April 22, 2013

『遺棄された島』 (第3回)

◆女である。(3人目)

◆南東の岬で暮らす老学者は、仮説を実証する為の検証を実施したいという。
◆つまり人体実験ですかね。
◆「早く云えばそうだな」
◆…遅く云ったって同じですよ。
◆「被験者になる気はあるのか」
◆まァ折角ですから後学の為に。
◆「後があると考えるのは楽観的だな」
◆どういう意味ですか。
◆「言葉通りでしかないな」
◆こう見えても丈夫な方なんで、大概のことには驚きませんよ。
◆「よかろう」
◆老学者よりこれまで誰にも試したことのないという「体力増強」の術を施される。
◆「副作用があるかも分からんから報告するのだ」
◆へいへーい、と実験棟を後にして岬の周囲を散策する。
◆海岸線を歩いて浜辺に咲く草花を摘み取ったり、波打ち際にある墓地では棺を開けて中を覗いてみたり。
◆現時点で特に身体に異常は見られないので、少し遠出してみる。
◆浅瀬付近にて沈没船を発見したので、財宝目当てに軽い気持ちで潜行を開始。
◆ざぶーん
◆…か、からだが。
◆副作用として「水に濡れると極端に体力が奪われる」を発症。
◆早速戻って老学者に伝える。
◆「水かー。雨でも駄目そうか。風呂にも入れんとは…使えんな。まァこの実験の代償はこんなもんだろ」
◆わずかばかりの駄賃を受け取ると、「わしは忙しいんだ」と老学者より実験棟を追い出される。
◆…世間的には偉大な人物として評価されている老学者ではあるが、それさえも疑わしいと思えてならない一件だったとがっかり感は免れないのだ。

(續く)

投稿者 yoshimori : April 22, 2013 11:59 PM
コメント
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?