May 23, 2011

『幻想ト猊下』 (第参拾壱回)

<僕達ノ失敗>
怠惰と高慢が災いし、一夜にして滅んだ王国が在るという。
然も其の結果、人知を超越した存在の怒りを買った為、滅びの瞬間を永遠に継続するという無限ループに陥る事態と為っており、日日繰り返される日常が滅亡の其の刻なのである。
聞けば、異教徒の軍勢によって城門が破られる際に自軍側にて幾つかの不手際が見受けられ、四つの人為的な失策を正しい道へと導けば或いは滅亡エンドレスが解除されるかもしれないという。
一人目、射手でありながら肝心の矢を武器庫に忘れた女に忘れ物を渡す。
が、此の女射手、元来より数をカウント出来ない為、敵勢が門を越えても尚出鱈目な矢数を口ずさみながら弓も構えずに棒立ちである。
二人目、人を救う身でありながら「俺が俺が」としか云わない僧侶短剣を渡す。
渡した瞬間に「俺が俺が」と云いつつ斬り付けて来やがって、其の隙に敵勢の飛び道具で斃される。
三人目、婚約者を捜しているという男、彼が「婚約者」と言い張る人形を敵勢の一人の背中にそっと載せてみる。
婚約者を敵に奪われたと思い込んだ男、孤軍奮闘するかと思いきや、只其の場に蹲(うずくま)るのみである。
四つ目のミステイクが何なのか分からず、万策尽きてしまう。
如何にも動きが取れないので、恥を忍んで業界の先人に事情を訊ねてみると、「終りが無いのが終りなのさ」と返される。
何だ其れは。
「哲学的でしょ」
いや、そんな抽象的な話はしてない。
「手詰まりするのは此の件だけじゃないからさ、もっと構えていかないと人生愉しくないよー」
・・・。

詰みの因果関係も分からぬ儘、振り返りつつも滅びの時を繰り返す王国を後にする。
其の行動における自由度の高さが進行に災いしていると感じた瞬間である。
・・・まァ色んな人と話してはみたけど、皆あんまり善い人でもなかったみたいだから、ぶっちゃけ此の儘滅び續けてもいいや。

(續く)

投稿者 yoshimori : May 23, 2011 11:59 PM
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