December 31, 2010

『十二月余一会~張りと胃と』

越年に託(かこつ)けて何となく飲んだくれようと打ち合わせる午後三時
当日になって今更何をしているのかと無計画にも程があると凍え死ねと雪が溶ける春まで見つけてやらん等等極寒地における農作計画担当から烈火の如く叱責されても致し方ない呑気さ加減である。
幸い会場も決まり、参加者も辛うじて複数名と呼べる員数に達する。

襲うように会場に訪れると食材だけをキッチンに投げ出し、瞬きすら回数を減らして鼓動すらも控えめに、春まで蠢くのさえ止めるかのようにじっとしている
やがて個別だった食材は一纏めにされて食卓に並び始める。

・新年を迎えるに当たり、せめてそれらしい一品をと選んだのは散らした数の子も眩しい鰯の酢漬けである。
・一度は諦めかけたローストビーフを解凍し過熱し皿に盛る勇気を買いたい。(それを食べるのは誰なんだ)
酒盗を載せたクリームチーズを口にしいしい、酒を盗まずにはいられない。
・どうしても灰汁(あく)が出てしまう鶏水炊きは素材に問題があるのだろうか。

桑田佳祐NHK紅白にて復活を遂げているのも知らないまま、しれっと暮れゆく年の瀬なのである。

皆の衆、良い年を迎えよと願って止まないのだよ、わたし的には。

(完)

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December 30, 2010

(工事中)『十二月下席(千龝樂)~異尾下目(いびかもく)』

<20110107現在、加筆・訂正・画像準備中>

暮れも押し迫り、取り立てられる借金こそなけれど、ただぼんやりと遣り過ごすのも何となく世間に申し訳ないような心持ちがしないでもない。
今からでも遅くはない、わさわさしなければいけないと自分に言い聞かせ、年末に向けて忙しい振りをせずばなるまい。

前夜祭と称し、地階にある鮮魚専門店に来ている。
流石にオフィス街に佇む飲食店だけあって、通りに人の気配がしないのも然ることながら、店内は蛻(もぬけ)の殻も同然、がらんどうである。

りはびりとは名ばかり、もう初手から冷やなのだ。

◇国権(福島・会津)

魚河岸が休みと見え、造りの全品が半額という。
船盛りまでは遠慮するが、板前にそう云って幾つか誂(あつら)える。

(画像準備中)
七点盛り

出世魚より時計回りで。
◇コッパ⇒セイゴ⇒フッコ⇒スズキ(鱸)
◇海月(くらげ)・・・ よかれと思い「海月(みづき)」と名付けてみたら「くらげちゃん」と呼ばれる
結果に。
◇鰺
◇間八(カンパチ)
◇純生サーモン
◇赤貝
◇寒鰤

箸休めとして間に蕗味噌でしみじみと

◇奈良満(福島)
◇獺祭 純米大吟醸50本生(山口)
◇天吹(佐賀)
◇くどき上手(山形)

薩摩揚げ、鹿児島では「つけ揚げ」という。
当店、鹿児島とは縁もゆかりもないようだが、つけ揚げは自家製である。
我々が知る所の肉厚茶系な外装に非ず、肉薄にて白味がかったそれは儚げに頼りなさげではあるが、これが大変に美味であり、まるで海苔でも噛むように何枚でもいけてしまうのが危ういと知る。

前夜祭は此処までとして明日の本番に備えようではないか。
嗚呼、忙しい忙しい。(妄言)

(未完)

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December 29, 2010

『十二月下席~十歳(とお)で神童』

納会に参加している。
職場では病み上がりとして労わられ、「やわらかもの」と「おあま」しか手渡されないという徹底した過保護振りである。
それでも辛うじて缶ビールを一本だけ掠め取り、既に寂しくなった卓上にある食品の中から色物めいた乳製品を端から摘まんでゆくしかないのだ。

エクレアが人数分確保されている飲みの場も珍しい。
とりあえず身の内へと収めて置く。

包装紙にチーズと銘打つからにはそうなんだろうと口に入れると甘い。
しかも激甘である。
表記を眺めるとナッツ入りデザートチーズとあった。

逆に大した事はないのだろうと口にすると、これまた鼻に抜ける刺戟がある。
げに侮れぬは山葵入りチーズである。

このまま職場での忘年会に雪崩れ込むのを止めにして、むさ苦しい男ばかりが集まるこぢんまりとした会に出席すべく池袋より私鉄に乗り換える。

銚子出身という鮮魚専門店の大将が営むという居酒屋の二階へ案内される。
参加者は六名、既に男子と呼ばれるには遠い過去となった年代である。
隙間風に悩まされながらも鰭酒を煽り、造りを喰らい、を突くのだ。

冷酒◇七笑(長野・木曽)
鰭酒(ひれざけ)◇(銘柄失念)
造り◇帆立、海松貝(みるがい)、赤貝
寄せ鍋◇鮭、海老、豆腐、白菜、長葱、椎茸、他

二軒目、タクシー移動を果たした先は西池袋である。
バクハイなる物騒な名の品を全員で頼んでみる。
聞けば、サッポロビールとサントリーウィスキーによる奇跡のコラボレーションという。
コラボとすると聞こえはよいが、ソーダと間違えて混ぜちゃった感が否めないというビール風味のハイボールに相違ない。

この後もう二軒を同じエリアで巡る事になるのだが、それはまた別の話

(了)

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December 28, 2010

『十二月下席~水棲三題』

つらつらと。

◇読ミ了(ジマ)イ
入院中に読んでいた文庫本を読み終える。
『ぼくが電話をかけている場所』(中央公論社・中公文庫)
レイモンド・カーヴァー(Raymond Carver)
村上春樹:訳
「ダンスしないか?」 "Why don't You Dance?"
「出かけるって女たちに言ってくるよ」 "Tell the Women we're Going"
「大聖堂」"Cathedral"
「菓子袋」"Sacks"
「あなたお医者さま?」"Are You a Doctor?"
「ぼくが電話をかけている場所」"Where I'm calling from"
「足もとに流れる深い川」"So Much Water so Close to Home"
「何もかもが彼にくっついていた」"Everything Stuck to Him"

この短編集の作品群がロバート・アルトマンが監督した映画『ショート・カッツ』の原作と知るのは読後より少し後になる。
映画版のオチは確かL.A.大地震

◇自ラ愛ス
年上の後輩が壁に貼られた品書きを眺めながら髭の若造に尋ねている。
「この本日のカマ焼きって魚は何?」
「あ、それはー、今聞いてきますんで、少しお待ち下さーい」
程無くして戻って来る
「あー、お客さんすいません、今日のカマ焼きブリなんですけど、これ今日最後のひとつでヤマんなっちゃったみたいなんですよ」
「なるほど。じゃァそんなんで」
ってお前「ヤマ」って意味分かってんの?
品切れなんじゃないの?」
知ってんのかよ。そんな一般的な単語だっけか。
「俺は使うね」
使わねぇよ、気持ち悪ぃな。喰いたかったな。
程無くして再び現れる髭。
「お待たせ致しましたー、ぶりカマでっす」
っておい、最後のひとつが残ってるならヤマじゃねぇじゃん。
「俺等が頼んだ『最後のひとつでヤマ』だったんだ」
紛らわしいな。しかし、よくまァあの会話で注文が成り立つなァ。
「まァ俺だからな」
根拠のない自信に満ち溢れるのは止してくれ。

◇沈ミ没ス
自宅厠より水が流れ続ける音が聞こえる。
何が起きたのかとタンク内を確認すると、ラバー製の蓋が浮きっ放しである。
通常、タンク内に適量の水が溜まると浮子(うき)の役目を果たすプラスティック製の球体と繋がる軸と連動して蓋を閉じるのだが、間に何かが挟まっているようだ。
引き上げてみると、タンク内の浄水剤が半溶けのままで無残な姿である。
何となくオランダを救った少年を思い出した。
ていうか、半永久的に浄水作用のあるチタンボールを買っても固定しないと同じ目に遭うと知る。

(了)

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December 27, 2010

『十二月下席~群雲抜き(むらくもぬき)』

食が細いというのは、食に対する慾が希薄である上に胃の許容量が通常より幾分か少ない事に起因する。
故に手軽且つ流動食よりもましな固形物然としているという判断の下に、麺類を手繰り続けるしかないのだ。

立ち喰いとはいえ、足繁く通えば馴染みである。
我が儘のひとつふたつは通るものだ。

蕎麦屋の大将に云い付け、茹で上がった蕎麦の上に生玉子を割り入れてもらい、其の上からつゆを注がせる。
さすれば加熱により白身がゆらゆらと白濁し、黄色い月の回りに薄雲が棚引く体となる。
此れを月見とはよく云ったもので、店側にとっては七面倒な事この上なかろうが、当手順を要求して止まない。
しかも三食を通じてだ。

丼(どん)の内、朝に月見て昼に月見る。
せめてぐらいは空に月見ようと、そっとを盆に置くのも人情である。

(了)

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December 26, 2010

(工事中)◆『十二月下席~坂下ノ御用屋敷』

<20110104現在、加筆・訂正・画像準備中>

本日ァ靖国神社も近い九段での落語会でござんす。
渋谷からですと半蔵門線ただ一本でゆけるてんで、油断しまくりで鮨屋での昼酒でさァね。

ゆるゆると移動しますな。

『年忘れ市馬落語集』
@九段下・九段会館大ホール

開演前、携帯電話の電源を「おふ」にするよう促す「あなうんす」がありまして、
「着メロが鳴ると歌ってしまう落語家がいますのでお気を付け下さい」
なんてぇ、洒落の利かない輩にゃァ鳴らせと云わんばかりの前振りかと思われかねませんやね。

<第一部「落語競演」>

柳亭市江◆寄合酒

「あたしはマイクテストです」

本編:
町内の若い衆が寄って集って干鱈、数の子、鰹節、味噌を角の乾物屋から奪って参ります。

柳亭市馬◆首提灯

「三三くんが『情熱大陸』に出演しまして」
「三十分番組に半年間の密着取材でしたよ」
「あたしもねぇ、唄う通行人役で出ようかと申し出たんですがねぇ」
「丁重にお断りされました」

柳亭三三◆親不孝

「市馬師匠を協会に引き止める策として、副会長のポストで釣ったンだそうで」
「・・・第二部での力を温存する為に台詞の少ない根多を選んだそうです」

本編:
大旦那が若旦那の供に化けて茶屋へと出向きますが、其処には手切れを渡して別れたかつての囲い者、欣也と出会います。

若旦那の発する芸者仕込みの間の悪い唄を聞いた大旦那、「歌なんか唄って何が愉しいんだ」と何かを揶揄したように斬り捨てます。

欣也と好い雰囲気になりつつある大旦那に声が掛かります。
「お供さーん、若旦那お帰りですよー」
「・・・あの親不孝者めが」

立川志らく◆死神

「市馬あにさんの副会長就任は八十人抜きだそうです」

「立川一門四天王と呼ばれておりまして」
「志の輔あにさん、談春あにさん、わたくし志らく、そして談笑です」
「志の輔あにさん、談春あにさんがA面、わたしと談笑がB面とも云われております」

本編:
例の死神退散呪文の文句がだいぶ個性的な感じになっております。
「アジャラカモクレン、金正日の後継者、こぶ平さんに似てますね」
「もうひとつ教ぇといてやろう。麻木久仁子、大桃美代子、どちらも了見が悪過ぎる」

お仲入りで御座ィます。

<第二部「昭和歌謡全集」>

演奏:クミ伊藤とニューサウンズオーケストラ
歌唱:柳亭市馬
ゲスト:立川談志
司会:加藤浩

灰田勝彦◆アルプスの牧場(昭和26年、作詞:佐伯孝夫)
「レイホー」
田端義夫◆海のジプシー
「オース!」
「バタヤン、たぶん何処かで生きています」
ディック・ミネ◆夜霧のブルース(昭和22年、作詞:島田磬也、作曲:大久保徳二郎)

歌唱:立川志らく
岡晴夫◆東京の空青い空(昭和24年、作詞:石本美由起、作曲:江口夜詩)

塩まさる◆九段の母(作詞:石松秋二、作曲:佐藤富房)
「上野の駅から九段まで」
伊藤久男◆建設の歌(熱砂の誓ひ)(昭和15年、作詞:西條八十、作曲:古賀政男)

司会の加藤浩氏、市馬師匠の手帳を拝見した際の内容を紹介します。
「今年いちばん嬉しかった事、日本歌手協会入会」
「今年いちばん悲しかった事、落語協会副会長就任」

愈愈お待ちかね、家元の登場となります。
舞台袖から現れた家元は勿論高座着ではなく、赤黒すとらいぷなねるしゃつ姿でした。
矢張り声が出ないンですが、それでも「二日前には『芝浜』を演った」と仰ってました。

立川談志◆立川談志コーナー(フリートークと小咄)

「無人島にモデルのクリスティーナ・ロゼと流される男」
「男はクリスティーナ・ロゼに頼みがあるという」
「何でも聴くわと答えてくれるクリスティーナ・ロゼの顔に髭を眉毛を書きてゆく男」
「『なァ聞いてくれよ、俺今クリスティーナ・ロゼを暮らしてるんだぜ』」
「これパトリック・ハーラン(パックン)から教わったんだ」
「毛唐から教えてもらうようじゃァ俺ももう駄目だな」

小咄は続きます。
「親友の酒」
「闘牛の戦利品」
「同じ日に仕入れたステーキ」

家元は袖へと下がりまして、市馬師匠、白のタキシード姿で再び登場です。

村田英雄◆王将(昭和36年、作詞:西條八十、作曲:船村徹)
「吹けば飛ぶよな将棋の駒に」
藤島恒夫◆月の法善寺横町(昭和35年、作詞:十二村哲、作曲:飯田景応)
「包丁一本さらしに巻いて」
新川二朗◆東京の灯よいつまでも(昭和39年、作詞:藤間哲郎、作曲:佐伯としお)
「雨の外苑 夜霧の日比谷」
三船浩◆男のブルース(昭和31年)
青木光一◆柿の木坂の家(昭和32年、作詞:石本美由紀、作曲:船村徹)

アンコール:
春日八郎◆赤いランプの終列車(昭和27年、作詞:大倉芳郎、作曲:江口夜詩)
松山恵子◆だから云ったじゃないの(作詞:松井由利夫、作曲:島田逸平)
「あんた泣いてんのネ」

浩「僕は市馬の葬儀委員長として絶対にこの曲を出棺時に流します」
市馬「噺家が死んだら普通はさ、出囃子とか流すんだよ」

最後に談志師匠も再登場しての歌謡すてーじならではの客席に向けてのご挨拶となりまして、お別れで御座ィます。

暮れの日曜なんてんで、開いてる店ぇ探しまして市ヶ谷まで移動します。
木造一軒家を改装したなんてぇ市ヶ谷にある店は日曜休業なんてんで、近所にある鮮魚専門店へと脚ィ運びまして、冷酒と供に貝類なんぞをいただきます。

(未完)


<備忘録>

昼餉:
鮨◇車海老、寒平目、寒鰤、鯣烏賊、螺貝、青柳子柱、〆鯖、鰯、帆立、鳥貝、小肌

冷酒◇村田(宮城・村田)、八海山(新潟・六日町)

夕餉:
食◇牡蠣鍋、活き鮑の踊り喰い
冷酒◇幻の瀧(富山・黒部)、鵜沼良(岐阜・美濃)

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December 25, 2010

『じゅうにがつしもせき~でかだん』

みなさん、こんにちはこんばんは。
「さいれんとないと・ほーりーないと・ぼくめついいんかい」のかいちょうをつとめるものです。
さくじつはうっかりとふつうにすごしてしまいました。
よをのろい、ひとをのろい、つがいをのろうのをすっかりとわすれていました。
いまからでもおそくはありません、「Xますけーき」としょうして、ぶっそうなてんかぶつをこんにゅうし、せけんをにぎわせてやります。

きょうは10じおきました。
そとはにくらしいほどにはれています。
そのあかるさがしゃくにさわるので、「にどね」してやります。
13じにおきました。
なにもへんかはありません。
14じはんすぎにしゅつどうです。
かくごしろよ、つがいども!

「たいはいてきなくろがし」というなのいやななまえとふんいきのみせにむかいます。
もちろんよやくなんかしていません。
しょーうぃんどーの「ろうざいく」なけーきをうってもらおうとてんいんとこうしょうしますが、なかなかくびをたてにふりません。
これいじょうはじかんのむだとさとり、ふつうにけーきをかいもとめ、ぶっそうなてんかぶつをこんにゅうしてやろうとおもいます。
まってろよ、しあわせきどりのやからども!

でんしゃをいくつかのりついで、ぱーてぃーかいじょうにたどりつきます。
すでにしこみはばんぜんです。
これでやつらもいちころだぜ。

ぴんぽーん
たくはいぎょうしゃをよそおい、ぶつをはこびいれます。
これでこのかいじょうはあびきょうかんじごくえずとなるでしょう。

そのとき、ひとりのしょうじょがいいました。
「よかったらどうぞ、これをたべていってください。きょうはくりすますですよ」

そでをひかれ、ふりかえると「さら」にもられた「けーき」がそこにあります。
このぶったいは、ぼくのなかでは「きけんぶつ」なのです。
ふれてもなりません。
みんながみています。
ぼくはさらをうけとり、しょうじょにいいました。

「あ、ありがとう、で、でもね、こ、これはおみやげにするよ」

つぎのしゅんかん、ぼくはれいのけーきをはこごとかかえ、ぜんりょくしっそうしていました。

ひとにしたおこないはじぶんにかえってくる。
わかりやすいきょうくんです。

ことしはふはつにおわりましたが、らいねんはおぼえてろよ!(なみだ)

(おわり)

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December 24, 2010

『十二月下席~去我苦塚ノ怪異(さるがくつかのかいい)』

猿楽町、十四時。
久方振りに歩く八幡通りである。
諸事情により食が細くなっているのを考慮し、蕎麦屋の暖簾をくぐる。
先客は四組、混んでいる。
後続にひとり客が二組続いて満席となる。
内装は土地柄のされおつ度合いを一切受け入れない昔ながらの町の蕎麦屋の体にて、BGMは80年代歌謡曲である。

まずはと冷酒を一合と天抜き(「天」麩羅蕎麦の蕎麦「抜き」)を。
品書きには銘柄の記載はないが、書かない事情もあるだろうと敢て尋ねたりはしないのだ。
蕎麦が茹で上がる前に飲み終えて替わりを傾け始めそうなので、グラスでの一合売りを断り徳利と猪口を貰う。

一合をやっつけたところで、茸蒸籠を頼む。
きのこだぁ? と板前から鼻でせせら笑われようが、こちとら江戸っ子ではないので、かような不粋も結構毛だらけなのである。

・・・人の事を兎や角云える立場じゃァないのは重々承知なのだが、店内をつと眺めてみれば、先客後続を含め、客層における職業不詳さ加減が何か琴線に触れたようでざわざわした心持ちになる。

だって、みんな平日の昼にここで何をしているのさ、だいたいその太り方とその日焼け具合は何なんですか、君らの親は知ってるのか、そういう微妙な色の服を着て往来を歩いたりして、草むしりとかしたことないでしょ、その手は、という類の輩に向けられた眼差しは時として悪意を持つのである。

「そういうお前には云われたくない」という天からの一声も聞こえたりして、それはそれで重ね重ね心得ているのだと自らに問い掛けると、忸怩たる思いで店を後にするのだ。

(了)

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December 23, 2010

(工事中)『十二月下席~黄金ノ丘』

<20101230現在、加筆・訂正・画像準備中>

覚書。

◇たらばがにのカクテル&かにサラダ
◇スモークサーモンとかぶのサラダ添え
◇ソーセージの盛り合わせ
◇ポテトサラダ&カンパーニュ風カクテルサンド添え
◇皮付きポークばら肉のザワークラウト煮~エールマスタード添え(ローグエール・インペリアルスタウト)
◇ローストターキー リードボー
◇フォアグラポテトコロッケ
◇牡蠣のベーコン巻き~エールマスタード添え(ローグエール・インペリアルスタウト)
◇ローストビーフ
◇手羽先のアーモンド焼き(富士桜高原ビール・ヴァイツェン)
◇ムール貝とかにのフレッシュトマトパスタ~パルミジャーノレッジャーノをくり抜いた器で
◇ショートロールケーキ~特性ビアシロップかけ

◇伊勢角屋麦酒ピーチランビック'08 ・・・ "Wellcome!" (マスターズスペシャルブレンド完売)
◇いわて蔵レモンビール
◇伊勢角屋麦酒ペールエール
◇ベアードビール駿河ベイIPA
◇アウグス"Toshi's IPA"
◇南信州ビール・ウィンターエール'09
◇博石館ビール・クリスタルエール'01 ・・・ いずれか過度に甘・酸
◇博石館ビール・ハリケーン'07 ・・・ いずれか過度に甘・酸
◇Rogue Ale "Brutal Bitter" ・・・ "favorites"
◇Greatdivide Brewing "Rumble oak aged IPA"
◇Green Flash Brewing "West coast IPA"
◇Brewdog Brewing "Paradox Longrow cask"
◇Rogue Ale "Barllywine"

◇xxxスペシャルブレンド クリスマスエール
◇ハーヴェストムーン・セレブレーションエール
◇Norgue/Jolly Pumpkin/Stone "Special Holiday Ale" (ストーンとジョリーパンプキン、ヌグネの3社コラボ)

"Rounders (1998/US/121)"
KGB said "Don't touch this."

(未完)

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December 22, 2010

『十二月下席~胴摺り(どうずり)』

着床とは「とこにつく」という意味ではない。

◇宿
月刊誌『サライ』に連載中の「難航十字語判断」、所謂クロスワードなのだが、字面通り大変に難易度が高い。
200回を超える連載の中から42問を精選し、広開本として製本、書店にて発売しているという。
寝たきり生活には丁度良いと考えるが、街まで買いに行けないから通販で間に合わせようとも思う。

◇門
処方された鉄化合物製剤は四日分である。
忘れることなく飲み続けているが、ぐらぐらは止まない。
僅かな距離でもまっつぐに歩けない。
鉄は足りているのか。

◇家
よく煮込まれた温野菜と共に鶏だし風味のスウプなんぞを啜り込みたいきぶんだ。

◇戸
大型回遊魚の切り身、マッシュドな森のバタアと藁の中で発酵された大豆類を掻き雑ぜて食したきぶんだ。

捻りなき箇条書きで許されよ。

(了)

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December 21, 2010

『十二月下席(初日)~踏鞴ノ刃金(たたらのはがね)』

終日、床ヲ離レズ。
読み掛けの文庫本を読了、未見の動画を再生。
以下は其の備忘録。

『内田百閒集成(3) 冥途』内田百閒(筑摩書房ちくま文庫)
短編集ではあるが、何処から読み始めても寝覚めの悪い夢に魘(うな)されそうな気配が濃厚に漂う。
病身には向かないと今更ながらに気付く。

『その時歴史が動いた』
(NHK大阪放送局)
「シリーズ秀吉の猛将②豊臣家存続の秘策~加藤清正 二条城会見~」
「軍服を脱いだジャーナリスト~水野広徳が残したメッセージ~」
「自立を賭けた戦い~河井継之助(かわいつぎのすけ)・もう一つの戊辰戦争~」

雨が降り出す。
ぐらぐら。

(了)

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December 20, 2010

『十二月中席(千龝樂)~伍拾粍瓦ノ鉄(ごじゅうみりぐらむのくろがね)』

終日病床。
此れを期として録り溜めていた未見の動画を流す。
以下は其の備忘録。

『中継!秋の傑作落語選スペシャル 三遊亭楽太郎・風間杜夫二人会』
@横浜にぎわい座(2009/08/06収録)
三遊亭楽太郎(現・六代目圓楽)・風間杜夫◆対談
三遊亭楽太郎◆禁酒番屋
仲入り
風間杜夫◆化物使い

『平成22年度NHK新人演芸大賞~落語部門』
@渋谷・NHKみんなの広場ふれあいホール(2010/11/06放映)
笑福亭由瓶◆阿弥陀池
春風亭一之輔◆初天神
桂まん我◆お玉牛
立川志らら◆風呂敷
立川談修◆宮戸川

『その時歴史が動いた』
(NHK大阪放送局)
「大奥 華にも意地あり~江戸城無血開城・天璋院篤姫~」
「大奥 悲しみの果てに~徳川家宣正室 天英院煕子の生涯~」
「シリーズ秀吉の猛将①戦国の風雲児 法の世に散る~福島正則 広島改易事件~」

鉄分が足りない所為か、横になっているだけなのに動悸息切れ眩暈がする。
頑張れ、俺。(涙)

(了)

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December 19, 2010

(工事中)『十二月中席~棟中見廻日記』 (第漆回・最終回)

<20101230現在、加筆・訂正・画像準備中>

晴天である。
亡くなった噺家が数名登場する夢を見た気がする。

06:00 起床
08:00 朝食(パン◇2枚、ジャム◇ストロベリー、ママレード◇オレンジ、飲み物◇牛乳、盛り合わせ◇ツナとレタスと胡瓜とトマトのポテトサラダ、チーズ◇Q.B.B.、フルーツ◇蜜柑)

看護師が訪れ、午前中には退院という。
はやくにんげんになりたい。

廊下で死神のような風貌の二十代前半と思しき女子とすれ違う。
自己の経験則に前例がないくらいに痩せて見え、歩行もゆらゆらとして形無しの日本舞踊のようである。
番茶の入った電気ポットの上部を押して、茶碗に注ぐ行為さえ大儀そうに見える。
娘、達者でな。(涙)

10:00 退室

手術費、入院費、その他諸々の支払いもせずに病院から離れる、何故なら今日は日曜だから。
徒歩にて帰宅。
疲労か鉄分不足か足取りは決して軽くない。

自宅にて眠らないまでも床に就く。
食慾もさほどなく、塩飴の塩分と糖分だけで生きている。
何かを身の内に入れねばなるまいと布団より這い出る。

19:00 夕食(月見饂飩、摩り下ろし林檎)
23:00 就寝

世間的には微々たる病歴ではあろうが、個人的には長い闘いだったと思う。
主治医より向こう二週間は飲酒、旅行、運動を差し止められているのだが、他人に厳しく自分に優しい身としてはかなり難易度は高い。
願わくば、酒の無い国に行きたい二日酔いが三日目にまた帰りたくなるように、禁酒だけでも三日で済ませていただきたいものだ。(阿呆)

(未完)

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December 18, 2010

(工事中)『十二月中席~棟中見廻日記』 (第陸回)

<20101230現在、加筆・訂正・画像準備中>

夢さえ見ていない。

06:00 起床・検温・血圧

食止めは本日で終了。
鉄分を錠剤で補給する予定。

08:00 朝食(五分粥、味噌汁、煮奴、煮浸し、飲み物◇ジョア・ストロベリー)
08:30 服用(鉄化合物製剤フェロミア錠50mg1錠)

食後、ガートル台を連れて個室に向かうも全ブースを占拠されている様子。
すわ一大事と隣接する病棟へ。
職員専用と記された扉を迷いなく開けて踊り込む。
病人用ではないので当然の如く狭い。
ガートル台を斜めに立て掛けながら身体を押し込めて、世の中の全てを呪うしかないのだ。

10:00 視聴(『ケロロ軍曹』 #345)

自前のヘッドフォンのコードが思いの外短く、テレビ画面と自分の顔との距離は僅か10センチ。
絵的によろしくない上に、十五分が限界と悟る。

10:30 点滴(糖質・電解質ポタコールR輸液500ml)

再び個室へ向かう。
病室に戻る際、患者然とした知らない中年男性から指を差され、「あーっ!」と叫ばれる。
違う病棟へ迷い込んだのかと思いきや、持参したタオルをガートル台が五脚のキャスターに絡ませていた為、それを親切心から指摘していただけだった。
言葉で云え、言葉で。

『まあだかい』内田百閒、読了。
そもそも摩阿陀会(まあだかい)とは、百閒還暦の翌年より彼の学生(教え子)らが企画した「まだ死なないのか、百閒のくそじじいは、まあだかい」に対しての百閒側のアンサー、「まあだだよ」という愛ある洒落の効いた会である。
百閒、摩阿陀会十九年目にして初めて欠席し、八十二歳で亡くなる。
百閒が綴る自らの身体が衰えゆく様はなかなかに辛く物悲しく、病室で読む類の本ではないと今更ながらに覚る。

12:00 昼食(全粥、華風焼肉◇豚肉とピーマンとトマト、卵とじ、フルーツ◇キウィ、漬物◇大根と人参)
15:00 点滴(維持液ソルデム3A輸液500ml)
18:00 夕食(全粥、汁物◇竹輪と絹鞘、立田焼き◇鱈?、サラダ◇しめじと人参とレタス、なめ茸)
18:30 服用(鉄化合物製剤フェロミア錠50mg1錠)
21:00 消灯

未明に気絶。

明日には此処を出られるんだ、家に帰れるんだ、家に帰ったら引っ越す準備をするんだ、段差がやたら目立つ家に引っ越すんだ、最低でも72センチくらいあって人にも何にも優しくない家に住むんだ、不意に人が来てもまず上がれないんだ、とげとげなんだ、壁なんだ、空き巣狙いが忍び込んでもため息ついて諦めちゃうんだ、バリアフリーなんかくそくらえだ、バリアだバリア、バリアフルだ、その段差で洗濯物を干してやる、乾いたって乾かなくたって干すんだ、その段差で無理に懸垂とかしてカラダ鍛えてやるんだ、その段差から毎日ダイヴだ、飛び降りだ、足首だって丈夫になるんだ、疲労骨折なんか知るもんか、骨折っても段差と共に暮らすんだ、でも、外から帰って来て扉を開けたら引き上げて欲しいな。(こわれた)

(續く)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

December 17, 2010

(工事中)『十二月中席~棟中見廻日記』 (第伍回)

<20101230現在、加筆・訂正・画像準備中>

はやくにんげんになりたい。

06:00 起床
06:30 脈拍・血圧測定(数値失念、低目)

点滴針刺しっぱの為、洗面台での洗髪行為すら困難な状態にある。
頭髪、頭皮が程よい加減にオイリーである。
抜け毛が激しい・・・気がする。

主治医(♀)が来室。

「十九日まで入院(はい)っててもらいます」
日曜日まで?
「そう」
今日は何曜日だっけ。
「金曜日よ」
あと二日か。(ため息)

空腹感こそあれど、動いていない所為か食に対する欲はさほどない。
強いて云えば口寂しい限りである。

「何?」
売店にゆきたいんだけど。
「ひとり歩きはまだ駄目ね」
じゃァ買って来てよ。
「あ、はーい。呼ばれたんで、またね」

女医との妄想劇場も佳境を迎えつつある。

13:30 転出・転入

看護師が車椅子と共に来室。
歳が若い所為か何の説明もなしに、四階中央病棟を「四中(よんちゅう)」、五階西病棟を「五西(ごにし)」と略して呼ぶ。

「はーい、じゃァ四中に引越ししますよー」
あ、お願いします。
「五西は賑やかだったでしょう?」
・・・まァ、そうですね。悲鳴とか、呻き声とか。
「毎日あんな感じですよー」
た、大変っすね。

中央病棟に到着。

「五西ですが、患者さんの転入です」

荷物の受け渡しの如き扱いで、台車代わりの車椅子さえ奪われ、ベッドに放り込まれる。
此処は・・・期せずして前回と同室の上に同床である。
何もかもが懐かしい。

「ただいまーって感じですか?」
そうね、ただいまって感じ。(知らんおっさんしか居らんけどな)

四中の看護師が現れ、ひとり歩きの許可が出たと告げて去ってゆく。
「但し地下の売店まで」という制約付きだが。

早速、ガートル台を引き摺ってエレベータに乗り込むが、古い建物に増築を重ねている為に容易に目的地に辿り着けない。
遠回りをして地下の売店に到着。
何か独特な香りが漂うと気付けば、食堂と霊安室が同じエリアにある様子。
幸か不幸か、現時点でどちらにも用事がない。

塩飴と電解質溶液に似た清涼飲料水を購入。
暇だけは持て余すほどに在るので、戯れに知的欲求を満たそうとクロスワードが専門に掲載された雑誌を探すが置いてないという。
在るのはナンクロ、スケルトン、イラストロジック等等、阿呆が時間を無駄に潰す為だけのインテリジェンスの欠片もない産物ばかりだ。

病室に戻ると、看護師が待ち構えていた。
善いニュースと悪いニュースがあるという。
ひとつは悪い方、採血の結果、貧血症状が見られ、主治医としては出血による鉄分不足を憂慮するので、後で鉄分を錠剤で処方するから朝夕飲めと告げられる。

そして善い方、明日から三食可という。
娯楽のない入院生活、食だけが何よりの福音である。(涙)

(續く)

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December 16, 2010

(工事中)『十二月中席~棟中見廻日記』 (第肆回)

<20101228現在、加筆・訂正・画像準備中>

どうにも腹部に違和感を覚え、個室に篭ってみる。

06:00 下血

白い陶器には鮮血がよく映える。
・・・見なかった事にするにはあまりにも衝撃的な絵面である。
救急車を呼ぶか迷ったが、何よりも倦怠感が優り、ひと眠りする。

10:00 下血

・・・駄目だこりゃ。
病院に架電、まずは何をすべきか伺うと「直ぐに来い」という。
まァそうだろうなと出掛ける準備を始めるが、カラダは思うように動かずに遅遅として進まない。
持ってゆくべき荷物を半分にしてタクシーを拾う。

11:25 着信

知人より電話がある。
「見舞いに行ったら受付で『もう退院しました』って云われたんだけど」
あ、そうそう、昨日退院したんだ。で、今日また入院するつもり。
「何だそりゃ、大変だな」
とりあえず今向かってるから。

病院前で合流した知人より貰った見舞いの品は「ジェンガ」だった。
思わぬ「ひとりジェンガ」に転がって笑うのを堪える。

僅か数分間の面会の後、受付に名乗り出ると処置室なる部屋に通される。
横になるように命ぜられ、左腕に点滴針を刺される。
針が太い所為かかなり痛い。

11:45 点滴(糖質・電解質ポタコールR輸液500ml)

主治医(♀)が現れて説明が始まる。
「止血クリップを留めた患部が何らかの原因により開いたと思われます」
な、なるほど。
「これからxxしてもらい、もう一度一昨日と同じ処置をします」
え? xxってあれですか、さんずい編の?
「あれです。二回してもらってください。じゃァ井出さん、お願いね」

12:00 xx
12:30 xx

・・・嗚呼ッ、見ないでぇ。(涙)
・・・もう耐えられないッ、こんな生活!(涙)

14:00 検査

再び車椅子にて内視鏡の間に連行される。
麻酔を打たれ覚醒ながらに麻痺のまま、びしばしとクリップ留めされる衝撃だけが内臓に伝わる。

「あー、これね、すっかり取れちゃってまァ」
外れて流れたんですか?
「そう、ひとつだけ留まってる状態。見る?」
いや、遠慮します。
「通常は3つしか留めないんだけど、あなたの場合はあれが大きかったから、5つ留めにしといたの、4つ取れちゃったけど」
なるほど。
「今回は8つ留めにしといたから」

見せられた画像には、沿岸に棲む名も無き海洋生物を十個入り百円の洗濯ばさみで苛めに苛め抜いた果ての哀れな姿が。
先生、凝視できません。(涙)

16:00 入室(578号室)

ぐったりした状態で車椅子に乗せられ、西病棟へと移動。
入口より左側中央のベッドである。
先日入室していた中央病棟とは何処か雰囲気が違うと感じた。
看護師の説明によると此処、西病棟五階は消化器内科の専門病棟ではないという。
じゃァ此処は何?

出血の量自体は不明だが、血圧低下しているという事で、病室からの移動は車椅子&要付添と厳命される。
ナースセンターに設置されている飲み放題の番茶が急に遠い存在となる。

19:00 検温(36.6℃)、血圧(数値失念)

主治医(♀)が来室。
「どう?」
まァ何とか。
「そう、よかった」
いつから食べられますかね。
「経過がよければ土曜かしら」
それまで絶食ですか。
「そうね、点滴4袋用意したからそれで我慢して」
点滴よりも麺類が食べたいんですけど。
「駄目。飴ならいいわよ」
飴ねぇ。(ため息)

21:00 消灯、点滴交換(維持液ソルデム3A輸液500ml)

次の交換は27時という。

夜が更けるにつれて同室の患者らの呻き声が低く響き始める。
深夜には同室患者の手によってナースコールが発動され、当直医師と看護師による「藤井さん! 藤井さん! 少し痛いからね、我慢して!」と患者へ呼び掛けながらのカテーテル挿入する際の騒動が丸聞こえだったりもした。

活きのいいゾンビがわさわさと眠る墓地の中でひとりぼっちのきぶんだ。

助けて、マイケル!(よく考えたらマイケルもゾンビ入りしてるな)

(續く)


追記:
実は当日、十一年振りの再演となる演劇を観劇予定だったのだが、こういう事情により断らざるを得ない。
関係各位には深くお詫び申し上げます。(謝)

大人計画 『母を逃がす』
作・演出:松尾スズキ
出演:阿部サダヲ 宮藤官九郎 池津祥子 宍戸美和公 皆川猿時 荒川良々 平岩紙
2010年12月16日(木)
開場:18:30 開演:19:00
会場:下北沢・本多劇場
全席指定:6,200円(税込)

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December 15, 2010

(工事中)『十二月中席~棟中見廻日記』 (第参回)

<20101227現在、加筆・訂正・画像準備中>

退院の日。
外も見てない。

06:00 起床
06:30 検温(35.9℃)、血圧(上90・下50)
06:35 点滴(糖質・電解質ポタコールR輸液500ml)

採血、X線の後に担当医師より説明があり、それから昼食をという。

06:40 採血(右腕)
10:00 X線

退院証明書を受け取る。
「出血したら来院してください」って表記が素っ気ない。

12:00 昼食(全粥、胡麻照焼◇鶏肉、和え物、なめ茸、フルーツ)

主治医(♀)より説明を受ける。
「術後、100人に3人は出血する可能性があります」
なるほど。
「可能性は僅かですが、穿孔の場合もあります」
センコウって?
「腸内に穴が開きます。その場合の処置は開腹になります、まァ1000人にひとりですけど」
腹ァ切るんですね。他には?
「向こう2週間は飲酒、旅行、激しい運動は厳禁です」
な、なるほど。
「忘年会シーズンですけど、お願いしますよ」
は、はい。

13:00 退院

自由だ! フリーダム!
この勢いで飲みに行ってしまいそうな自分を懸命に堪える。(当たり前だ)

13:30 帰宅
15:00 間食(※内容確認中)
19:00 夕食(塩昆布吸い物、焼き鰯、他)

寝たきりなので特にする事もなく、過去に何度もクリアした古いゲームを引っ張り出して場面を進めている。

30:00 就寝

・・・眠れないのは仕方ないとしても、その時はまだ自分のカラダの異変に気付いてはいなかったのだ。

(續く)

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December 14, 2010

(工事中)『十二月中席~棟中見廻日記』 (第弐回)

<20101227現在、加筆・訂正・画像準備中>

廊下寄りのベッドの為、天候は確認できず。
たぶん晴れ。

06:00 起床
07:00 服用(消化管運動機能改善剤ガスモチン、1錠)
08:00 飲用(経口腸管洗浄剤ニフレック2ℓ)

上記洗浄剤を二時間以内に飲み干せという。
拷問は既に始まっているのだ。
無味無臭の上に重い液体で容易には食道を通らない。

08:00 採血
10:30 完飲(規定時間三十分超過)
10:45 点滴(糖質・電解質ポタコールR輸液500ml、アドナ注・静脈用25mg)

『内田百閒集成 (12) 爆撃調査団』 内田百閒、読了。
独逸文学者、高橋義孝による百閒人物評、「くそじじい」が秀逸である。
百閒とタクシーに同乗した義孝は運賃を安く済ませる為に運転手に対し近道するよう命ずるが、百閒は「僕は天皇皇后両陛下のお通り遊ばされた道以外は通りたくないね」と大通りを走らせて遠回りさせるのだ、車代の支払いは義孝と知っているのに。
まったくもって「くそじじい」である。

此の間、六度に渡ってガートル台を連れて個室に閉じ篭る。
針の角度次第では左手が痺れたりもする。

16:00 検査

不意に現れた看護師より車椅子に乗せられると「じゃァ検査しましょうねー」と騙くらかされ、消化器内科内視鏡の間へと連行される。
検査とは名ばかりの本番、内視鏡を用いての手術である。

静脈からの麻酔薬注入に顔が冷たくなる。
実際には痛みこそないものの、恥辱と異物感と少しの腹痛で涙ぐむ事もしばしば。
施術中に医科教授が医学生に講義している如き発言を聞かされながら、目前には腸内生中継という地獄絵図を見させられるも気絶すらさせてもらえない。(涙)

切除された物体はあらゆる角度から写真に撮られ、「結構大きいねー」「ほんとだー」等と医師、看護師らの慰み物となっている。
250mm大という現物を見せられ、しばらくは「ほるもん」が喰えないと悟る。
明日の昼までは何も喰うなという。

17:00 点滴(維持液ソルデム3A輸液500ml)
21:00 消灯

・・・眠れる訳無ぇじゃん。

(續く)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

December 13, 2010

(工事中)『十二月中席~棟中見廻日記』 (第壱回)

<20101227現在、加筆・訂正・画像準備中>

・・・である。
心身共に重くなるばかりだ。
本日より三日間、食事は制限され恥辱の拷問の果てに軽く軟禁されるのだ。

10:00 起床
11:15 入浴
11:00 朝食 "anchovy, potato, guacamole"
12:30 外出
13:00 手続
13:10 検温(37.1℃)、血圧(数値失念、高目)
13:20 入室(461号室)
15:00 X線、心電図

何も始まっていないのに、何故か既に軽く具合の悪い状態に。
カラダが無い知恵を絞って拒否しているようだ。
後は最後の夕食を摂り、二度の投薬を経て就寝予定。

同室隣床の患者、医師団より「味の素との共同開発新薬のデータ提供」を求められている様子。
高額な検査料が無料になる上に相当の謝礼も出るという。
そういう交渉が他人に丸聞こえなのも如何なものかと思うの。

18:00 夕食(素饂飩、コンソメスープ、パイナップルジュース)
18:30 服用(消化管運動機能改善剤ガスモチン錠、1錠)

点滴針を左腕に刺される。
今後全ての移動はガートル台(点滴スタンド)が同行する事になる。
私よりも背が高く痩せてていけ好かない奴だ、脚なんて五本もあるし。

20:50 服用(緩下剤ラキソベロン錠、1錠)

目前での服用を促そうと看護師は水道水をカップに注ごうとするのを丁重に断ってから白湯(さゆ)を要求も「あちらにありますので」とやんわり反撃を受ける。
ガートル台を引き連れ、仄暗い廊下を白湯を求めて手探りで進むのだ。

21:00 消灯

此の時間に眠れる訳も無し。

(續く)

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December 12, 2010

(工事中)『十二月中席~獏枕』

<20101227現在、加筆・訂正・画像準備中>

明治期の二十年代、小野路、金井、野津田、大蔵、真光寺、広袴、能ヶ谷、三輪という名の村々がひとつになったという土地に来ている。

駅より出でて川沿いを歩くと、ひとつの民家がやややり過ぎた感が否めない手作りなからくりを通行人に披露せんと道路側に向けて展示の体を為しているのに気付く。
見れば硝子と木枠に納められ、太陽電池を用いた小型モーターにて人形や仕掛けが細かに動いている様子。
立ち止まって眺めてしまうと、自称館長が待ってましたと民家より飛び出してくるに相違ない。
「志ん生の化石」なる展示品もあったようだが、両の腕に痛いくらいの鳥肌が立ち始めたので、此れを警告と受け止め、足早に橋を渡り川向こうへと立ち去らざるを得ないのだ。

忘年会には少々早過ぎるが、ささやかなる酒宴を執り行う。

◇鶏の水炊き(鶏腿肉、白菜、長葱、ぶなしめじ、生椎茸、榎茸)

上記以外にも種々の食材を喰い尽くし、夜も深々と更けて来たところで暗闇の中を手探りながら駅舎へと向かい、小田急線、京王線と乗り継いで家路を急ぐのだ。

(未完)

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December 11, 2010

(工事中)『十二月中席(初日)~命ノ関』

<20101227現在、加筆・訂正・画像準備中>

いただきものばかり。

朝餉:
◇林檎(シナノスイート)
◇苺(さがほのか)

昼餉:
◇バジルソースのスパゲティーニ
◇手羽元の赤ワイン煮込み

夕餉:
◇豆乳鍋(豚ばら肉、白菜、エリンギ)
◇海鞘塩辛
◇越の初梅(新潟・小千谷)

寸評:
豆乳鍋にエリンギは合わない。
榎茸かぶなしめじの如き主張の無さ加減が妥当と思う。

(未完)

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December 10, 2010

(工事中)『十二月上席(千龝樂)~一人曲独楽』

<20101227現在、加筆・訂正・画像準備中>

乗ろうとした電車が遅延している。
待てど暮らせど来ないのは、遅延どころか運転見合わせである。
特に急ぐ理由もないが、人を待たせているとも知らず、遠回りして向かうは埼玉県南部

英国における戦時中の元首相の名を冠した洋食店に来ている。
葉巻を咥えた姿が印象的な戦中の人物である。
小上がりに上がり込み、揚げ物や焼き物、蒸し物と共に乙類と分類される蒸留酒を割り物でいただく。

帰り際、雨が降り出す。
濡れて帰るには、少々距離があると考える。
致し方なく駅まで歩き構内に入ると、夥しい人の群れが目に付く。
案内板を読むと、復路でも電車が動いていないという。
駅裏にてタクシーを拾い、北区にある駅を目指す。
やがて帰宅し、七十二時間が一分半に凝縮される魔法を考えるのだ。

(未完)

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December 09, 2010

(工事中)『十二月上席~啼カズバ撃タレマイ』

<20101227現在、加筆・訂正・画像準備中>

女将の薦めるがままに一献また一献と杯を重ねる。

<冷酒>
◇蓬莱(岐阜・飛騨古川)
◇渡邊(岐阜・飛騨古川) ・・・ 無濾過生原酒、上記銘柄と同蔵元
◇司牡丹かまわぬ(高知) ・・・ 山廃純米酒

<造り>
◇太刀魚
◇障泥烏賊(あおりいか)
◇甘海老
◇目鯛
◇雉羽太(きじはた)昆布締め ・・・ 関東での通名は赤魚鯛(あこうだい)。
◇鯛昆布締め

◇雉羽太の煮付け
名の由来でもある雉と同じ緑色した目は煮付けられている為に白く盲いている。
頬に配色される橙色の水玉は煮られてもなお鮮やかに見える。
骨離れは良くないながらも弾力ある歯応えがよろしい。

女将より見送られた際、夜空の星々の眺めながらの「地球はもうお終いよ、だから今日を生きるの」という前向きなんだかネガティヴなんだか分からない発言を背に受けて帰路に着くのだった。

(未完)

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December 08, 2010

『十二月上席~十干の奸(じっかんのかん)』

仮に甲、乙、丙としよう。
(此の場合、優劣の意はなく只の仮称である)
を立てれば乙が立たず、を立てれば丙が立たず、丙を立てればが立たないという無限回廊
じゃァさもうでいいじゃんと目指す宮城(きゅうじょう)付近。

敷居の高そうな暖簾をくぐり、格子戸を引き開ける。
めっきりと冷え込んだ夕間暮れ、まずは熱燗とも考えたが、外気に触れない室内は程好い加減で冷やと変更。

◇風の森(奈良)
◇王禄(島根)
◇飛露喜(福島・会津)
◇楯野川(山形)

<冬盛り合わせ六点>
◆牡蠣の山椒煮
◆冬野菜煮(冬瓜、絹莢、里芋)
◆鱲子(からすみ)大根
◆鰰(はたはた)一夜干し
◆子持ち公魚(わかさぎ)の唐揚げ
◆合鴨燻製

◆鰤塩焼き ・・・ 皮はぱりぱりと音を立て身はほろほろとしている。大根おろし、檸檬と共に食す。

未食ながら気になる品書き。

◆金目の鍋(しゃぶしゃぶ)
炙りアラと昆布で出汁を取るという。
皮ごと引いた金目の切り身をしゃぶしゃぶ、半透明になったらぽん酢で食す。
水菜、長葱ががっつりと入り、〆は雑炊。

初来店ながら確かな及第点である。
背中が壁に沿ってまっつぐにならざるを得ない四人掛けの卓はいただけないが、次回は畳な小上がりで緩緩(ゆるゆる)としたいものである。

(了)

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December 07, 2010

◆『十二月上席~参拾陸分的な』

じぇいあーる新宿驛舎さざんてらす口から出まして、ぎらぎらとしたいるみねーしょんが続く小路沿いに均等に並ぶ盛りの憑いたなんてぇつがい共の間を抜けまして、やって来ました紀伊國屋
本日ァ立川流の師匠の独演会でござんす。

『立川談笑 月例独演会 其の109回』
@千駄ケ谷五丁目・紀伊國屋サザンシアター

何処か耳慣れた洋調子の出囃子で幕が開きますてぇと、何やらむーでぃーならいてぃんぐが明滅を繰り返しまして、駆け足で高座に上がる談笑師匠で御座ィます。

立川談笑◆千早振る

「(市川)海老蔵、ランニングに半ずぼんで六本木をうろうろしてるらしいですよ」
「ランニングに半ずぼんて、『たま』ですね」
「殴られっ放しだったそうじゃないですか」
「二、三発ぐらいは殴り返して欲しかったですね、荒事師の一人者(いちにんしゃ)なんですから」

本編:
作り込んだ改作の前振りとしまして、本来であれば隠居の役どころが和尚、八五郎の娘に花という名が付与されております。

「『とは』てぇのは一体ぇ何ですかぃ」
「んー、『とは』は千早の・・・」
「本名てんじゃァないでしょうね?」
「・・・其んな事ァ云わないよ。そう、よぉく調べて見ると・・・」
「井戸の中から『トハッ』て飛んだりしませんよね?」
「・・・勿論しないよ」
「和尚さん、此れ何か当てがあって云ってンですかぃ」
「いやァ・・・別に・・・」
「じゃァ『とは』てぇのは一体ぇ何ですかぃ!」
「んんん、・・・喬太郎に聞いとくれ」

いや驚きました、まさかの喬太郎オチでござんす。
此りゃァ話さねぇと分からねぇンですがねぇ、橘家文左衛門てぇ師匠が居りまして、この方が柳家喬太郎師匠の上がる前に『千早振る』を演ったンですな。
で、此のサゲと同じ型で高座を下りまして、振られた喬太郎師匠は持ち根多であります『すみだ警察一日署長』なんてぇ新作に文左衛門師匠を登場させまして、「千早振る」を「血はヤプール」と始まる新解釈でサゲたという伝説的なえぴそーどに結び付くンで御座ィます。
のっけからの敷居の高さに戦戦恐恐とせざるを得ません。

師匠、袖に一瞬入りますが楽屋へは引っ込まずに二席目を相勤めます。

立川談笑◆錦の袈裟

「落語の登場人物の中では与太郎が好きですね」
「私の同級生に与太郎なる人物が居りまして、内田君て云います」
「勉強は凄く出来るンですがね、喋りがね少しあれなんですよ」
「『ひでちゃん、ひでちゃん』、あ、私、英裕(ひでひろ)って云うンですけど」
「『ひでちゃんはー、やさしくてー、いいひとだからー、ごほうびをあげます』」
「って、此れっくらいのノートの切れっぱしを呉れるんですね」
「で、中を開けると『御褒美』って書いてあるンですよ、漢字で」
「意味分かりませんねぇ」
「今何やってンですかねぇ、元気でしょうかねぇ、内田君」

本編:
与太郎は檀那寺の和尚から無事に錦の袈裟を借り受け、此れを女房おさきの手で褌に誂えて貰いまして吉原へと向かいます。
ごわっごわの錦の褌の刺戟がどうにもあれで、しかも殿様扱いで花魁連中からもてちゃったもんですから愚息も昇天しまくりなんてんで、翌くる日には床の上がどうにかなるくれぇの下(しも)まっしぐらな描写と「お前ぇ、大正xxって知ってる?」なんてぇ危険な表現が続きます。
で、「袈裟ァ帰さないとお寺をしくじる」なんてぇサゲには結び付かず、花魁のひとりと檀那寺に向かう与太郎は和尚にでろでろの袈裟を返しまして、其れを受け取った和尚は連れて来られた花魁の姿を一目見まして、まるで幽霊でも見るような顔で「今ァお前さんの・・・」と云い掛けた処で「後半へ続きます」と師匠は高座を下りました。

幕が下りまして仲入りで御座ィます。

立川談笑◆宮戸川

本編:
「お父っつぁん、開けてください、半七です、もう将棋で遅くなったりしませんから」
「オイ爺ィ開けろよォ、日の出暴走帰りだから遅くなんの分かってンだろ、オイ糞爺ィ、開けろってんだよ、婆ァ、糞婆ァ」
「あ、お花さん、そっちも締め出し喰っちゃったンですね」
「あら半ちゃん、違うの、あんぱん喰ってたの」
「(・・・悪い仲間の所為で此んなんなっちゃって、昔は楚楚として可愛くて好きだったのになァ)」

やがて霊巌島の叔父の家にやって来る半七とお花は呑み込んだ叔父に依って二階に上げられて同衾させられます。
「いいですか、お花さん、此の帯より此方(こっち)に入って来ちゃァいけませんよ」
「何これ」
「境界線ですよ、三十八度線て奴ですよ」
「どうせ北も南も同ンなじxxxxxだよー」

通常ですと演者はお花半七の絡みになりますてぇと、「此の先ァ本が破れていて分からない」というサゲに為るンですがねぇ、流石は談笑師匠、此の先を全てのりさーち能力を掛けまして解明したと続きを始めます。

「其の時、男のxxxxったxxを女のxxxにxxxたxxxをxxxにして」

此れをお花半七の所作と思わせといて、実は下で寝ている筈の叔父夫婦の描写てんですから、まァ大変な噺もあったもんで。

で、好い仲に為りましたお花半七は叔父の媒酌で伊勢屋を継ぐ若夫婦となりまして幾年か経ちます。
或る日の事、小僧定吉と出掛けたお花は突然の雷雨で持病の癪を起こし、風体の良くねぇ三人組に下心付きで介抱されますが、実は此れが昔の悪ィ仲間てんで其の侭(まま)中洲ィ連れてゆかれまして大雨で溢れた川に流されて行方知れずとなります。

此処から噺は前席、『錦の袈裟』の続きと相成ります。

「今ァお前さんの・・・三回忌なんだよ、お花さん」
「・・・」
「半七さんに会わないかぃ、会いたくないなら其れもいいだろう」
「・・・合わせる顔も御座ィません」
「少し待っておくれ、いいかい其処に座って待ってておくれよ。・・・与太郎は帰っていいんだ」
「和尚さん、如何かなすったンですか」
「・・・いや半七さん、付かぬ事を訊くが、・・・もし、もしもだ、お花さんが帰って来たら、お前さん何とする」
「・・・あの大雨の日に何が起きたのかは分かりませんが、帰って来たならば大事にしようと思います」
「其れを聴ければ良い、安心した。逢ってやっておくれ」

と死に別れたと思ったお花と半七は再会を果たします。

「夫婦の絆とは深いもんだ・・・、とは? そうか、やっと分かった、お花さん、お前のお父っつぁんの墓前に報せてやりなさい」
「・・・半七さんとまた会えた事をですか?」
「いやァ、『とは』の意味をだ」

実ァ前中後編の通し公演で御座ィました。
無理繰りに繋げた感がない訳でもないですが、よもや泣かす方向とは思いも寄りませんでしたなァ。
詰め込み過ぎたのか、九十分の尺でさえ早足に聞こえまして何処か物足りなさも無かァありませんやね。

一度は閉じた幕が開きまして本年最後の挨拶と先月急逝した談笑師匠の弟弟子にあたる談大師匠を偲つつも膝立ちにて三本締めを行いまして追い出しで御座ィます。
寒風に追われまして新宿御苑前にあるなんてぇくらふと麦酒の店に向かい、さんでぃえご産の樽生をいただこうと歩く冬枯れの銀杏並木で御座ィます。

(了)


◇サンクトガーレン@厚木「湘南ゴールド」・・・ 温州みかんとゴールデンオレンジ(黄金柑)を掛け合わせた品種「湘南ゴールド」より製造。
◇Stone "Oaked Arrogant Bastard Ale" ・・・ オークチップ使用。
◇Green Flash "Hop Head Red Ale" ・・・ 隣接するバドワイザー工場の100分の1の生産量ながらホップの使用はバド社と同量という。

※サンクトガーレン以外の二点はサンディエゴ産。

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

December 06, 2010

◆『十二月上席~千とせの肉吸い』

本日ァ中目黒落語会でござんす。
十八時の開場を目指しまして日比谷線に揺られますな。

『中目黒寄席 第101回公演 ~竜楽を聴く~』

今回はお囃子の太鼓と三味線、鳴り物全てが生音でござんす。

桂宮治◆動物園

「三代目桂伸治の弟子で御座ィます」

本編:
「俺も月五十万で雇われたんだ」

三遊亭竜楽◆箱入り

本編:
「本所で何をして来たンだぃ」
「家事手伝いで御座居ます」

桂宮治◆つなぎ

「中目黒は懐かしい土地です」
「xxx高校っていう入試で名前さえ書ければ誰でも入れるという学校に行ってまして」
「入学して初めての数学の授業でお爺さんの教師が黒板に二桁の掛け算を書くんですよ」
「二桁ですよ、高校の授業で」
「『じゃァ今から十五分で此の問題を解いてください』」
「終わってから皆で答え合わせをしてみても全問正解がひとりも居ないんですね」
「まァそういう学校でした」

「私こう見えましても子どもがひとり居るんですよ」
「娘なんですが、私にそっくりでして・・・ってそこ笑うとこじゃァありませんよ」
「・・・お後のお支度がよろしいようでこの辺で」

三遊亭竜楽◆河豚鍋

お仲入りで御座ィます。

鶴田弥生社中◆寄席囃子

三味線を持った弥生ねえさんが高座に上がりまして、宮治あにさんが大胴(おおど)をもうひと方の前座のあにさんが小太鼓を受け持ちます。

◇一番太鼓 ・・・ 「どんどんどんと来い」
◇二番太鼓 ・・・ 「お多福来い来い」
◇前座の上がり ・・・ 三曲ある中の一曲。演題は不明。

「次は出囃子です。まずは笑点メンバーから」

桂歌丸◇大漁節

「何かリクエストは御座居ませんか」
「志ん生!」
「ははァ、志ん生師匠ですね。・・・笑点メンバーではありませんが。では」

古今亭志ん生◇一丁入り

「続きまして如何でしょうか」
「野崎!」
「野崎、先代の文楽師匠の出囃子で御座居ますね。此れも笑点メンバーではありませんね」

八代目桂文楽◇野崎

「続きまして寄席でのBGM。太神楽は傘廻しの曲で御座居ます」

◇傘の曲

「撥(ばち)でのジャグリングは緊迫感を伴った曲になります」

◇千鳥敵方(ちどりあいかた)

「さてお芝居でもよく聞かれます夏のあれですが、前座さんに演ってもらいましょう」
宮治あにさんが「生き替はり死に替はり」ともうひと方の前座のあにさんに小声で告げます。
「・・・生き替はり死に替はり、付きまとうてこの恨み晴らさでおくべかー」
「べかーって。もう彼は生涯怪談噺を演れないでしょうね」
「一生トラウマですよ」
「大丈夫、小母ちゃんが面倒見てあげるから」

三遊亭竜楽◆くしゃみ講釈

「海外公演を何度か演ってまして」
「フランス語、イタリア語、スペイン語、で、今度はポルトガル語でも演ったンですよ」
「『長短』って噺がありまして、気の長い男と気の短い男が出てきましてね」
竜楽師匠、各国語で『長短』の一部を披露します。
「スペイン語とポルトガル語は似てる分だけ演りづらかったりもしますね」

「リスボンの街をね、此の格好(着流し)で歩きますとそりゃァ目立ちますよ」
「着流しでこう(扇子で扇ぐ仕草)やりながら街を歩いてる東洋人なんて居やァしません。
「遠くで手を合わせて拝んでる人も居ました」
「遠巻きに見ているポルトガル人の中からひとり、八十歳ぐらいのお婆ちゃんが不意に出てきまして」
「『お前はダライ・ラマか?』と訊くンですね」
「まさかダライ・ラマはリスボンには居ませんよ」

「『味噌豆』って噺もポルトガルで演ったんですよ」
「此の噺はですね、小僧がお勝手にある味噌豆を抓み喰いして旦那に見つかって怒られるんですね」
「其れでも小僧はてぇと旦那に見つからないように憚りに入って食べてるところに、矢張り隠れて味噌豆を食おうと憚りに入ろうとする旦那と鉢合わせるンですが」
「この憚り、所謂便所をポルトガル語で発音するてぇと大変に難しくてですね」
「何て云うかというと、"quarto de banho"」
「此れで便所って聞こえますか? 何か力の入らない感じじゃァないですか」
「これは大使館の方から直接教わったので間違いないポルトガル語なんですが」
「一度公演前に実際に使ってみようとホテルのフロントに行きましてね」
「"quarto de banho"と云いますてぇと、フロントに居るボーイさんが『ンン?』って顔するンですよ」
「此れ『味噌豆』の一番大事な台詞なのに、現地の人に通じなくてもう茫然自失ですよ」
「で、同行しました佐賀テレビのディレクターの方が其処に来まして」
「ボーイさんに向かって『トイレ何処!』って云いますてぇと、ボーイさん即座にトイレの方向を指差すンですね」
「あたしの"quarto de banho"が通じなくて、『トイレ何処!』って九州から出て来た男の日本語が通じるなんてどうなってンだと」
「もしかすると、大使館の方は気を遣ってですね、余り一般的じゃない古いポルトガル語を教えて呉れたンじゃァないかと思いましたね」
「まァそうですね、日本に来ている外国人の方が二十代の若者が居るホテルのフロントで、『セッチンハドコデスカ』と聞いているようなもンかもしれませんね」
「だから本番では『トイレ』と演りました。それでも笑ってましたよ」

本編:
竜楽師匠の『くしゃみ講釈』には、覗きからくり『八百屋お七』を語る件(くだり)がありません。
八百屋の女房の的外れで過剰な焼き餅が唐辛子を求めるまでの噺と入れ替わります。

「ほら、ねぇ何だっけ、あの八百屋の女の」
「八百屋の、女ァ? うちの主人に女が!?」
「いや、ねぇ、本郷のさァ何だっけ」
「本郷に!? ・・・そう云えば、ちょいちょい出掛ける先が本郷だわ!」
「あの、ほら、燃え盛った、ねぇ」
「燃え盛ったァ!? きぃーッ、どうしてくれよう!」
「ねぇ、ほら、一晩中さ、ほら」
「一晩中!? ンまー、お前は何を知ってるンだァ!? 云え、云わないか!!」
「ちちち違うンだよ、そうじゃないンだ、おお、おカミさん、く、苦しい」
「こン畜生ーッ、あ、の、ろくでなしィー!」
「ろろろくでなしって、あ、ああーッ、六でない七! お七! 八百屋お七、小姓の吉三! こここ胡椒二銭おくれー!」
「何だい、買い物かい? 人騒がせだねぇ、あんた少しは落ち着きなさいな」
「あんたに云われたくないよ!」

追い出しとなりまして、寒風吹き荒む外ィ追い出されますな。
折角中目黒に来たてんで、たっぷからのくらふと麦酒が飲める店ぇ目指しまして、小ちゃななていすたあぐらす四杯いただき、川ッ縁にある店へと河岸ィ変えましょうかねぇ。

(了)


◇"GIN'S #76" ・・・ 田中仁士氏による『ワンカップコンペティション』ペールエール部門優勝ビール
◇ライジングサン・ペールエール ・・・ バランス良し。
◇帝国IPA
◇スルガベイ・インペリアルIPA

※田中氏以外のクラフトビールはベアードブルーイング製。

o quarto de banho
sanitário público
Casa de Banho
Lavabo

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

December 05, 2010

December 5th, 2010 "grade charcoal produced from UBAME oak"

Ummm, hang out in MEGURO-KU and SETAGAYA-KU.

brunch ;
spaghettini(1.6mm), bacon, cresson, onion, garlic

dinner ;
unthickened stew of chicken cooked on the table
(thigh, drum stick, chinese cabbage, garland chrysanthemum, mushroom)

supper ;
toast pieces of rice cake on a grid
(olive oil, butter, sesami oil and soy sauce)

Ah yeah, a tin foil goes up in flames in the garden!

(End)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

December 04, 2010

(工事中)『十二月上席~峠三十三間』

<20101206現在、加筆・訂正・画像準備中>

いただいた吟醸原酒海鞘(ほや)と共に食したいという慾望を叶ゑむが為、数寄屋橋に程近いビルヂングにて開催されている物産展の会場を目指す。
そしてまた、隣接する肥後熊本な店に立ち寄るのも忘れない。
丁度昼時であると理由を付け、まずはと肥後入りを果たす。
階上へと上がり、窓際の席に案内されて着座。
目の前には大通りを挟んでモザイク銀座阪急の壁面が見える。

卓上には藺草(いぐさ)なランチヲンマットが敷かれている。
品書きは二種のみである。
此処は一ツと海の幸を頼もう。

(画像準備中)

<海鮮丼>
刺身◆鰤、鯛(天草直送)
このみ漬け◆鮗(このしろ)、小鰭(こはだ)の甘酢漬け
辛子蓮根
小鉢◆小松菜の煮浸し
御飯◆熊本2号
汁物◆麦味噌、南関揚げ、石蓴(あおさ)の味噌汁
香の物◆金平牛蒡
水菓子◆蜜柑

さて、本命である海鞘を探そう。
とは云え各階毎に「あて」的食材が誘惑して止まない。
企画に踊らされているのは承知の上なのだ。

◇とうふよう@沖縄 ・・・ 赤色は紅麹使用。
◇焼き鰯@宮崎・日向灘 ・・・ 片口鰯(かたくちいわし)。
◇酒盗(しゅとう)本造り@高知 ・・・ 鰹の胃と腸を原料とする塩辛。本造りは塩分多め。
◇ホワイト六片@青森・天間林村 ・・・ 低臭にんにく。
◇乾燥海鞘@宮城・石巻(三陸) ・・・ 外装は燐寸箱程度の寸法。
◇辛子蓮根@熊本 ・・・ 切り口が熊本藩細川家の家紋である九曜紋に似るという。

残念ながら探していた壜詰め海鞘塩辛は見当たらず、止むなしと上記の乾き物を買い求める。
又、自前の黒七味(原了郭製)を切らしており、ついては従業員に尋ねてみるも取り扱いはないという。
まァ其れも致し方なしとして、購入した食材を「あて」化せしめむと持ち帰るしかないのだ。

(蜜柑)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

December 03, 2010

『十二月上席~鯨海酔侯(げいかいすいこう)』

雨音で目覚める午前七時、窓越しに見える空は鉛色、しかもを伴った豪雨である。
予想最高気温は二十三度という。
ていうか師走だぜ?

とは云え外出する頃には快晴となり、瀧の如き雨を降らせた雲雲はとうに消え失せている。
午前中から千代田区にある懇意にしている蕎麦屋の暖簾をくぐる。
店に出入りする青果業者「千代田の御濠が溢れている」等等問わず語りも愛想である。

周知の通りだが、矢張り暑い。
只只雷雨豪雨に晒されない丈増しと云う他はない。

時候違いに洗い流された街街の様子を伺おうと、渋谷区にある地元縁の店を訪ねる。
本日の酒肴
此処での酒は女将に選って貰うばかりである。

◆突き出し(牛蒡と里芋の炊き合わせ)
◇鶴齢(新潟・魚沼)
◇天の戸美稲(あまのとうましね、秋田・阿仁)
◆古漬け(胡瓜、大根、生姜)
◇酔鯨(高知)

白木のカウンタア、支払いを済ませて早く帰りたがる物書き(♀)の隣に新宿区にある独逸語の大学教授(♂)が座ると、物書きは帰る潮を完全に失った様子で、家路を急ぐ物書きは先から飲っていた酔鯨を脈絡もなく私の猪口女将手製の片口から注(つ)いで量(かさ)を減らそうと画策も、逆に「まァ先生も御一つ」献杯の返杯に継ぐ酬杯となり益益席を立ち辛くなっている。
一頻り応酬を終えた後、物書きと教授は連れ立って店を出て行った。

思えば一年と少し前に当店を訪れた際にも、彼(か)の物書きと同じ席で似た様な遣り取りが在ったと思い出す、まァ向こうは覚えちゃァいまいが

(了)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

December 02, 2010

『十二月上席~清荒神(きよしこうじん)』

火鉢を一ツ所有している。
母方の祖父より譲り受けて来た品で、陶器製の寸胴型である。
丸胴火鉢と呼ばれるものだ。
底部より藁灰はみっしりと詰まっており、幾度となく炭火も焚いている。
薬罐を載せるべく五徳が欲しいところだが、鐵製で代用している次第である。

季節柄好い塩梅だろうと考え、を焼こうと思った。
勝手にある炭櫃を開けるが中は空である。
細かく砕けた炭が指を汚す程度のものでしかない。
買い置きが尽きたのを放って置いたようだ。
此の時刻から買い求めに行くには及ばない。
出入りの炭屋が居ればさぞかし重宝だろうと考える。

嗚呼、其れにしても此の鈍重なる存在感焔の無い火鉢なんぞ只の鉢に過ぎんではないか。
灰を全て掻き出し水を満たして金魚でも放り込みたくもなるというものだ。
今日の処はまァ差し許すとして、明日ッからは名に恥じぬよう働いてもらわねばなるまい。

(了)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)

December 01, 2010

『十二月上席(初日)~無明法性(むみょうほっしょう)』

奇跡だ、12月になってただの一滴さえアルコヲルを口にしていない!
ていうか、まだ1日だ!

(了)


breakfast ;
cheese burger, coffee

lunch ;
curry noodle

dinner ;
spaghettini(1.6mm), red pepper, corbicula soup

supper ;
(nothing)

投稿者 yoshimori : 11:59 PM | コメント (0)