April 19, 2011

『終ノ棲家』 (第拾肆回)

<辺境ノ地ニ嫁グ娘ニ同情>
春からの大学生活にも慣れ始め、教授からの受ける命懸けの用事さえも片手間に為りつつある今日此の頃。
怠惰な日常に喝を入れるべく、教授に断って地方に遠征するとしよう。
首都より北西にある都市では、先年亡くなった領主に代わって其の妻が亡き夫の職を務めている。
代行領主である夫人は最近夫の肖像画が盗難の憂き目に遭い難儀しているという。
夫人も如何いう了見か、通行人に過ぎない自分を「捜査官殿」と呼ばわって事件の解明を要求している様子。
ぬっるい仕事ではあるが、一国の長に恩を売って損は無かろうと安請合う。
立入禁止区域すら入れる権限さえ与えられ、城内を我が物顔で徘徊。
夫人より教えられた容疑者は僅か二人許りである。
一人は領主の邸宅に出入りする酒乱癖の肉体労働者、もう一人は城内で寝起きする頭上に頂くアフロも輝かしいソウルトレイン姐さんである。
調査の結果、アフロ姐さんが元領主の肖像画の作者と判明。
道ならぬ戀路の果ての遺品略奪という下世話な展開に。
此処で選択を迫られる捜査官、取り返した絵と共にアフロを領主夫人の前に突き出すか、はたまたアフロに同情し訴追を止めにして絵も其の儘作者である彼女の元にするか。
むー。
・・・夫を失って傷心の夫人には申し訳無いが、此処は一つアフロの助命を選択しよう。
偽証にも等しい捜査結果を夫人に報告するが、がっかりした様子は一瞬だけで、其の後は至って普通である。
一方、放免された上に絵を返さなくても良いと知ったアフロからは「あなたの肖像画を描いてあげるから三週間後に来て」と告げられる。
其れは確かに世界にたった一枚の寶である。
大変に慶ばしい話なのだが、よくよく考えてみると、先程までは与えられた捜査権にて城内を徘徊しても咎められなかったのだが、既に其の権限は喪失しているので、三週間後に此のアフロの居る部屋へ赴く為には如何したって不法侵入せざるを得ない
屈強な衛兵が二十四時間三百六十五日巡回してる此の場所に?
・・・お前が絵を届けに来い、という選択肢が無かったばかりに次回よりアフロと会うのも命懸けなのだ。

(續く)

投稿者 yoshimori : April 19, 2011 11:59 PM
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