の犬になりきれなかったのか、今宵の焼き物は精彩を欠いており、及第点を与えられなかったのは返す返すも残念である。

メニューの端にひときわ輝く、山鳩(11月~3月)、真鴨(時価)、小鴨(価格表示空欄)等のワイルドなジビエ系、今夜攻めるのは止して、来世に期待しよう。

(了)

投稿者 yoshimori : August 11, 2010 11:59 PM
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