May 31, 2008

『七人ノ子ヲ生ストモ』

五月晦日、足元がお悪い様子で御座います。
この月に雨が降り出すってぇと、これが五月雨(さみだれ)かといえば、そうではないんですな。
旧暦五月ってぇのが今の六月ってんで、五月雨イコヲル梅雨ってなもんです。

大粒の雨が降り続いてる上に、出掛ける用も無いんでねぇ、こういう日には、上野動物園のランランと同年月日に亡くなった、六代目 三遊亭 圓生師匠の音源でも聴きましょうかねぇ。

「七人の子を生(な)すとも女に肌を許すな」
ってぇ言葉がありますな。
七人もガキこさえといて、なぁに言ってやがるなんてぇ思ったりもしますがねぇ、
「肌を許す」ってぇのは、「気を許す」ってぇ意味でしてねぇ、
要は「女は信用するな」ってぇ筋の噺ですな。

筋を述べるってぇと、
弟分の家で酒を飲んで酔って帰った男、女房と一緒にいた長屋の若い衆を間男と間違えて撲殺してしまうってぇと、死骸を隠そうと川へ棄てにゆく道中、弟分の男に遭ってしまいましてねぇ、遺骸を弟分の家の床下に埋めて隠したまま数年が経つってぇと、ある日女房と激しく諍いまして、大声で「人殺し!」と罵ったのを聴き付けた役人に夫婦共に連れてゆかれますってぇと、女房は若い衆を殺して床下に埋めたと全部話しちまいますがねぇ、いざ掘り出してみるってぇと、出てきたのは犬の骨ってんで、男は証拠不十分で無罪放免となりますな。

「だから言ったろ、兄貴、七人の子を生すとも女に肌を許すなってさ」
「おめぇの言う通りだ」

ひでぇ噺があったもんで。

圓生師匠、マクラでこうも言ってますねぇ。

「女ほど始末の悪いものはありませんな。
ちやほやすれば、増長する。
小言を言えば、膨れっ面をする。
理屈に詰まれば、めそめそ泣く。
打(ぶ)てば引っ掻く。
殺せば化けて出る。
だから女を殺した時には、よーく頭を潰しとかないと化けて出ますから」

七人の子を生すとも女に肌を許すな『骨違い』の一席で御座いました。

(了)

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May 30, 2008

『寒空ニ舞ウ幾千ノ欠片』

意外と寒い。
寒空に放り出された身として、暖かい物を目指す。

分かりやすくおでんでも喰らおうと、階下へ。
扉を開くと、店内は暑い。

銘柄は失念したが、日本酒を三合ばかり頂く。

■豆腐 ・・・ おでんの具ではなく、醤油を掛け回し山葵で頂く。
■玉子 ・・・ 半個に割って、黄身がつゆに溶けてゆく。
■竹輪麩 ・・・ 竹輪でも麩でもないのに「ちくわぶ」。
■蛸 ・・・ うでられた蛸下足、くるんとまるまっている。

五十一歳という店主より、十三歳下の嫁を紹介される。
水道橋にて店を営んでいるという。

肴を荒らして次へと移動します。

(了)

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May 29, 2008

『飯ヲソロソロ炊ケ炊ケト啼ク』

が上京している。
携帯電話を鳴らしてみるも出やしねぇ。
どうせいつものところで飲んでるに違ぇねぇと向かう宇田川町、19時半

予想通り居る。
しかも早い時間から飲っているという。
とりあえずエビスビール、続けて銘柄失念の芋焼酎

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左から<式根島>赤烏賊(アカイカ)、<愛媛>目板鰈(メイタガレイ)の造り

もう紫陽花の季節か。
画像が無い品は以下の通り。

■のれそれ(穴子の稚魚)の酢味噌和え
■子持ち槍烏賊の焼き

明大前にある、知人が始めたという店へタクシーで移動。
店名は「蜩 (ひぐらし)」を岐阜地方の方言にした単語に由来する。
女将も大将も岐阜とは縁もゆかりも無いのだが。

銘柄は失念したが、日本酒を四合ばかり。
■槍烏賊の造り

表現が拙くて恐縮だが、こういう質感の店は近所に欲しい。
最寄が井の頭線なので近所は近所なのだが。

水道橋へ移動。
もう一軒寄って帰ります。

(了)

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May 28, 2008

『長々亭主ニ患ワレ』

自らを「~衛門」と名乗る男、デフォルトが笑い顔なので殺人事件を報道する原稿を読み上げたり、親類の葬儀で悔やみを述べるには大変不向きである

各人の仕事量が各々の処理能力を超えてしまい、部内は騒然としているのだが、何から手を付けたらよいのか分からない上に、更に電話が鳴り止まないという負の連鎖状態。

全体性を持った構造体の関連性に疑念を抱いた瞬間から、個々の構成部分を切り離して改めて認識するのが肝要であるという。

「それはゲシュタルト崩壊ですね」
意味分かって言ってんのかね。

「こんがらがってんですよ、だから一度ほどいてみるんですよ」
まあそうなんだけどさ、今そんな概念みたいなこと言ってても何にも解決しないんだってば。

「まさにゲシュタルト崩壊
状況の説明はいいんだってば。

「言ってて楽しくないですか、ゲシュタルト崩壊って」
何かいらいらしてきた。

「ほらー、口に出して言いましょうよ、ゲシュタルト崩壊
・・・うるせぇってんだ!

「怒鳴らないでくださいよ、何も解決しないんですから」
もし、これ以上その単語を繰り返したら、ボールペン手の甲に突き刺してやる。

物騒な発言しますねー」
具体的な話しろってんだ。

「唄ってもいいですか?」
何を? ていうか、きみ誰?

「ほらー、ゲシュタルト崩、痛い!

(了)

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May 27, 2008

『広報担当ハ頭ヲ痛メテイル』

隅田川ってぇいいますてぇと、かつては大川なんてぇ呼ばれておりましてねぇ、正確にゃァ東京がまだ江戸だったてぇ時代にゃァ、吾妻橋周辺より下流が大川とされてましたィ。

川沿いにある昼はカフェ、夜はバーなんてぇ店に入ります。

まずはビールとレーベンブロイハウスワインの赤をデカンタで頂きまして、ツナと豆のサラダ、蛸のグリーンペッパーソースなんてぇ酒肴とリバーサイドで御座います。

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スーパードライホール

中央に炎のオブジェ、フラムドール(金の炎)ってぇのが見えますな。
当初、に立てた上体で三つ並べる設計だったてぇはなしですがねぇ、日照権とかそういうあれでひとつっきりの炎がになりまして、不名誉にも排泄物の名で呼ばれたりしまさァね。

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駒形橋

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吾妻橋

落語の世界じゃァ、この橋から飛び込もうってぇ輩が幾人もおります。

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銀座線(終電)

浅草始発の終電車に乗り込むてぇと、車内はがらんとしてますなァ。
貸切ってぇ心持ちで帰りまさァ。

(了)

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May 26, 2008

◆『大虎、携帯電話モ同様デス』

出欠ってぇと、出るか出ないかの是非を問うってぇ確認作業なんですがねぇ、これが出血なんてぇと穏やかじゃいられませんなァ。
思わせぶりな前振りに何の意味も御座んせんがねぇ、早退にも似た時刻に職場を離れ、向かう先ってぇのは、たった三人が出るってぇだけの寄席で御座います。

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『第九十回中目黒寄席』 中目黒落語會

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前座■春雨や 雷太 「元犬」

当会で初めて前座を観ましたィ。
前座は羽織なんてぇのは着られませんから、噺に入るタイミングで脱ぐってぇ芸が成立しません。
坊主頭で背も高く痩身、声がよく通るんってんで、僧侶にして読経でもさせたいですな。

噺はてぇと、白犬が神信心して人間にしてもらい、下男として奉公しまして、その奉公先の旦那、女中のおもとに用を言い付けようと呼びます。

「もと(元)は居ぬ(犬)か」
「今朝、人間になりました」

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二ツ目■五代目 柳家 小蝠 「青菜」

名前たァ裏腹に恰幅が良い方ですな。
後で知るんですが、かつては立川一門に居たんですがねぇ、上納金を滞納して破門にされたなんてぇ過去がありまして、亡くなった十代目 桂 文治 門下を経て、現在では二代目 柳家 蝠丸の前座名を頂いてるってぇわけですな。

得意先の旦那の家で馳走になる植木屋、旦那より青菜を勧められるんですがねぇ、実は青菜は切らしていて、客人の手前無いとは言えない奥方は、

「旦那様、鞍馬山から牛若丸が出でまして、その名(菜)を九郎(喰ろう)判官」
なんてぇ、「菜を喰ろう」てしまって既に無いとを告げるってぇと、旦那もすぐに解し、
「義経にしておきなさい」

と御屋敷言葉で返します。

植木屋、奥方と旦那の洒落た遣り取りに感化され、自宅に帰り女房と打ち合わせ、友人を呼んで再現しようとするんですがねぇ、女房に奥方役ってぇのが務まるはずも無く、余計なひとことが植木屋の意図と反するんですな。

「旦那様、鞍馬山から牛若丸が出でまして、その名を九郎判官義経
「・・・弁慶にしておきなさい」

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真打■桂 南なん 「佐々木政談」

「フラがある」なんてぇ落語用語がありまして、何てぇ言いますかねぇ、その人の資質ってぇ言うんですかねぇ、にじみ出るおかしさを指す褒め言葉ってぇもんですな。
南なん師匠、ぶっちゃけて云いますてぇと、顔面が崩壊しておりましてねぇ、いわゆる山谷にいるイイ顔の親父系なんですなァ。

抑えたトーンで訥々と話す語り口は、客を自らの創り出した世界に引き込んで止みません。

南町奉行、佐々木信濃守を真似ての「お裁き」ごっこに興じる桶屋の倅、大人も感心する見事な裁きを本人、信濃守に目撃され、白洲に呼ばれてしまうんですがねぇ、信濃守との問答により桶屋の倅にしとくは勿体無いってぇんで、数年後には信濃守の近習にすると約し、町人出世の目出度い一席で御座います。

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仲入り

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二ツ目■五代目 柳家 小蝠 「長短」

再び、小蝠あにさん。
今月は五代目 柳家 小さん七周忌ってぇことで、連日何処かの寄席で柳家一門はこの「長短」を演じてると聞きますな。

ひとことで云いますてぇと、気の長ーい男が短気な男の袖に入った火種を「早く消した方がいい」と告げるだけの噺なんですな。

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真打■桂 南なん 「千両蜜柑」

南なん師匠、再び。
師匠の顔だけで笑いが起きますってぇと、マクラ無くいきなり本題に入ってましてねぇ、「番頭さん」ってぇ旦那が普通に話してるだけなのに、何故か可笑しいんですな。

若旦那が心の病に倒れ、番頭が問い質すと「蜜柑が食べたい」なんてぇ言うんで、方々を駆けずり回ってようやくひとつだけ手に入れるんですがねぇ、これが文字通り値千金ってんで、千両箱を担いで買い取るってぇと、若旦那はすぐに快復するってぇだけの噺なんですがねぇ、若旦那が分けてくれた父母と番頭の分、三袋を眺めるってぇと溜め息が止まりません。

「これが三百両・・・」

番頭、蜜柑三袋を持って何処かに逃げてしまうんですなァ。

追い出しが鳴るてぇと、般若湯を求めて渋谷方面へ移動します。

(了)

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May 25, 2008

◆『売店ハ三階ロビィニ御座イマス』

渋谷より地下鉄銀座線に乗って上野広小路まで来ましてねぇ、とんとんとんとんと階段を上がるてぇと、幟が幾本か見えて参ります。

鈴本演芸場、夜の部で御座ィます。

落語 ■ 古今亭 菊生 「寄合酒」
酒肴を持ち寄ろうってぇ算段になりますってぇと、長屋の貧乏人らはこぞって乾物屋を狙いましてねぇ、ほとんどの酒肴は万引き、窃盗されまして、乾物屋の主人にとっては凶日と相成りますな。
挙句、鰹節から出汁を採るなんてぇ事を知らない野郎が台所を預かるってぇと、抜け殻になったかつぶしを笊いっぱいに盛り付けて、煮汁で顔や褌を洗ったりして台無しにするんですな。

落語 ■ 柳亭 市馬 「狸賽 (たぬさい)」
予定されていた権太楼師匠は欠席の為、昼の部にも出演の市馬師匠の代演で御座います。
狸の恩返しってぇ骨子なんですがねぇ、男は何でも化けられるってぇ狸に賽子(さいころ)になるようリクエストしますな。
男、帳場で丁半博打の胴元を受けますってぇと、狸に賽の目を指示してひと儲けをするんですがねぇ、怪しんだ帳場の若い衆は「賽の目を口にするな」なんてぇ要求しまして男は「五(ぐ)」を狸に伝える為、「湯島天神の梅鉢」ってぇ表現を用いますな。
男の意図としては、花弁五枚の梅の花に「五」を求めたんでしょうがねぇ、狸、
「衣冠束帯、天神様の姿」となりまして、胴元のイカサマがばれちまうってぇ噺ですな。

太神楽曲芸 ■ 翁家 和楽 社中
若手の使う白い毬の質感が気になりますな、軟らけぇのか硬ぇのか
ナイフ投げの獲物がいつもよりも大きく凶悪で、当たれば怪我どころで済まないってぇのが緊迫感を煽りますな。

落語 ■ 柳家 喜多八 「筍」
喜多八師匠、お会いしとう御座いました。
出囃子が鳴り始め、顎をやや上にして気だるそうに現れる師匠のやる気レス具合ったらありませんな。

武家の当主、下男の可内(べくない)に晩の菜を尋ねるってぇと、隣家の竹林から自邸に生えてきたを膳に出すと答えますな。
とはいえ、一応武家な体裁の為、「渇しても盗泉の水を飲まず」と可内を叱り付けますがねぇ、「鰹節を掻いて待っておる」と喰う気全開なわけです。
断りを入れる為、可内を隣家へ向かわせまして、隠居に告げるってぇと、

「お願いが御座います、
ご当家様の筍殿が手前屋敷へ泥脛を踏み込みまして御座います。
世が世なら間者も同然、召し捕って手討ちに致します故、その段お断り致します」

なんてぇ申し上げるんですがねぇ、隣家の隠居は、
「遺骸を引き取りたい」と返します。

それを聞き及んだ当主、再び可内を隣家に差し向け、

「筍殿は既に当方において手討ちに致して御座います。
遺骸はこちらにて腹の内へと葬りました故、その段お断り致します。
これは筍殿の形見の衣に御座います」

ってぇと、筍の皮を撒きますな。

「哀れ筍、かような姿に。あれ、かわいや、皮嫌」

落語 ■ 三遊亭 金馬 「長短」
金馬師匠、膝を傷めてるってぇので、釈台が置かれ、背もたれを用います。

「琴欧州は膝傷めながら優勝したんですがねぇ」

来年八十歳ってんですからねぇ、達者なもんですなァ。

ここで、仲入りで御座います。

紙切り ■ 林家 正楽
ご挨拶代わりは、いつもの「相合傘」
「長良川の鵜飼」、「万里の長城」、「招き猫」なんてぇのをリクエストに応じて切ってゆきますな。

落語 ■ 柳家 さん生 「ぞろぞろ」
浅草に太郎稲荷なんてぇ社がありまして、吉原に向かう道中にあるってぇロケーションだったんでねぇ、大変繁盛していたってぇはなしなんですがねぇ、舟で土手より上がるってぇルートができますってぇと、当然寂れてゆきますな。
荒物屋ってぇと、日用雑貨の専門店みてぇな店でして、件の太郎稲荷に近いってんで人通りも無く客がさっぱり入りませんな。
荒物屋の老婆は長年に渡って稲荷神社の世話してたのに加え、亭主が信心始めたってぇと、売れなかった草鞋が売れ始め、稲荷の奇跡で棚卸も在庫チェックも不要となり、草鞋を引っ張るだけで天井から「ぞろぞろ」っと新品が生えてくるってぇ運びとなりますな。
荒物屋の奇跡を知った髪床の主人が稲荷ににわか信心を始めるってぇと、髪床に行列ができるんですな。
で、主人が客のに剃刀を当てがって、すっと剃るってぇと、

「後から新しい髭がぞろぞろっと」

粋曲 ■ 柳家 小菊
小菊ねえさん、鳴り物が欲しかったようでしてねぇ、下座に向かって、

「ぼーん、て。ねぇ、ぼーんって入れて。・・・。もう、いい!」

なんてぇ、下座がぼんくらで鳴らずじまいでしたな
かーわーいーいー
五十は超えてらっしゃるんでしょうがねぇ。
小菊ねえさん、次のお座敷を押さえましたんで、次回は北沢でお会いしましょう。

主任 ■ 古今亭菊之丞 「百川 (ももかわ)」
落語の敷居の高さってぇと、「専門用語が多い」、「そんな職業今は無い=想像が働かない」なんてぇのが挙げられますな。
当演目の粗筋なんてぇこんなもんです。

いわゆる北関東出の百兵衛、葭町にある桂庵「千束屋」より浮世小路にある料亭「百川楼」での奉公と相成りまして、既に元結を下ろしちまった使用人に代わって用を訊くってんですがねぇ、二階の客人、河岸の若い衆から「四神剣の掛合い人」と間違われるってぇと、すれ違いゆき違いのやりとりの後、長谷川町三光新道に住まう常磐津師匠、歌女文字を迎えに遣らされるんですがねぇ、やはり間違えるってぇと、外科医師、鴨池玄林を呼んでしまうってぇ噺なんですな。

この内容を一度っきり聴いて理解するってぇのは無理な相談てなもんで。

韓国料理店を目指して、移動します。

(了)

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May 24, 2008

『尾道→ストックホルム』

雨が降っている。

知人が店を始めたという、駒場三丁目へ向かう。
自宅から徒歩でゆける距離を傘を拡げて歩く、十九時

山手通りの歩道を歩く人は少ない。
ましてや雨の中。

レインコートを着せられた犬が散歩をさせられている。
飼い主らしき女は傘とリードを持ちながら、携帯電話しか見ていない。

あーきみきみ、そういう歩道の占有っぷりはねぇ、いぬも含めて通行の妨げになるって気付いているのかしらね、悪いけど当方避けるつもりはみじんも無いからね、ぶつかって中身とか人格とか性別が入れ替わっても知らないよ、おおばやしのぶひこもやぶさかでないよ、あ、でも、いぬとチェンジはいやだな、四つ足でアスファルトとか歩きたくないよ、リードでつながれたくもないし、それはそれで楽な人生だろうけどな、マイライフ・アズ・ア・ドッグとはいえ、ラッセ・ハルストレムはやぶさかでないとは言い切れないねぇ。

あ、曲がりやがった。
女か犬のセカンドライフが遠ざかってゆく。

到着、着席、飲食。
スペイン産ワインを2本空けて、移動。

池ノ上へ。
銘柄は失念したが、冷酒を二合。
縞鯵がも少し食べたくて追加する。

下北沢へ。
I.W.ハーパー、ソーダ割。

タクシーを拾い、松見坂経由で帰宅。

今日も女とか犬とかと入れ替わることなく、いちにちを終えることができました。
おやすみなさい。

(了)

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May 23, 2008

『有難キ礼讃』

かつての宿場町、千住に来ている。
すれ違う

都内にある名の知れた割烹料理店で板前を勤めた店主が、「割烹くずし」と銘打ち、庶民的な割烹を目指して始めた店という。
十五人も入れば、身動きも取れないくらいに手狭な店内、家族経営なのかよく似た顔の従業員らが動き回っている。

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全て日替わりにて日々書き換えられる黒板

本菊泉を常温で頂く。

■わらさ刺し ・・・ 鰤になる直前の名。脂がのってたいへんやわらか。
■しらす山椒煮 ・・・ しらすを煮詰め山椒をまぶしてある。酒が進む
■みょうがと黒そい酢のもの ・・・ 透明感のある白身に茗荷と三倍酢がよく合う。
■鯨さえずり ・・・ 牛すじ煮込みにも似た食感と味。和芥子で頂く。
■はぐら瓜ぬか漬 ・・・ 千葉の地方野菜という。えぐ味無く、箸休めに適。
■はた刺し ・・・ アジア圏では高級魚という。この手の白身は、下地よりもぽん酢で頂きたい。
■さば塩焼き ・・・ 塩加減が素晴らしく白米を要求しかけてしまう。

立ち飲みとはいえ、近所に欲しい一軒。
足立区までは遠いが、足を伸ばす甲斐もある。

二軒目、「千住で2番」という看板を掲げつつ、その実都内三大煮込みのひとつに数えられるという旧日光街道の老舗。
やはり家族経営なのかよく似た顔の従業員らが競歩に近い速度で動き回っている。

近年改装されたという店内、長い鉤状(J字)カウンターとテーブル席幾つか。
ほぼ満席で、入れ替わりに空いたテーブル席に案内される。
後続のリーマンらは次々と断られている様子。

創業以来、一度も中身を空けずに注ぎ足しに足しまくった大鍋にてぐつぐつぐつぐつと牛煮込みが煮込まれているという。

肉とうふを頼む。
会計時の算盤パフォーマンスで知られるがいるという。
酩酊状態で彼を探し、離れた席から匠の技を拝見させてもらうと、知っている風景とは完全に隔離されたのかここが何処なんだか分からなくなる

三軒目、ハンバーガー専門店ではないが、店主自らバーガーをレコメンドするカフェ&バー。

さんざ喰い荒らしてるんで、フード類は控えておく。
自家製という珈琲ウォッカがやたら飲み易く、だんだんますますと危険が危なくなってくる

日付も変わったところで、四軒目に向かいます。

(了)

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May 22, 2008

『手ヲツナゲナイ病』

実は、と告白めいた口調になるが、多汗症かもしれない。
多く感じる方向ではないので、まったくもって色気づいた話ではない。

少し調べてみる。

<症状が現れる部位>

■頭 ・・・ 髪が長い為か頭皮から吹き出た汗が首筋を流れてゆく。
■顔(額) ・・・ 歩いているだけで発汗し、眼に入って前が見えない。
■腋 ・・・ たぶん人並だと思うが、自分では気付いてないだけなのかもしれない。
■掌 ・・・ 書き物をしていると紙が湿って破れる。涙で前が見えない(涙)。
■足裏 ・・・ 夏は危険。居酒屋の座敷で靴を脱ぐというシチュエーションを憎む。

<原因>

■精神的ストレス ・・・ へらへらと生きてるつもりなんですがねぇ。
■遺伝・体質 ・・・ 身内に多汗症はいない。
■肥満 ・・・ うるせぇってんだ、この野郎!
■食生活 ・・・ 熱い、辛い物はもちろんのこと、ざるそばを食べてても発汗。
■病気・疾患 ・・・ ・・・不安になってきたぞ。
■更年期障害 ・・・ そういう歳かー。

<併発する症状>

■対人恐怖症 ・・・ そりゃあね、汗だくなツラなんざさらしたくないわな。
■異性と付き合えない ・・・ ・・・放っといてくれ。
■引きこもり ・・・ こもったところで汗は出る。
■消極的 ・・・ それは今に始まったことじゃあない。
■集中力の欠落 ・・・ それも今に始まったことじゃあない。

あれ? 対策は? ねぇ、先生、対策は無いんですか!?

汗まっしぐらな時節、乗り越えてゆけるだろうか。

(了)

投稿者 yoshimori : 10:29 PM | コメント (0)

May 21, 2008

『三社トハ観音、船ト示現ヲイウ』

浅草は浅草寺なんてぇいいますてぇと、都内で最古の名刹とされておりましてねぇ、
山号を金龍山聖観音を御本尊とします。
いわゆる噺における、「浅草の観音様の裏」なんてぇと、今は跡形もありませんがねぇ、当時は「吉原」なんてぇ、どメジャーな色町なんてぇのがありまして、吐いて棄てるほどのドラマが生まれては吐いて棄てられてたんでしょうな

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雷門

切妻造の八脚門なんてぇ呼ばれてる門の向かって右の間にはってぇと風神が、左の間には雷神が安置されてますがねぇ、この日の風神様「改装中」なんてぇ札を出してるってぇと、お姿をお見せになりません。

雷門から仲見世通りをひた歩きまして、宝蔵門を抜けるってぇと、正面には本堂、左に見えるはライトアップされた五重塔

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五重塔と本堂

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五重塔

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本堂(観音堂)

1945年東京大空襲で焼失するまでは国宝だった本堂でしたがねぇ、再建された現在では鉄コン筋クリート造なんですな。
五重塔はってぇと、関東大震災では倒壊こそしなかったんですがねぇ、本堂同様に空襲で燃えちまいまして、やはり鉄筋造りってぇ塩梅ですな。

ひと通り浅草を散策しますってぇと、小腹があれしてきましたんで、ホッピー通り煮込み通りなんてぇ呼ばれる、ひどく限定的なメニューしか置いてないってぇ通り沿いにある、外飲み専門みてぇな店に入りましてねぇ、約束通りに煮込みを突付きながら般若湯をあおるってぇ運びとなりますな。

平日とはいえ、まだ空は明るく夕刻ってぇぐらいの時刻なんですがねぇ、店の奥の小上がりにいる、子供を背負いながら泥酔している若い母親なんてぇのを眺めているってぇと、アジア的な軽いカオスの中にいるなんてぇ眩暈が酔いを助けたりもする、浅草寺からの一席で御座いました。

(了)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

May 20, 2008

『定紋、替紋、女紋』

実は、と大した話でもないのだが、未だ着用の日の目を見ない紋付羽織袴が実家にあるという。
黒羽二重五つ紋には、家紋である「三つ追い柏」が白く染め抜かれている、はずだ。

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定紋:三つ追い柏

はずだ、って曖昧なのは、実家の何処にしまわれているのかが分からないからだ。
探すのも骨折りなくらい広い蔵があるとか、ましてや衣装部屋に箪笥が幾棹もあるわけではなく、

「お前も幾つになったんだい、そろそろどうなんだい? 孫の顔が」

というデリケートな話題に触れられたくないから訊けない、訊けるはずもない。

とはいえ、着たい
和服生活が可能なのは、伝統芸能に携わるか、老齢の作家になるぐらいしか手段が無い。

白足袋履いて、仙台平袴に脚を通し、長着を身に付け、角帯締めて、羽織を羽織るってぇと、雪駄を突っ掛けて、白扇子と手拭いを持つってぇと、成人男子婚礼時の正装とはいえ、あたしの場合ってぇと、高座に上がるぐらいしかテンションが上がりませんな! (土下座)

(了)

<20100729追記>
実は当家の定紋、「三つ追い柏」ではなく、「丸に三つ追い柏」である。
2010年になって、墓石に刻まれたそれを確認したが、今更ではあるな。

投稿者 yoshimori : 10:47 PM | コメント (0)

May 19, 2008

『サイ、唐手武具ヲ振リ回シ』

琉球チャイニーズという。

外観は立ち飲みダイニングバー然としているが、店内には片側の壁沿いにカウンター、テーブル席が幾つか。
ただ残念なのは、通されたカウンター席が壁に設えたワイン棚側に向いており、圧迫感この上ない

まずはオリオン・ドラフトから。

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アグー豚と野菜のスチーム

蒸篭の蓋を開けるとアグーしか見えない。
豚の下に敷かれたもやし、隠元、南瓜、人参、白菜らを掘り出してぽん酢で頂く。

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トマトと玉子のチャンプル

チャンプルという名前からイメージするウェット感の無さを全否定する、どう見てもスープに浸った玉子という中華な一品。
トマトの酸味がも少し欲しい感じ。

画像は無いが他の品は以下の通り。

■自家製腸詰 ・・・ 茹で、揚げから選べるという。これはビールが進む。
■豆腐餻(とうふよう) ・・・ 爪楊枝がわずらわしくなり、箸で突付き始める。
■赤ワイン ・・・ 銘柄は失念。飲み易くてあぶねぇ。

も少しゆったり喰いかったなんてぇ心持ちで次の店へと移動しますな。

(了)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

May 18, 2008

『王ノ帰還、石ノ音』

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"ONE LOVE JAMAICA FESTIVAL 2008"

先週のタイフェスに続き、今週はジャマイカフェス代々木公園、15時。

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「ジャークチキン、最後尾こちらでーす!」

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ジャマイカ風なのか何なのか根菜カリー(奥の白いのは大根)

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いったい何で生計を立てているのか不明なラスタな兄貴らがここぞとばかりに半裸になっている様子

しらふじゃ叩けねぇジャンベ的な打楽器なんてぇ持ち出して踊り唸ってますな。

この後、新宿区内で宅飲みし、移動先の新宿二丁目が三軒目と相成りまして、飲んだくれの休日は過ぎてゆくという一席で御座います。

(了)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (2)

May 17, 2008

『凛トシテ、時ニハ因業ニ』

18世紀後半、英国の陶器職人が生み出した『フラゴン』、その中央部にはかつて英国王室の紋章が彫り込まれていたが、現在のモデルには、14世紀バノックバーンの戦いにおいてイングランドを撃破したスコットランドの雄、ブルースが・・・。

「何の話?」
何のって、さっき話したじゃんか。

「んー、何か一生懸命喋ってるみたいだからさえぎるのもあれかなー悪いなーと思って口はさめなかった」
そうけぇ。

「ん? 岡山弁?」
そういうところは拾うのか。

「あ、あれだ、あれ、思い出した! ねー、あれだよねー、ねー」
・・・覚えている単語を言ってみよ~う、よーう、よーーう。

「えー? えーと、カネゴン?」
ブブー。惜しいな。

「えーとえーと、ラフカディオ・ハーン?」
ブブー。「ーン」しか合ってない。

「えーと、プルート?」
ブブー。「ルー」て。

「あ、これは覚えてる! アイルランド! ダブりーん!
・・・。

「それは惜しいの? 惜しくないの?」

ひとことも合ってないんだよ、この野郎、表出ろ!

(了)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

May 16, 2008

『四ツ木、五反田、六本木』

aitokyo.jpg

2日前だったろうか、「総面積400㎡のダイニングラウンジ」と聞き及んでいた為、何も口にせずに訪れたものの、厨房は見えるがフードメニューは無く、5秒も歩くと壁に行き当たり、もう5秒も歩くと同じ場所に戻って来ざるを得ない

ハングリーにも程があるストマック頭の悪いハードリカーを流し込んでいると、遠くで聴こえるダーツクダーツクなんて4つ打ちが新しい刑罰かと思い始め、祖国を遠く離れて異国の民に虐げられる移民の心情が分かり過ぎるくらいに分かる気になってくる。

空腹に耐えかねた有志らを募り、外へ。

訪れた店は外見上、木造りと赤錆びた鉄だが、テンガロンをかぶったアウトローが徘徊するわけもなく、ただ肉が焼ける白煙と音に誘われ、吸い込まれるように扉を押し開ける。

入れ替わりにスリランカ人の団体が出てゆく。
いうてもインド人かもしれないし、バングラデシュ人かもしれない。

ハートランド・ドラフトが運ばれてくる。
人数にそぐわないフードのオーダーが始まり、矢継ぎ早に品の名を言われ続けるスタッフが不憫に思え、放っといてやろうとぼんやりとしている。

全員が目を血走らせながら、親の仇の如くバッファローウィングを60ピースもやっつけたのは、後にも先にもこの時だけだ。

(了)

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May 15, 2008

『辿リ着イタラ権田原』 (第弐回・最終回)

「他には?」
「あ、思い出した、お婆ちゃんを乗せたのね、もう年金生活してるくらいの。で、浅草から三鷹までだったかな、けっこうな距離だね、着いたらお金が無いわっていうの、全然持ってないからどうしようって申し訳なさそうな顔するからね、何だか気の毒になっちゃって、五千円渡して帰しちゃった。あ、でも、一応住所と名前は書いてもらったけどね」

「ほう」
「そしたら、そのお婆ちゃんから手紙が来てね、『お礼がしたいから日本橋でお食事でもいかがですか』って書いてあるの。まあ返ってこない金だとも思ってたし感謝されてるからさ、こっちは嬉しいじゃない? で、かみさんも連れて行ったわけよ、日本橋。そしたら、レストランを予約してあって、その時のお婆ちゃんと待ち合わせてさ、確かにあの時のタクシー代と五千円は返してもらったのね」

「いい話ですね」
「ところがさ、『大変申し訳無いけど20万貸してくれ』って言うわけ。もうわたしもかみさんも呆れてね、食事もせずに置いて帰ってきちゃった」

「あー、その婆さんもねぇ、2万くらいにしといたら借りられたかもしれないのに
二回目で吹っ掛け過ぎなんだね、一回貸してるから借りられると思ってるんだ」

「若いのはどうですか?」
一回だけやられたね新宿から町田だったかな、着いたらやっぱり金が無いって言うの。で、住所と名前と携帯番号も書いてもらったけど、まあそこで一応携帯に電話してつながったから信用したのね、そしたら住所も名前もでたらめで、携帯は解約されてた

確信犯ですねー」
「そう、あれはたぶん常習犯だね。でもすごく器量の良いかわいい子だったね」

特に面白いことは言ってないのだが、話芸というか話し方というか、地味に癒された瞬間だったかもしれない。

(了)

投稿者 yoshimori : 11:37 PM | コメント (2)

May 14, 2008

『辿リ着イタラ権田原』 (第壱回)

六本木でタクシーを拾う。
同行の男、タクシードライヴァーに行き先を告げてこう続ける。

「運転手さん、この間テレビで観たんですけど、怖いですねタクシー業って、密室の恐怖っていうんですかね、何か恐い目に遭ったとかあります?」
「んー、事故が怖いかな」

「事故は怖いですね、でもやっぱ客も怖いですよね、絡まれたとか脅されたとか無いんですか?」
「あー、そういや二度ほどあったかな上野からひとり乗せたんだけど、明らかにシャブ、んー、覚醒剤っていうの? そういうのをやってるんだよね、その人。怯え方が普通じゃないの、道歩いてる人、みんな警官に見えるって。で、軽いパニック状態になったみたいで、こう後ろからね、髪つかまれちゃったからさ、本郷三丁目の交差点にある交番前に車止めたらさ、五千円を放り投げてそのまま走って逃げちゃった」

「おー、凄いですね。もうひとつは?」
「もうひとつはね、何処で乗せたかは忘れたけど、二人組みだった。やっぱりシャブ中っぽくてね、しかもふたりとも。もう言ってることがさっぱり分からなくてね、怯え気味で小刻みに揺れてたね

「何を喋ってるんですか、ふたりは」
「んー、何だったかな、『25℃までは耐えられるけどな、26℃はもう駄目だ耐えられない、25℃はいいんだけどな、26℃だと無理だ』って意味の分からない気温の話してるの、しかもずーっと。もう早く降りてくれって祈ったね」

「へえー、他には?」
「そうだなあ、あ、ここでいい?」

ああ、いいっすよ、もうガンガン曲がってください、好きなだけ曲がってください、って降りる時間も延長しタクシーは走るのだった。

(續ク)

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May 13, 2008

『軽籠担イデ軽子坂』

かつてスナックだったであろう店舗を、大胆にも居抜きでスペイン料理店にしている様子。
内装だけではさっぱり期待できない感は否めないが、出される品はどれもが素晴らしい。

画像が一枚も無くて甚だ恐縮だが、小心が一見で訪れた店だからと汲んで頂きたい。

■プルポ・ア・ラ・ガジェ-ガ ・・・ ガリシア風の蛸、パプリカと岩塩で。
■アンチョビとアヴォカドの冷製
■マッシュルームのガーリックオイル焼き
■トルティージャ ・・・ オムレツ的な外見、今日の中身はじゃが芋。

絶品ということで頼もうとしたNegro Arroz (烏賊のイカ墨煮)は、冬メニューとの返答。残念。

大人数でもないのに銘柄すら記憶に無い赤ワインを二本飲み干し、次の店に移動します。

(了)

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May 12, 2008

『御互イ声ヲ掛ケ合ッテ』

灰皿と小皿の区別も付かないまま、突き出しの小鉢に灰を落とす
誰かが何かを指摘しないと始まらない、新宿三丁目、24時

「最近さ、地震多くない?」
この間もありましたね。

「わたし、二階で寝てるんだけど」
木造一軒家でしたっけ?

「違うわよ、失礼ね」
一軒家が?

「木造がよ」
木造いいじゃないですか、よく燃えるし

火事よりも地震の話よ」
はあ。

「ほんっと地震が怖いから、ぐらっと来るとすぐ窓を開けてベランダに転がり出ることにしてるの」
転がり出ますか。香港映画っぽいですね。チョウ・ユンファ

「ユンファなんて関係無い!」
おや、キレどころじゃないですよー

「何か腹立たしいわね。屋根が落ちてきても潰されないように外へ出る為よ
何の為に?

「失礼ねー、何の為にってー。そういう質問は止めてくれる?

自分の場合、例えぐらっと来ても気絶してる状態に近い熟睡なんで、到底目が覚めるとも思えず、揺れた直後にすぐに覚醒して助かりたい脱出しなきゃ死にたくないなんて気持ちが分からないのかもしれない。

(了)

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May 11, 2008

『モシ雨ガ降ッタラ行カナイ』

雨か。
外で飲んだくれるには条件が悪過ぎやしないか、と主催者に尋ねるも本人は既に現地に向かっているという。

戦場にて最前線を自ら志願し、あえなく戦死という英雄製造装置
自分を客観視すると、死体の振りして自国への強制送還を望むのだが。
真逆なスタンスで向かう、代々木公園、11時。

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"Thai Festival 2008"

芝生に敷かれたブルーシートに容赦なく叩きつける五月雨っていうか、大粒の雨
グリーンカリー、ガイヤーン (焼鳥)を肴にビールを飲みながら、傘で雨避け
絵的に罰ゲーム。

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数時間後にシーソンペット舞踊団が現れる(一度も見ていない)

同志と思われたブルーシーター、レジャーシーターらは雨風に負けて撤収してゆく中、ぼんやりと雨に打たれていると、傘が要らない程度に回復。
テンションを取り戻すかのように、飲食に走る

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"Thai Restaurant BAAN RIM PA"

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カオマンガイ (蒸し鶏のせごはん)

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パッタイ (焼きそば)

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ムウサムチャン・トートカティヤム・プリックタイ (たぶん、豚のハーブ焼き)

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ナム・チム・ガイ (鶏唐揚げ)

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クイティアオ・トムヤム (トムヤム麺)

画像無しの品目は以下の通り。

■トート・マンプラー ・・・ タイ風薩摩揚げ
■ソムタム ・・・ 若いパパイヤのサラダ
■クルゥワイケーク ・・・ 揚げバナナ

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一瞬だけの青空

ビール以外の酒が売られてない様子。
チャーン、プーケットラガーにも飽いたんで、別の国の店に移動します。

(了)

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May 10, 2008

『桂愛子、愛ヲ知ル』

雨が降り続いてますな。
本日は終日在宅ってぇことで、申し伝えることがござんせん。

ひさびさ読書なんてぇしましてねぇ、『阿修羅ガール』 舞城王太郎なんてぇのを読了しましたな。

作中登場するの描写がやたらおっそろしくてですねぇ、何か記憶に引っ掛かるところがありまして、何だろうかと考えておりますってぇと、最後のページに答えがありましたな。

以下は抜粋となりまして、

第二部「森」はラッセ・ハルストレム監督の傑作映画
「やかまし村の子どもたち」「やかまし村の春夏秋冬」
よりインスパイアされています。

とは著者の言なんでしょうがねぇ、とはいえ同監督の前述した作品なんてぇはひとつも観てないことに気付きましてねぇ、その記憶は連鎖してゆきますってぇと、シナプスがつながるが如くってぇ言いますか、別の記憶と連結しますな。

そして、同監督の『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』を観た頃の記憶をぼんやりと思い出したりもした、雨の土曜日で御座います。

(了)

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May 09, 2008

『隠シ釘、化粧釘、仮釘ヲ玄翁デ』

浅草長瀧山本法寺の境内に、はなし塚なんてぇのがありましてねぇ、戦時中、時局柄に合わないなんてぇ理由で禁演落語五十三種が葬られておりましたな。
終戦後、禁演なんてぇのは勿論解除されてまして、現在では塚の法要と祭が催されてるんですねぇ。

興味が無い方にはほんっとにどうでもいいはなしなんですがねぇ、ここはひとつ諦めて頂きまして、一席お付き合い願い奉りますな。

まずは件の五十三種をば。

明烏 粟餅 磯の鮑 居残り左平次 お茶汲み
お見立て おはらい 親子茶屋 首ったけ 郭大学
五人廻し 子別れ 権助提灯 三助の遊び 三人片輪
三人息子 三枚起請 品川心中 高尾 辰巳の辻占
付き馬 突き落とし 搗屋無間 つるつる とんちき
二階ぞめき 錦の袈裟 にせ金 白銅の女郎買い ひねりや
文違い 坊主の遊び 万歳の遊び 木乃伊取り 山崎屋
よかちょろ 六尺棒 一つ穴 星野屋 悋気の独楽
城木屋 引っ越しの夢 包丁 氏子中 紙入れ
駒長 葛籠の間男 蛙茶番 疝気の虫 不動坊
宮戸川 目薬 後生鰻

こう並べて見ますってぇと、廓噺(くるわばなし)、強いて言うってぇと吉原遊郭を背景にした噺が多いですな。
多いどころかほとんどが、それ

花魁、妾、間男が登場するってぇと、問答無用でNGだったようで。
それ以外ってぇと、艶笑(えんしょう)、いわゆる下ネタも同様でしたな。

中でも「子別れ」なんてぇのは、泣ける泣かす人情噺と思われがちですがねぇ、よく考えるってぇと、一度マイナスになった状態がゼロになるだけでしてねぇ、

大酒が過ぎた左官職人、女房子を家から追い出し、吉原から馴染みの女郎を身請けして暮らし始めたものの、元女郎は他所の男と逃げてしまい、全てを失ってからようやく職人として更生し、息子の亀と再会して子が鎹となり、再び家族三人で暮らし始める

ってぇ内容でしてねぇ、どうしたって左官職人を遊郭に行かせた挙句一度家族と離縁させなければいけないんで。

それでもひとは、一度堕ちて這い上がるってぇ噺が好きなんですな。

はなし塚、禁演落語五十三種からの一席で御座いました。

(了)

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May 08, 2008

『私ハ踊ルコトヲ知ッテイル神ダケヲ信ズルダロウ』

神田神保町、かつて足繁く通っていた立ち喰いそば店の階上に、遅い時間まで営業しているバーがあると知り向かってみる。

オフィス然とした雑居ビルの階段を上がり、薄暗くて中すら窺えない扉を開けると、階下の立ち喰いそば同様に「鰻の寝床」的に奥行きだけが長く幅が狭い。
奥にはL字型カウンター、扉付近には四人掛けのテーブル席ふたつばかり。

先客は、土地柄か自由な服装をした出版関係な中年男性ら数名。
後続の客らと、「おー」とか「あー」とか曖昧な挨拶を交わしながら、椅子があるにも関わらず立ち飲みしている様子。

カウンター内にいるスタッフにドリンクを頼むが、何の呪縛か出てこようともしないので、品名が叫ばれると自らが出向いて取りに行くしかない。

読み返してみると何だか排他的なコメントしかしてないようですが、ミックスピザのトッピングが選べるので良いと思いました。

(了)

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May 07, 2008

『揺レテ壊レテ引キ裂カレ』

この日、内藤新宿に於いて落語の音源を数点借り受けましてねぇ、そのまま痛飲して帰宅するてぇと、日付なんてぇは数時間前に変わっておりまして、着替えもそこそこに横になりますな。

深夜にふと目を覚ますてぇと、床がぐらぐらぐらぐらと横揺れし、天井がみしみしみしみし家鳴りしますな。
当の住まいが築三十五年を超えるてぇと、若干の不安も過ぎるんですがねぇ、もう睡魔にゃァ勝てやしません。

揺れてる時間が長いてんで、その揺れに身を任せて重い瞼を閉じるてぇと、つくづく自分てぇのは本番に弱く、ディザスター(災害)系なんてぇ呼ばれてる映画の中では、冒頭であっさりと犠牲者になるタイプなんだと気付いた瞬間でしたな。

揺れと同時に外へダッシュするくらい生への執着があるってぇのが、勝ち組なんでしょうなァ。

(了)

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May 06, 2008

『遠ク遠ク慮ル』

前日の残り物を一日かけて食す、ということは終日外出してないってことだね、って誰に確認してるんだかさっぱり分からんけど、まあ、天気だけは無駄に良くって、洗濯物もよく乾くし、布団も干し放題!なんてテンション上げても仕方が無いじゃないですか、と不意に我に返ることもありながら、エリンギを焼き、茄子を焼き、人参を焼き、ピーマンを焼き、玉葱も焼いちゃったりして、もう青いの赤いのばっかり根ばっかりキノコばっかりで飽きてるにも関わらず、レタスとキャベツががっさー余ってるのを発見してしまい、一蓮托生だ運命共同体だ連帯責任だと無理ぐりに焼いてしまい、それでも残ってたりもして、夕餉の具に加えてみたり、食べないのに炒めてみたり、やっぱり食べてみたりと、時間の経過と共に何かが壊れている壊れ始めていると気付き、嗚呼もう休みが終わってしまうんだ、今日が最後の休日なんだ、小学生の八月三十一日なんだと悟り、これまでの数日を振り返ってみようと目を閉じるとそのまま寝てしまったりしてさっぱり要領も得なければ、記憶なんて忘却の彼方に、カリフォルニアの青い空にだったりとかして、ひさびさオールディーズなんて聴いてるし、そういや今回は実家に地元に帰ってないけど、去年はどうしたっけとしばし悩んではみてもやはり思い出せなかったりして、とにもかくにも一歩も部屋から出ない休日をしさしぶりに、ひさしぶりに過ごしているなと、ただ過ぎてゆくのだなと、黙ってても流れてゆくのだなと、そういうことをおもってひとはいきているのだなきっとたぶんそうだということにきづくのだった。

(了)

投稿者 yoshimori : 11:25 PM | コメント (0)

May 05, 2008

『全然備長炭 made in Myanmar』

早い時間に目を覚ましますてぇと、偶さか晴れ間が見える程度の曇天の様子でしてねぇ。
昨日より夕刻から降り出すなんてぇ聴いておりましたんで、そん時ゃそん時で代案をなんてぇことを考えておりましたな。

ま、降ったら降ったで解散にしやしょうなんてぇ言いながら、木炭に火を点けましてねぇ、備長炭に火が熾きますてぇと、昨日内房にて買い求めたなんてぇ烏賊の一夜干しを網に載せますな。

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何がつらいのかじわじわっと反ってゆきます

続けて幾つかの菜が鉄板に載せられますってぇと、の登場がトリを務めるてぇくらいにヘルシーな焼き場ですな。
挽き肉を捏ね繰り回したってぇ塊が焼かれるってぇと、レタスとチーズをバンズではさんだりもします。

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トマト嫌いが作る、チーズバーガー、トマト抜き

鉄板じゃあ間に合わないってんで、中華鍋を持ち出し焼きそばを拵えた辺りで空があやしくなって参りますな。

嗚呼、ぱらぱらっと雨が降って参りました。
止む無く解散と相成りまして、火屋廃業で御座います。

(了)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

May 04, 2008

『テラス席ノ御利用ニナレナス』

朝も早くから起きるてぇと、東京駅は八重洲口へ向かいますな。
黄金週間だけありまして、浦安鼠ィランドなんてぇ舶来遊戯場目当ての家族連れやつがいどもであふれてますねぇ。
どいつもこいつも暇なんですなァ。

特急さざなみなんてぇのに乗っかりまして、目的地を目指して止みません。

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JR内房総線、浜金谷駅

あいにくの天候、残念ながら霧雨がそぼ降る中、送迎の車両を待ちますな。
ピックアップ予定の数人かを捨て置き、目的地を目指しますねぇ。

渋滞、右折禁止、一方通行を無事に潜り抜けての到着。
まだ十一時というのに、ほぼ満席状態のまま、どうにか食卓に案内されます。

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■舟盛

前回、完食できなかったってぇ反省点もありまして、舟盛はなるだけ小さいものを選ぶってぇと、貧相に見えますがねぇ、これは死活問題なんですなァ。

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■鯵のなめろう

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■貝焼き<帆立、栄螺(さざえ)、大浅蜊、蛤、白貝、海老>

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■五種掻き揚げ

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■大穴子天

金目姿煮は撮り損ねましてねぇ、中座してる間にほぼ骨になってましたな。

画像の無いその他の品は以下の通りでしてねぇ、どんだけ喰ってんだってぇ感じですねぇ。

◆鯵寿司、貝のなめろう、烏賊の塩辛、貝味噌玉、さんが焼き、あら汁

「地魚」を「地酒」と呼んでみたり、競艇場で泥酔しているその手の方スタイルになったりと、参加者の動きがあやしくなってきたところで支払いを済ませ、外へと出ますな。

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晴れてるってぇと正面iに富士山、右手に観音崎が見えるらしいんですねぇ

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同じ理由で左から大島、天城、城ヶ崎らしいですな

苦しいくらい喰らい尽くしまして、フェリーに乗っかりますな。
カモメにえびせんをくれてやる予定が、強風と雨にて泣く泣く諦めましてねぇ。
波に揺られてるうちに眠くなって参ります。

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京急久里浜より品川を目指します

海鮮類で満たされたカラダのまま、山手線と井の頭線で帰りまさァ。

(了)

投稿者 yoshimori : 11:49 PM | コメント (0)

May 03, 2008

◆『番組ヲ御案内申シ上ゲマス』

『平成20年ゴールデンウィーク「特別興行」 権太楼噺たっぷり十夜』

なんてぇ銘打ちまして、柳家 権太楼師匠が十日連続で夜の部主任(トリ)を務めるってぇはなしですな。

紙切り ■ 林家 正楽
正楽師匠が「リクエストがあれば」なんてぇ言いますと、
「ゴールデンウィーク!」
なんてぇ声が掛かりまして、結果、遊園地に並ぶ親子連れが仕上がります。
続いて「藤娘」、「花菖蒲」、「虎」、「鍾馗」なんてぇ五月らしいのができますな。
正楽師匠、「虎」を切り始めたはずなんですがねぇ、何故か「花菖蒲」うっかり切ってしまい、一度は置いた紙を再び持ち直し、「虎(花菖蒲付き)」を完成させてましたな。

落語 ■ 柳家 甚語楼 「不精床」
やる気のかけらも無い床屋の親方、小僧より「前回の客は耳を落とされて気の毒だった」と客にばらされるも続けましてねぇ、「落ちた耳を犬が狙ってる」と脅かしますってぇと、「あんたは鼻かな?」と落としますな。

落語 ■ 春風亭 正朝 「祇園会(祇園祭)」
江戸っ子と京男が地元魂を燃やし、各々国の祭自慢を繰り広げますってぇと、次第にエキサイトしましてねぇ、最終的に京男が
「御所の砂を掴んでみなはれ、瘧が落ちるやさかい」
なんてぇ言うのに対して、
「何をぅ、千代田城の砂掴むってぇとな、首が落ちらぁ」
と返してしまいますとねぇ、江戸っ子負けてる感がありますな。
瘧(おこり)ってぇのは、一定の周期で発熱し、悪寒やふるえななんてぇ症状を持つ疫病のことですな。
千代田城は、言わずと知れた江戸城ですねぇ。

落語 ■ 柳亭 市馬 「芋俵(芋泥)」
木綿問屋へ忍び込む為に芋俵に入る与太郎、問屋内に入り込んだものの、芋を漁る小僧より腹部を押されて思わず放屁
「わあ、気の早い芋だー」

漫才 ■ 昭和のいる・こいる
すいませんねぇ、師匠、はばかり行ってまして見てませんねぇ。

落語 ■ 柳家 喬太郎 「午後の保健室」
喬太郎師匠を初めて聴いたのがこの演目だったのを思い出しますねぇ。
登場人物は以下の三人ですな。

幼少の頃から長屋の隠居口調の生徒会長、遠藤
「超」を連呼するやんきー口調の校長、山崎
フェロモン全開な若い校医と思いきや実は還暦の先生

映像化は未来永劫不可能な落語でしか成り立たない人物設定ですな。

落語 ■ 柳家 小三治 「長短」
AB型は「狂気」と言いますな。
小三治師匠が例として挙げたのは、
立川 談志、三遊亭 圓楽、永 六輔
の三人。
小三治師匠本人は、B型なんですがねぇ。

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仲入りでございます

会場外では権太楼師匠が自らデザインしたTシャツを販売しておりますな。
・・・デザインにがあり、購入は断念しましたねぇ。
ファンへのサービスの為か傍らに控えている師匠、お疲れの様子でぐっだぐだになってましたが。

津軽三味線 ■ 太田家 元九郎
津軽の民謡には、幾つか良い曲がありますな。
ただ、結婚式で演ったら追い出されそうな演目もあり、「嫁いびり」を唄った内容がありましてねぇ、調子に乗って九番までたどり着いてしまうってぇと、

「ここんちの親は鬼、嫁いだ嫁は馬鹿」

なんてぇ言い訳の効かない事態になりますな。

落語 ■ 桃月庵 白酒 「宗論」
宗教を笑うってぇのは日本人ならではの感覚かもしれませんな。
ワイドショー的に幾つかの固有名詞を並べ立てるだけで、「あぶねぇなー」と含み笑いを禁じえませんねぇ。
特定の団体から狙われるのも剣呑だってぇと、口数も少のうなりますな。

太神楽曲芸 ■ 鏡味 仙三郎社中
擂粉木みてぇな棒を口にくわえ、不安定極まりない土瓶を乗せてくるくるを回しますな。
土瓶がまるで鼠の様に動くってぇと、派手なだけが曲芸じゃあござんせんねぇ

主任 ■ 柳家 権太楼 「火焔太鼓」
「自分で何を喋ってるか分かりません」なんてぇことを仰ってましたが、いつも通りでらっしゃいましたな。
落語には「陰」と「陽」ってぇのがありまして、当演目における「陰」ってぇのが太鼓を買い取る側の武家屋敷の用人、田中三太夫とすると、「陽」は道具屋主人と置き替えられますねぇ。
要は「ボケ」と「ツッコミ」に相違ありませんな。
「陽」がはっちゃけてわあわあ騒いでるのを、「陰」が覚めた態度で冷静に突っ込んでゆくというのをひとりで演じ分けるってぇわけでしてねぇ、権太楼師匠は実にめりはりがありますな。

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追い出しがデテケデテケデテケデテケと鳴ります

上野広小路からさして移動もせずに般若湯でも頂きましょうかねぇ。

(了)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

May 02, 2008

『紅元ニシテ飯ヲ加エ、善ク醸ジテハ雪香ル』

雨中、渋谷にある琉球チャイニーズな店を目指すも、週末だけに満席という。
チャイニーズを諦め切れずに新宿へと移動し、狭い路地を抜けて赤い階段を上がると、ここも満卓の様子。

そらまあ金曜やし、しゃあないわいな、と引き返すべく階段を降りかけると、ほぼ泥酔にも近くネクタイなんてとうに外してポケットからはみ出ている中年男性より、いまはいたよほーなんて伝えられ、それが「今空いたよ」と言っていることに気付くまで五秒を要する。

無事に奥の間へと通され、腸詰、剥き海老の炒め、干し大根と干し豆腐の炒めを頼み、聴いたこともない銘柄の紹興酒を飲み干す。

雨は止まないまま、次へと移動します。

(了)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

May 01, 2008

『腿傷三寸肩八寸、指ハ九本ニ為リ掛カル』

よく電車の中で何かを読んでる方をお見掛けしますな。
書店名の入ったカバーの文庫本を読む人、買ったばっかりのDSの取説を読む人、スポーツ新聞を読んでる人の紙面を横から読む人、なんてぇ種々雑多にいましてねぇ。

シートに座って読んでる人てぇと、せいぜい背表紙っくらいにしか目に入りませんが、吊革に掴まって揺られながら背中を向けてる人なんてぇと、開いているページがよく見えたりします。

特に興味があって覗き込むなんてぇことはしませんがねぇ、うっかり目に入った文言てぇのが、

「なぎなた」

だったりしますとねぇ、とりあえず一歩退きまして、読み人の全体像を確認しますな。

孤独とネットの掲示板だけが友達のあぶねぇ感じ満載であれば即離れますし、金曜日には普通に友人と飲みに行くような風貌の方であれば害は無いってぇ判断で少し様子を見ますがねぇ、同じページに「なぎなたを持った半裸の女」のイラストを発見するってぇと、何だアキバ系かと残念な気持ちでいっぱいになりますな。

刃物女子なんてぇ、新しい萌えかもしれませんがねぇ、現実世界ではどう転んでも刃傷沙汰は免れませんなァ。

(了)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)