July 09, 2012

『侵略と統治』 (第29回)

◇女である。(2人目)

◇枯れ木に花を咲かせたいという女司祭から依頼を受ける。
◇まずは何を。
◇「ほんとは樹液が欲しいんだけどね、それを手に入れるには『不快な痛み』が必要なの」
◇何ですか、それは。
◇「ナイフの商品名」
◇物騒な名前っすね。
◇「緑とか自然とかが大っっ嫌いな人たちが造ったっていう話だからね」
◇誰ですか。
◇「誰っていうか、んー、その人たちはね、スタイルだけはめちゃめちゃいいんだけど、猫背で腕毛生えててしわくちゃ婆ァ顔で心臓移植が得意な感じ?」
◇・・・まず、その婆ァから刃物を奪えと。
◇「そう、その人、東の方にいるから、よろしくねん」
◇いってきます。
◇いってきました。
◇「早っ、そうそう、これこれ」
◇これをどうしたら。
◇「えーと、さらに東に洞窟があって、中に大きな木があるから、このナイフで切り付けて樹液取ってきて」
◇普通の刃物じゃ駄目っすか。
◇「あれは太古の昔からある聖なる木だから、普通の刃物じゃ歯が立たないの。だからそのナイフでどうにかあれこれして、よろしくねん」
◇いってきます、と出かけようとする自分を呼び止める者がいる。
◇見れば、薄汚れた浮浪者の装いの男である。
◇聞けば、聖なる木の巡礼者という。
◇男は同行を求めており、特に断る理由もないので野郎の水先案内人となる。
◇到着。
◇洞窟上部は大きく穿たれていて、陽は注ぎ込み内部は草木の緑で溢れ、なかなかフォトジェニックな風景である。
◇先客は男と女がひとりずつ。
◇こんにちはー樹液を取りに来たんですよー、と世間話を始めると、急に不快感を露わにし、「すぐに帰れ」とまで云われた。
◇何しに来たか分からなくなるので、心痛ませつつも聖なる木の根を刃物で排除しながら奥へと進む。
◇幹までたどり着くと、今度は巡礼者が騒ぎ出した。
◇「何をするんだ」
◇何って、樹液を・・・。
◇「・・・それは神をも恐れぬ所業だ、ここはひとつ私に任せてくれないか」
◇巡礼者が跪(ひざまず)くと、目の前に苗木が現れた。
◇「これを持って帰りなさい」
◇・・・どうも。
◇女司祭に苗木を届ける。
◇「何これ、樹液は?」
◇いや、あの、例の巡礼者がこれでどうにかしろって・・・。
◇「・・・ふーん、そういう手段もあったのねぇ、まァいいわ、これお礼ね」
◇・・・これで終わりっすか?
◇「終わりよ」

◇このエピソードはこんな感じで何となく完結するのだが、分岐点にて「巡礼者を連れて行かない」パターンを選択し、洞窟内で聖なる木を刃物でざっくりと傷つけた結果、緑色の人型生物が数体出現し、巡礼者は瞬時に惨殺され、先客だった男女は狩りにおける獲物のように狩られてしまい、自分も無事では済まないという報いを受ける。
◇みどりはたいせつに根!

(續く)

投稿者 yoshimori : July 9, 2012 11:59 PM
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