June 17, 2011

『偽善と呼ばれる為に求められる十七の条件』(第40回)

<屍人返リ>
誰かの真似をする際に其の名其の物を名乗る輩は藝が青いと云えよう。
実例は割愛するが、各各の胸中に具体的な像が在る筈である。
さて、千年以上前に建造されたという遺跡を巡り歩いている。
今日も今日とて、北方にある廃墟とも呼ぶべき旧跡を訪れる。
暗く冷たく厚く重い石扉を押し開くと、朽ち果てた外観とは裏腹に、悠久の時を経て尚内部は矢鱈と賑やかな様子である。
室内への採光は古代の超自然的な技術により、管理者要らずにて半永久に輝き続けているものの、墓所でもある此の建造物には、守護者としての魂無き存在が徘徊しているという物騒な空間である。
タヒチにおけるヴードゥー魔術が労働力として生ける死人を生み出した経緯と同様に、此の遺跡での彼等も例に漏れず働き者である。
しかも表皮臓腑共に腐れ爛(ただ)れている構造でありながら、如何いう訳か駆け足が速いという事実が追われる者に対して余計な恐怖を演出している。
そして彼等の侵入者発見時の唸り声は前述の下手な藝人のベタな演出なのである。
「ゾ~ンビ~」
分かったから分かったから誰も君らの身の上なんて疑ってないから、と後ろ走りで逃げる今日此の頃なのである。

(續く)

投稿者 yoshimori : June 17, 2011 11:59 PM
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