May 19, 2012

『流刑地より乗馬で3.5ハロン』 (第15回)

◇女である。

◇これまで人道主義を貫いていたのだが、そろそろ転向してもいい頃と考えている。
◇世の為、人の為という名の「おつかい」に飽いているのだ。
◇この世界では「人を超えた叡智なる存在」が具現化しており、気紛れにも人の住む世界に干渉していらっさる。
◇その中でも人の概念で述べるところの「悪」的な依頼というか、命令に従って行動してみる。

◇その壱。
◇とある案件として、勇者としての実力を示さなければならないようだ。
◇「誰かを生贄の罠に掛けるのだ」
◇誰かって誰すか。
◇「お前の誘いに、ほいほいと付いてくる都合のいい奴だ」
◇えーとつまり、口説いて騙して連れて来るんですね。
◇「まァそうだな」
◇・・・人選に悩む。なるべく、ろくでなしにしよう。
◇とはいえ、自分に同行する者とは親しき「仲間」であり、共に闘った「盟友」でもあるのだ。
◇そういえば、以前酒場で泥酔して大立ち回りした飲んだくれのろくでなしがいたなと思い、西方へ向かう。
◇発見。昼間ッからカウンタアで飲んだくれてやがる。こんにちはー。
◇「何だ、何か用か、金なんて借りてねぇよなァ?」
◇いいねぇ、捧げたくなっちゃう。
◇「何見てんだ? ああ?」
◇はい、君に決定です。
◇彼は殴り合いの果ての仲間なので、当然ほいほいと付いてくる。
◇再び、勇者を望む人知を超えた存在の下へ。
◇何かイベントを期待してか、「勇者教」の信者さん達も見学に集まっている様子。
◇「じゃァこれに触って」
◇はい、ほら、云われた通りに。
◇「お、おおおおお?」
◇男は柱に縛り付けられた格好で拘束されている。
◇「じゃァ殺っちゃって」
◇えー? 無抵抗っすよ。まるごしちゃんですよ。
◇「勇者になりたくないのか」
◇直(じか)は後味悪いし。
◇代案として、周りを取り囲む信者に助力を仰ぐ。
◇あっさりとバトルロワイヤル状態となり、たったひとりの信者を残してほぼ全滅する。
◇じゃァ君が最後のひとりね。はい、さようなら。
◇何とか最小限の手汚しで、勇者への道を踏み出す。
◇(あ、飲んだくれの彼は信者らにぬっ殺されましたが)
◇「えっと、次もあるんだけど」
◇・・・まだやるの?

(續く)

投稿者 yoshimori : May 19, 2012 11:59 PM
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