December 28, 2010

『十二月下席~水棲三題』

つらつらと。

◇読ミ了(ジマ)イ
入院中に読んでいた文庫本を読み終える。
『ぼくが電話をかけている場所』(中央公論社・中公文庫)
レイモンド・カーヴァー(Raymond Carver)
村上春樹:訳
「ダンスしないか?」 "Why don't You Dance?"
「出かけるって女たちに言ってくるよ」 "Tell the Women we're Going"
「大聖堂」"Cathedral"
「菓子袋」"Sacks"
「あなたお医者さま?」"Are You a Doctor?"
「ぼくが電話をかけている場所」"Where I'm calling from"
「足もとに流れる深い川」"So Much Water so Close to Home"
「何もかもが彼にくっついていた」"Everything Stuck to Him"

この短編集の作品群がロバート・アルトマンが監督した映画『ショート・カッツ』の原作と知るのは読後より少し後になる。
映画版のオチは確かL.A.大地震

◇自ラ愛ス
年上の後輩が壁に貼られた品書きを眺めながら髭の若造に尋ねている。
「この本日のカマ焼きって魚は何?」
「あ、それはー、今聞いてきますんで、少しお待ち下さーい」
程無くして戻って来る
「あー、お客さんすいません、今日のカマ焼きブリなんですけど、これ今日最後のひとつでヤマんなっちゃったみたいなんですよ」
「なるほど。じゃァそんなんで」
ってお前「ヤマ」って意味分かってんの?
品切れなんじゃないの?」
知ってんのかよ。そんな一般的な単語だっけか。
「俺は使うね」
使わねぇよ、気持ち悪ぃな。喰いたかったな。
程無くして再び現れる髭。
「お待たせ致しましたー、ぶりカマでっす」
っておい、最後のひとつが残ってるならヤマじゃねぇじゃん。
「俺等が頼んだ『最後のひとつでヤマ』だったんだ」
紛らわしいな。しかし、よくまァあの会話で注文が成り立つなァ。
「まァ俺だからな」
根拠のない自信に満ち溢れるのは止してくれ。

◇沈ミ没ス
自宅厠より水が流れ続ける音が聞こえる。
何が起きたのかとタンク内を確認すると、ラバー製の蓋が浮きっ放しである。
通常、タンク内に適量の水が溜まると浮子(うき)の役目を果たすプラスティック製の球体と繋がる軸と連動して蓋を閉じるのだが、間に何かが挟まっているようだ。
引き上げてみると、タンク内の浄水剤が半溶けのままで無残な姿である。
何となくオランダを救った少年を思い出した。
ていうか、半永久的に浄水作用のあるチタンボールを買っても固定しないと同じ目に遭うと知る。

(了)

投稿者 yoshimori : December 28, 2010 11:59 PM
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