March 30, 2011

『継ぎ目無きヘリウムの都』 (第捌回)

<不義理ノ鉄鎚>
地方の農場付近を散策していると農婦より彼氏(またか※)の素行について相談を持ち掛けられる。
※http://www.rockasho.com/ym/archives/006307.html
聞けば、その男は悪友らに唆(そそのか)された挙句、農婦の家系に代代伝わる家宝を奪って帰って来ないばかりか、徒党を組んで武装強盗化しているという。
取り返してくれたならば、それなりのは弾むというので安請け合いしておく。
男の居るらしき場所も地図に書き込んで貰って現地入りしてみれば、それはもう酷い暮らし向きで、暗い洞窟の地べたに蒲団を敷いて寝てる有様だし、何を望んでこういう生活を強いられているのだろうと、彼には農婦との安寧な暮らしが約束されていた筈なのに、全く同情も理解もしかねるまま、侵入者は徹底的に排除するという物騒な盗人らに追いつ追われつ、気が付けば過剰防衛で皆殺しに。
あっちゃー、農婦に云えねーなんてやらかした感を醸しながら、無神経にも報酬欲しさに奪還した家宝持参で彼女の元を訪ね、仔細を告げる。
「・・・そう、昔は優しい男だったんだけどねぇ、ああなっちゃァ人間お仕舞いね、別にあんたを恨んじゃいないよ、気にしないでいいから、これでやっと家宝が手に戻ったし、でもまァあんたには骨折りだったね、これあたしの持参金だったんだけど、もう要らないからあげるね」
・・・あ、ありがとう。
義理と人情を計りに掛けてみたところで陰鬱たる殺伐さに変わりはないのだ。

(了)

投稿者 yoshimori : March 30, 2011 11:59 PM
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