June 18, 2012

『小夜啼鳥の左眼』 (第24回)

◇女である。

◇薄闇の中で目覚めると、知らない天井が見える。
◇自分はベッドに寝かされており、手足は何らかの器具にて拘束されている様だ。
◇窓なのか亀裂なのか、室内に降り注ぐ月明かりさえ朧で、茫とした視界は覚醒してあれから戻らないままだ。
◇壁際に置かれた木製収納の上に誰かが腰掛けている。
◇その人物が誰なのか、自分が何処に居るのかさえ分からない。
◇正体の知れない勢力によって強制的に攫われたと理解した。

◇「目が覚めた?」
◇はい、えーと、こんばんは。
◇「ひとんちの仕事を横取りするのは誉められた行いではないと思うの」
◇あー、あの孤児院の、院長の件で、わざわざこんな。
◇「依頼者はね、わたしたちを求めていたの」
◇知ってました。
◇「じゃァ何故かしら」
◇ぶっちゃけますと、そうしないと話がす・・・。
◇「・・・そんなメタな発言は要らない」
◇理由は理解しましたか?
◇(答えず)「じゃァ面接しましょうか、せっかくだし」
◇この状態で?
◇「はい、枷は解いたから。見て、後ろに三人の捕虜がいる」
◇いますね。
◇「ひとりだけ選んで」
◇・・・えーと、ばっさりですか、それともグーでばーんですか?
◇「任せるから」

◇いきなりの実技試験、内容は「ひとりだけ選ぶ」。
◇左から「歴戦の傭兵」、「子持ちの主婦」、「悪徳商人」である。
◇・・・真ん中だけは意味が分からんな。(しかも6児の母という)
◇「ひとりだけ選ばれる」と聞いてのそれぞれの反応。
◇傭兵「ひぃぃ、こんなの嫌だ止めてくれぇ、あれは仕方がなかったんだぁぁ」
◇主婦「この縄を解きなさいよ、ここを出たらひとり残らず殺してやる!」
◇商人「なァお互い冷静になろうじゃないか、任せてくれれば決して悪い様にはしないからさ、ね?」

◇・・・迷いますね。
◇「面接官も暇じゃないんだけどなー」
◇正解なんてないんだと思い、xxxxをグーでばーん、て。
◇「・・・なるほど、興味深い結論ね、じゃァ今日からよろしく」
◇・・・合格ですか。
◇「そうね、後でまた会いましょう」

◇もう後には戻れない、数ある裏稼業の中でも屈指たる、時には国政さえも左右する暗躍の組織に採用される。
◇・・・日陰の女、スタートです。

(續く)

投稿者 yoshimori : June 18, 2012 11:59 PM
コメント
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?