March 17, 2011

『継ぎ目無きヘリウムの都』 (第肆回)

<溺れ翠玉>
かつては淡水専門の漁師だったが、凶暴な魚に襲われて以来、未だ癒えぬ傷の為に稼業が続けられなくなったという男と話す。
引退する為には湖に棲息する特定種のが要るという。
しかも十二枚ですと。
何だこいつ基督気取りかと勘繰ったりもするのだが、そう云えば男の風貌は髭こそ生えてないが痩せこけており、顔なんぞは何処と無く黄金色に輝いているようにも見えるが、それは長年湖上で陽に晒されて灼け続けた結果の第一次産業従事者なのである。
日中に行えばよいものの、拠所無い事情にて深夜の湖畔である。
目的の魚はと云えば、金鱗の光沢を放ち、その形状は知る限りのどの淡水魚にも似ていない
体と鰭は流線型に長く、鋭い牙が武器のようだ。
水中戦では向こうが有利だが、卑怯な飛び道具にて殲滅してやる。
以後、此の魚は出現しなくなるのだが、実は絶滅種だったのではと考えてみたりもする。
無事に帰還し、漁夫へ鱗を届けてやると大層喜んで高価そうな装飾品をひとつ呉れた。
あ、あたし、そんなネックレスぐらいじゃなびかないんだから!

(續く)

投稿者 yoshimori : March 17, 2011 11:59 PM
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