April 23, 2011

◆『御園会館的心』

えェ、足許お悪ぅござんす。
本日ァ蒲田での落語会で御座ィます。
品川より京浜東北線に揺られまして歩廊(ぷらっとほーむ)に降り立ちますてぇと、聞こえて参りますのは、虹の都光の港キネマの天地で始まります『蒲田行進曲』のめろでぃーでして、亡き銀ちゃんの面影を偲びますな。(適当)

『春の特選落語名人会』
@蒲田五丁目・大田区民ホールアプリコ(大ホール)

木目も真新しい小奇麗でただッ広い会場なんですがねぇ、二階前脇の席ががら空きでして、二階後ろに座るあたしには何処か釈然としない席決めでござんす。

林家まめ平◆転失気

「(林家)正蔵の四番弟子です」

本編:
「てんしき」が何か分からない和尚、小僧珍念より「御御御付け(おみおつけ)の具にして食べちゃった」と聞きまして、「あれは今旬だからなァ」と独り言(ご)ちます。

春風亭一之輔◆天狗裁き

「近所のスーパーで米とトイレットペーパーを買い溜めする宮本の小母(おば)さんに向かって佐々木の爺さんが、今まで聞いた中でいちばん穢(きたな)い啖呵を切ります」
「『婆ァ、どんだけ雲古すりゃァ気が済むんだ!』」

「病院の待合室というのは眠気を誘うもんですね」
「私が待合室に知らない方を二人きりだったんです」
「隣に居る知らない方は待ち草臥れたのか、もう寝ちゃってるんですね」
「で、看護婦さんが『田中さーん』と何度も田中さんを呼ぶんです」
「待合室には二人しかいませんで、僕は本名川上ってんですけど、田中さんは隣で寝てる此の人なんですよ」
「『もしもし、呼ばれてますよ、田中さんでしょ?』」
「『・・・あ、うんん、あどうもありがとうございまふ』」
「『ずいぶん辛そうですね、何処がお悪いんですか』」
「『・・・不眠症なんです』」

本編:
八五郎と長屋の大家、お白砂の上で大岡越前守様のお調べと相成ります。
「大岡越前守様、加藤剛です」

林家正蔵◆四段目

「此の時期、行っちゃァいけない寄席があります」
「新宿末廣亭は築八十年の老舗ですが、大工さんがしっかりしてたんでしょうね」
「かなり揺れたんですが、無事だったようです」
「で、席亭が夜の部を開くかどうか決めるのに、従業員に柱の皹や亀裂の有無を確認させたところ」
「数が多過ぎてよく分からないという事だったそうです」

本編:
店の主人、小僧貞吉の芝居好きに呆れつつも、貞吉以外の店の連中と総見をしようと芝居の話を振ります。
「今度の『(仮名手本)忠臣蔵』、五段目の山崎街道の猪(しし)は評判だそうだ」
「何ででございますか」
「前脚が團十郎、後ろ脚が海老蔵という成田屋親子競演だそうだ」
「旦那、何を馬鹿な事を」
「馬鹿とは何だ、儂は今お向かいの佐平さんから聞いたばかりだ」
「猪なんてのは大部屋の役者が演るもんですよ、成田屋が親子でそんな馬鹿な話はありません、第一、海老蔵は今芝居に出られないんですから」

お仲入りで御座ィます。

柳家三三◆締め込み

「近頃では犯罪も多様化してますね」
「今流行りのハイテク犯罪、よぉく調べてみるてぇと明治時代からあったんだそうで」
「汚ねぇ下駄ァ履いて湯屋に行って、帰りに綺麗な下駄ァ履いて帰るんだそうですよ」
「・・・履いてく犯罪・・・」

三遊亭圓楽◆濱野矩隨(はまののりゆき)

「去年、(桂)歌丸師匠と二人会てんで仙台に行きました」
「お互いに弟子も居ますし、何人も引き連れて歩いております」
「歌丸さんをいちばん前を歩かせます」
「何故って、後ろに置いとくと見えないところで引っ繰り返っても分からないですから」
「下手すりゃ気付かないで我々だけが先に行っちゃいますし」
「だから、前を歩かせますと倒れてもすぐに分かりますね」
「・・・倒れたところを踏ん付けて行きますがね」

追い出しとなりまして、お開きで御座ィます。
会場を後にしますてぇと雨脚こそ弱まりましたが、びる風が強く吹いておりまして、びにーる傘の上ッ面だけが風に煽られて宙を舞っております。
骨ばかりの柄だけを持って陸(おか)に揚がった海月(くらげ)みてぇな其れを追い駆ける知らない女子の絵面が大層可笑しいんですがねぇ、其の海月はてぇと街頭募金の学生らの足許に転がってゆきまして、黄色ィ悲鳴と共に邪険にされておりましたのが大変に世知辛いですなァ。
・・・親の心子知らず名工濱野の一席で御座ィます。

(了)

投稿者 yoshimori : April 23, 2011 11:59 PM
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