March 10, 2012

『黒馬新聞 北方版』 (第9回)

◇女である。

◇生きながらにして、魂だけが彷徨う特殊エリアに来ている。
◇霧の中に建つ荘厳な館の中で、伝説に名を残すという古(いにしえ)の武人(死人)らと合流し、扉も蹴破らんばかりに勇んで外へ。
◇激しい攻防の末、凶々しくも禍々しい「世界を喰らう者」からの脅威の撃退に成功。
◇ふーやれやれ、これで肩の荷も下りたなと世話になった人々へ挨拶回り。
◇浮島状の地上より館へのアプローチは、大型爬虫類の脊椎をただ横に渡しただけの架け橋しかなく、遥か遠い眼下には黒々とした水面を湛えた奈落の底である。
◇しかも内に湾曲した胸骨は下に向かって斜めっており、足場の悪い事この上ない。
◇「みんな、ありがと・・・あーっっ」
◇あっさりと足を滑らし、落下。
◇天下無双の竜殺しも、「物理的に戻れない湖底」には甚だ弱く、瞬時に生命活動を停止し、完全脱力した四肢を、なよなよと水中を漂わせるしかないのだ。

(了)

投稿者 yoshimori : March 10, 2012 11:59 PM
コメント
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?