May 13, 2011

『幻想ト猊下』 (第弐拾捌回)

<貧スレバ鈍ス>
貧者の為の盗賊組合へ就職活動中。
所謂ひとつの義賊である。
富める者より奪い、貧しき者へ配り、残りは組合の運営資金となるという。
まずは親方と呼ばれる泥棒頭との面接から始まる。
面接官は眉間に刻んだ皺にも年季が入った、此の裏稼業の辛さを顔中に滲み立たせた中年男性である。
今期は就職希望者三名の内、採用は一名という。
一人は頭の回転が然程良くなさそうな男、もう一人は角角で小回りが利きそうな女である。
よろしくお願いしまーす。
「全員揃ったな、では実技試験を始めようか、試験の内容を発表する、街に住むとある人物より日記を盗んで来い、先に持ち帰った者が合格だ」
ある人物って誰ですか。
「街に居る物乞い等は我我の眼だ耳だ、僅かな小銭で知るべき情報は得られよう」
って、もう駆け出してる奴が居るんですけど。

小回り女は既に目標を知ってるかの如き疾走で迷い無く、日記の主の住処を目指している様子。
ずるいじゃん。
後を付け回し、目標である家屋に忍び入った処で、女との家探し一騎打ちとなる。
(頭の回転があれな男は家さえも見付けられない)
僅差で日記を奪い、面接官へ献上。
「お前は今日から我我の仲間だ、『こそ泥』から始めるがいい」
・・・。
不名誉且つ屈辱的な役職名を与えられ、怪盗や快盗には程遠い立ち位置からの成り切り義賊生活の始まりである。

(續く)

投稿者 yoshimori : May 13, 2011 11:59 PM
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