May 11, 2011

『幻想ト猊下』 (第弐拾漆回)

<終リノ始マリ>
再び杖の爺ィの土地に居る。
王国の滅亡が差し迫っているという。
「お前を後継者にしようと思ったが、其れも儘為らん」
初耳ですけど。
「儂ゃァもう召されるが、後は何とかしてくれ」
いやいやいや、爺ィ、全部投げ出してゆくんかい。
「残念だ」
まだ行けるって。
「いや、もう逝く」
えー? って其処の執事も止めろって。

杖の爺ィは勝手な世迷言を並べると、文字通り消失
棄て台詞が「お前の目玉を刳り抜いてやりたかった」ってそんな言い草があるかい。
茫洋(ぼんやり)と棒立ちに為らざるを得ないので、執事に此れからの展開を尋ねる。
「旦那様は逝ってしまいました」
今見てたってば。
「貴方様が御世継ぎで御座居ます」
あたしゃァ血統的に無理だろう。
「確かに前例は御座いませんが、先代は貴方様に何かを見出したので御座居ましょう」
見出すのは勝手だけど、どうすりゃいいのさ。

詳細をよくよく聞いてみれば、爺ィの所持していたが必要という。
今の杖は爺ィが召された為に効力を失っており、只の抜け殻にも等しいので、新しく造る為の手順を爺ィが過去に遺恨を残した男から教われと告げられる。
内容はまァ痴れた話で、件の男、幽閉された不死の図書館長を訪ねて手順を尋ねてみれば、毎度毎度の人死にありき素材集めで、心を痛めながらの小旅行を経て如何にか杖を入手。
此れかい?
「其れで御座居ますが、今此の地は大変な騒ぎになっております」
真打登場?
「はい、先代の旦那様が恐れていた通り、大軍を率いて攻めて参りました」
其奴を斃せば幕が降りるのね。

返事も待たずに庭に出てみれば、成る程、祭り騒ぎである。
手下共が死屍累累としている中、苦心惨憺にて最終目標を撃破。
で、斃された奴の遺言
「此れは何千年も繰り返された俺の俺の分身の遊戯である、異分子であるお前が其れを断ち切った、お前に此の国を任せよう」
つーか、あんたも爺ィも同んなじかい!

という経緯にて当代の王となる。
城に帰ると執事より王位継承の祝辞を述べられ、次いで女医と踊り子を紹介される。
・・・女医は過剰に処方箋を書く藝風で然程親身になって治療しているとは思えず、中東風な舞踊を披露する踊り子は絵的に美しくないというのが、新しい主人に対する嫌がらせかとも邪推したりもした。
・・・其れでも旅は未だ續くのである。

(續く)

投稿者 yoshimori : May 11, 2011 11:59 PM
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