2006年03月02日

近頃、何もしない時間って、あるんだろうか。

ひと昔前、何もせずに過ごしていた時間を、

いま、みんなは検索して過ごしているような気がする。

あの頃、日曜日の夕方、窓からの西日が部屋を染めるころ、

本当になにもすることがなかった。

FMラジオから流れる曲も、曲名を検索することはできなかったから、

1ヶ月も、1年も、3年も、わからないままだった。

いまでもわからないままの曲もある。

哀しいオレンジ色の室内に、不毛に散らかった曲が流れる。

オーネット・コールマンや、P.I.L.、あるときはサンディニスタ、
またあるときはザ・スミスなどなど。

このあいだ聞いたNUMBER GIRLもそんな音だった。

僕ではない、今のだれかが、部屋でなにもせずに、聴いているのだろうか。

・・・

「なにも起こらない」ストーリーを観てみたい。

小説でも、映画でもいい。

ただし、フランス人や、明治の日本人の話ではダメで、

今の、日本人の、若い人の、「なにも起こらない」ストーリーが観たい。

犯罪も、愛憎も、不登校すらいらない「なにも起こらない」ストーリー。

深夜、タクシーに乗るたびに、

車窓の流れを映像に記録しておきたくなる。

春の小雨、あるいは雨上がりの闇のなかに

あるビルでは人が働き、あるマンションは死んだように灯りも無い。

だれも覗くことの無い路地。半分消えたタワー。

高速道路で左側を滑るように追い抜いていく、

巨大なトラックのタイヤ。

・・・

「なにも起こらない」ストーリーの、断片だけは、今、

wwwの中に無数に散らばっている。

Technoratiの中に。(テクノラティプロフィール

いじめではなく、いじりを受けたが、夕飯は好物のものだった。とか、

今日友人が言っていた言葉への抽象的な反論。とか。

・・・

薄水色の夕方の空気。

下校中の子供たちの声や、

遠くを車が走り去る音が、湿り気を帯びて聞こえる。

投稿者 vacant : 2006年03月02日 23:59 | トラックバック
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