June 18, 2011

◆『紀伊根来寺の僧兵が身を偽った果てが十八の娘』

本日ァ二人会の通し公演でござんす。
曇天の下、銀座線も半蔵門線も止まるなんてぇ青山一丁目を目指します。

『rakugoオルタナティブvol.2 談笑ダブルス「東京物語」』
@赤坂七丁目・草月ホール

長丁場でござんすがねぇ、昼夜公演の前半部からお付き合い願いますな。

<昼の部>

立川志らべ◆持参金

「何故談笑師匠と市馬師匠の会に志らくの弟子の私が呼ばれたか考えてみましたら」
「三人とも身長が百八十糎(センチ)超えなんですね」

立川談笑◆堀の内

「私は江東区北砂の出身でして」
「子供の頃は近所に紙芝居の小父さんが来るような土地でした」
「今は随分と数は減りましたが、駄菓子屋が町内に何軒もありまして」
「店の奥でもんじゃを食べてました」
「今の人達は『月島のもんじゃ焼き』と呼んでますが、私に云わせればもんじゃですね」
「今では焼く時にまァ土手を作ったり、和牛なんて入ってたりしますが」
「私の云うもんじゃは土手も拵えませんし、ベビースターみたいなラーメンを砕いた様な菓子を入れるだけです」
「そもそも、もんじゃと呼べる条件は唯一つ」
「・・・不味いって事です」

「今は杉並区の堀の内に住んでまして」
「杉並区の人は善い人ばかりですね」
「江東区の人は良くないです」
「先日、三十年振りの同窓会に行きましたら」
「まァ私の父もそうですけど、地元では職人や商店主の倅ばかりなんですね」
「うちの父親なんて公の場で壇上に立ってスピーチを求められましたところ」
「涙ぐみながら『・・・サラリーマンが憧れでしたッ』って云うんですよ」
「・・・スタートラインはそんなに後ろかと」
「で、同窓会は矢張り職人や商店主だらけですから、スーツにネクタイ姿が居ないんですね」
「一人だけ遅れて来た同級生が居まして、彼がスーツにネクタイで登場するんですよ」
「・・・アパレルとか云ってましたけど、嘘じゃないかと思うんですけどね」
「先に来てた同級生が『遅いじゃん、お前』って云いましたら」
「『ッせぇなッ、お前らが早過ぎるんだよ、べっ』」
「って此れ最後の『べっ』ってガム飛ばす音ですよ」

柳亭市馬◆首提灯

「まァ『弁天様を拝んでる』なんてぇサゲを云う人は落語協会には居ませんね」
「前座で『持参金』演るのも落語協会には居りません」

お仲入りで御座ィます。

立川談笑◆子別れ

本編:
江戸は昭和に、登場する大工の棟梁(とうりゅう)は建設会社社長に置き換えられて話は進みます。
終盤に差し掛かって全ては社長の倅、金坊が企んで実行した作戦だったと知れます。
東京タワーやサンシャイン60、果ては「帰ってきたウルトラマン」という名ののすたるじぃに集約されます。

柳亭市馬・立川談笑◆特別対談「柳家小さんの東京」

談笑「小さん師匠、鰻はどちらで」
市馬「会合がある時とかお客とは池之端の『伊豆榮』だったね。今じゃァビルの上にラウンジなんか作っちゃってるけど」
談笑「えーと、個人では別という事ですかね」
市馬「そう、天神下にある『小福』という店だったね」
談笑「それはやっぱりあれですか、伊豆榮が・・・」
市馬「いや、そういう訳でもないんだろうけど、小福の鰻が好きだったみたいで」
談笑「成る程」
市馬「兎に角、大食漢だからね、店に丼を置いてたよ」
談笑「マイ丼!」
市馬「鰻重はあるんだけど、鰻丼が無くてね」
談笑「お重はやっぱあれですか」
市馬「『重箱は面倒臭ぇ』って云ってた」
談笑「丼はその後どうされたんですか」
市馬「今でも店にあるよ」
談笑「小さんの丼のある店」

市馬「しかしよく貸してくれたねぇ、草月流だよ此処は」
談笑「恐らく(立川)談春さんと私を間違えてるんじゃないかと思うんですよ」
市馬「その内、化けの皮も剥がれてねぇ」
談笑「それまでは何とか」

追い出しが鳴りまして、昼の部終演で御座ィます。
小一時間ばかりの間を繋ごうと、霧雨ン中、外へと繰り出しますが、開いてる店なんてぇ喫茶店ぐれぇのもんです。
愚図愚図と遣り過ごしまして、元の場所の元の席へと戻ります。

<夜の部>

立川らく次◆鮫講釈

本編:
らく次あにさんの趣味でしょうか、何故か「宝塚歌劇団歴代スター」言い立てがあります。

立川談笑◆イラサリマケー

「以前、私が前座だった頃、談志師匠と師匠の息子(松岡慎太郎)さんと銀座を歩いておりまして」
「帝国ホテルの前を通りましたら、入口に『桂南光襲名披露』とありまして」
「南光さんは上方の噺家さんですね」
「その後に『出演:柳家小さん』とあるんですね」
「で、師匠が息子さんに『お前、面白いもん見てぇか?』って聴くんですよ」
「厭ァな予感がしたんですが、前座ですから師匠に付いて行くしかないんですよ」
「あの立川談志がですよ、今正に帝国ホテルの楽屋口に向かっているという」
「その頃、中の人間はその核ミサイルの接近に気付いてすらいない状態で」
「で、楽屋のドアをばーんて開けましたら」
「小さん師匠、(桂)米朝師匠、南光師匠が座ってまして」
「うちの師匠が徐(おもむろ)に手を付きまして」
「『此の度は御目出度う御座います』って口上を述べるんですよ」
「で、その後は米朝師匠に向かって、『最近の上方落語はどうですか』なんて喋ってるんですね」
「その横で小さん師匠がずーっと談志師匠を睨んでる状態ですよ」
「米朝師匠も何だかな空気に気付いてまして、何処か上の空で『せやなァせやなァ』って合槌を打つばっかりなんです」
「その内、小さん師匠がキレまして、『てぇげぇにしやがれッ!』って怒鳴ったんですね」
「『お前は昔ッから理屈っぽいてんだよッ』って」
「そしたら、談志師匠が『いや、理屈かどうかてぇのは個人の主観であって』とか云うんです」
「『そういうところが駄目なんだッ』って云われてました」
「で、大阪から来て此の場に居なかった方が一人居まして」
「談志師匠がトイレに立った時に丁度鉢合わせしたのが、その方(桂)枝雀師匠だったんです」
「枝雀師匠とうちの師匠はお互いにリスペクトはあったかもしれませんが、落語の理論で云うと全然合わない人達でしたから、此処は此処で微妙な関係なんですよ」
「談志師匠、枝雀師匠の方にどっかと手を乗せて『やってる?』って聞くんですね」
「そしたら、枝雀師匠は完全に呑まれちゃってて、『はァ、えェ、まァ、うん』って」
「これ実は前にとあるパーティーで談志師匠が誰かにやられてた、そのまんまの手口なんですよ」
「その誰かというのが、勝新(太郎)ですよ」
「うちの師匠も勝新にそれをやられて、『はァ、えェ、まァ、うん』とやってましたから」

立川談笑◆黄金餅(こがねもち)

談笑師匠、一度袖に引っ込みますが、間髪入れずに再び高座に上がります。

「あのネタ(『イラサリマケー』)の後は上がり難いとよく云われましたが」
「まさか自分で体感するとは思いませんでした」

本編:
談笑における金山寺屋の金兵衛は願人坊主の西念から貯め込んだ小金を盗る気で行動します。
焼き場では呑み込んだ金が心配になり、生焼けにする為、「遠火の強火」を希望しますと、元料理屋の板前だった焼き場の男は「そういう客を待ってた」と請合いますが、遺骸に「かぼす」を入れたりしまして、金兵衛より「かぼすは要らねぇんだッ」と投げ付けられます。

お仲入りで御座ィます。

立川志らく◆唐茄子屋政談

「本日は長野での独演会がありましたので、談笑の会なのに私の上がりが最後になっております」

本編:
後で伺ったんですがね、「江戸の名物、唐茄子屋政談の一席でございます」というのは『黄金餅』のサゲと間違えたと告白しておりました。

立川志らく・立川談笑◆特別対談「立川談志の東京」

志らく「(立川)志の八の逮捕騒ぎどう思う?」
談笑「いきなりそこですか」
志らく「シャブ中だったら隔離して薬抜けば治るっていうのはあるけど、性癖は絶ッ対無理だね」
談笑「あれはどうなんですかね」
志らく「覗いた相手が男っていうじゃない」
談笑「そうなんですよ。男と分かってて覗いたのか、それとも女だと思ったら結果的に男だったのか分かりませんね」
志らく「そこんちの旦那さんに捕まったんだよね」
談笑「ええ、聞いてみたらですね、その家の奥さんが屋上から外を見てて、風呂場を覗いてる志の八の姿を見つけて、入浴中の旦那さんに『誰かうちを除いてる人がいる』と報告して、その旦那さんに追い掛けられて捕まったんですよね」
志らく「そう、てことはその旦那は全裸だった可能性はあるよね」
談笑「もし志の八がそっち側に人間なら、全裸の男に追い掛けられて抱きしめられるのは無上の喜びで、リスク冒しても価値はあるんじゃないかと」
志らく「本人を呼び出して聞こうよ、こういうところで」
談笑「そうですね、(プロデューサーに向かって)そういう企画やりませんか?」

談笑「『宮』の帰りに(古今亭)志ん朝師匠と談志師匠が銀座のガード下で抱き合って泣いてたのは本当なんですか?」 ※『宮』・・・ 著名人の通う銀座のバー
志らく「本当らしいよ。『お前は名人になれ、お前は名人になれ』って」
談笑「ははあ」
志らく「前に大阪で米朝師匠とうちの師匠が飲んだ事があって、二人ともべろべろになるまで飲んでて、談志師匠が矢ッ張りそこでも『上方にはあんたしかいない、あんたしかいない』って別れ際に抱き締めてた」
談笑「米朝師匠を」
志らく「談志師匠締め過ぎてて、米朝師匠がもうこんな鯖折り状態で、『やめなはれ、やめなはれ』って泣いてた」
談笑「ははあ、最後は大阪の話で〆るという、東京の話は何処に行ったのかと」

追い出しが鳴りまして真のお開きでござんす。
ビルマ人の云うところの「カナシクシンダドウブツノオナカカッサバイテズルズルトナイゾウヲヒキズリダシテブッタギッテアミノウエニノセテジウジウトヤイタモノ」でも戴こうかと俥屋ァ呼びまして移動しまさァね。

(了)

投稿者 yoshimori : June 18, 2011 11:59 PM
コメント

This it is an interesting piece of information. But first of all I must salute all the visitors. Hello. After this I must say that I m going to post http://www.rockasho.com/ym/archives/006403.html on my Digg profile. And this because at last I found what I was looking for. What you share here is really very good post. In the minute I saw this tittle, 義盛記: ◆『紀伊根来寺の僧兵が身を偽った果てが十八の娘』, on google search I was very glad. I think I found something with the same ideea here http://www.xfly.ro, I'm not sure but I thing it was the same. My regrds

Posted by: bilete avion : November 1, 2011 03:41 PM
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?